4日、平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会が開催され、今回初めて医薬品別の死亡症例数(2005年度~2009年度分)が公表されています。
平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会(2010年8月4日開催)
厚労省資料 8月12日掲載
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000jff9.html
議事録 11月25日掲載
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000x6on.html
12日厚労省WEBサイトに掲載された資料によれば、過去5年間に副作用報告として受理されたのは141,332人で、うち情報収集中の報告(未完了の報告)を除いたもの122,951人が副作用報告数(2009年12月31日報告分まで)としてカウントされています。
資料2-1-2 過去5年間の副作用等報告の公表状況(PDF:87KB)
そして、このうちの10,054人が死亡転帰として報告されていて、うち2,165人が因果関係が否定できない(A評価)として、その症例数が医薬品毎にまとめられています。
資料2-1-3 死亡例の公表状況(A評価:因果関係が否定できないもの)(PDF:135KB)
上記資料によれば、過去5年間でA評価の死亡例で最も多かったのは、ゲフィチニブ(イレッサ)の145人で、次いでアルテプラーゼ(遺伝子組換え)(アクチバシン、グルトパ)の137人、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(ティーエスワン)の122人、エルロチニブ塩酸塩(タルセバ)の79人、メトトレキサート(メソトレキセート・リウマトレックス)の72人など、抗がん剤が上位を占めていますが、報告数は安全対策・注意喚起の徹底もあり、減少傾向にあります。
一方、因果関係が認められないもの(B評価)、因果関係が評価できないもの(C評価)も含んだ症例数は次の表にまとめられています。
資料2-1-4 死亡例の公表状況(ABC評価:公表しているもの全て)(PDF:191KB)
上記一覧表を見ると、抗がん剤に加え、ジクロフェナク(ボルタレン)、クロピドグレル硫酸塩(プラビックス)、塩酸パロキセチン水和物(パキシル)、エタネルセプト(エンブレル)、アミオダロン塩酸塩(アンカロン)などの症例数も目に留まります。
いずれにせよ、最悪の場合死亡の転帰となる副作用がある薬剤については、服薬指導時にその初期症状を患者さんに説明し、理解してもらうと共に、そういった症状がないかどうかチェックすることが求められているといえます。
なお、ゲフィチニブについては、月毎の報告数を次の表としてまとめられています。
資料7-3 ゲフィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎等に係る副作用報告の報告件数等について(PDF:93KB)
関連情報:現在作成されている「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(Keywords)
リンク追加 11月25日
2010年08月13日 00:12 投稿
部会での審議では、掲げられている医薬品と死亡例との因果関係は必ずしも明らかでない(実際には、因果関係の立証ができないにも拘らず、その逆に因果関係が無い事を確認するための十分な根拠がないため、被疑薬とされている)ものがあることから、公表に当っては十分に注意書き等を付す等し、数字が一人歩きしないようにと求める声があり、事務局も配慮するとしていました。
部会資料の公表という形で、実際には裸で投げ出されてしまった事に、懸念を感じます。
いわゆる郵便等販売の特例措置の期限切れを踏まえ、そちらからの圧力も高まっているのでしょうか?
確かに、私もこの数字を見て「この薬は怖い薬」と一般の人に印象づけられる懸念はあると思います。
しかし、どういった薬に特に注意を払うべきなのかということ示してくれた点で、現場の医療専門職にとって今回の公表は必要だったのではないかと考えます。
私は、新聞などの一般のメディアが、この数字をどうとりあげ、報じていくことの方が問題だと思います。
一方、郵便等販売の特例措置の期限切れを踏まえているのではないかとのご指摘ですが、今回の発表は成分ごとなので、ファモチジンなど医療用なのか一般用なのかはわかりませんので、この公表資料のみでは、OTC医薬品による死亡例数がどれだけあるかはわかりません。(OTC総合感冒薬による死亡例はA分類で1人、BC分類を含めても8人に留まる)
もともとOTC医薬品については副作用の報告自体があまり多くないことを考えると、むしろ、副作用報告の収集方法のあり方について、問題提起しているのかもしれません。
資料4-3 国内副作用報告の状況(一般用医薬品)(PDF:185KB)
(2010年1月~3月分)
御指摘の通り、OTC医薬品については、その母数が明示されていないこともあり、と書く『氷山の一角』といった議論が先行しています。 OTC医薬品に限らず、副作用症例の正確な把握を進めるべきという正論は、誰しも異論の無いところと思います。
郵便等販売云々と書き込んでしまったのは、同じ部会で「区分見直しのための作業班の設置」も併せて了承されたことに啓発されています。
政務三役の構想では、現在の第二類医薬品の相当程度を第三類に区分換えすることにより、ネット販売業者の不満を抑えつつ、建前としての「(危険な)医薬品については、対面販売による安全確保」を貫くという事ではないかと疑われています。そのために、無い知恵を絞るのが作業班と見込まれるからです。
より妥当なリスク区分ルールの整備と、その適用に向けた作業班となることを願っています。
議事録が11月25日に掲載されています。(元記事でリンク)
事務局では今回の公表について、次のように述べています。(以下議事録より抜粋)
通常、医薬品医療機器情報提供ホームページで公開している情報のまとめた概要ということになりますけれども、国民の医薬品の適正使用に供する情報公開の一環といたしまして、定期的に例えば毎年1回というふうなことを目安に集計して、当部会に報告をしてはいかがかと思います。またさらに、機構のホームページでもこの情報を公開してはいかがかと考えております。何かこのような情報の公開で注意すべき点等ございましたら、後ほど御意見をいただければと思います
一方、委員からは次のような意見が出されています。
いや、ものすごく難しいだろうとは思います。その1は、例えば抗がん剤がやはり一番人を殺していますけれども、医者の間では抗がん剤は致死性の副作用があるということは常識でありまして、逆にそのリスクを当然みんな話した上で使っているものだというふうに考えているのですけれども、それをどうなのでしょう、今さら患者さんを脅すのが適当かどうかという観点と、母数が分かりませんのでこれを見ただけではどれが一番まずいのかは当然分かりません。100人亡くなっているものよりも50人の方が安全かというと、もちろん母数が違いますとそんなことはないので、これがひとり歩きするとよくないのですけれども、最近はもう皆さん、新聞報道をまともにとるほどナイーブではないから大丈夫かという感じもしますけれども。
もう一つの理由は、要するに因果関係が否定できないものというのは、多分違うだろうというのを含めてですね。その辺は絶対違うということを言うのは非常に難しいので、我々ももういいやで、そこで否定できないで○にしてしまうことが非常に多くありますので。これはかなり多く見積もった数字だろうとは思います。そういう不確かである、多分本当より多く見積もっている、リスクベネフィットがどうこうということを果たしてこの紙で表現できるのかというと、絶対できません。それを分かった上で公表を多分されるのでしょうけれども、いいことかどうかというのは私には分かりません。
また、別の委員からは次のような意見が出されています。
私はPMDAの方から送られてくる抗リウマチ薬の症例のチャートを見るチャンスがあるのですが、それを見ていて思いますのは、リスクベネフィットといいますけれども、有効性のエビデンスの方は非常に世の中によく流布されているけれども、副作用に関する情報の流布の方が少し不足かという感じを持っております。それの注意の喚起という意味では、死亡例の例数に上がってくる薬剤であるということを示すという意味では、私はオープンにして意義があるのではないかというふうに感じております。