既にご存じと思いますが、8月28日~9月2日にポルトガルのリスボンで国際薬剤師・薬学連合(FIP:International Pharmaceutical Federation)の年会が開催されています。ネット上でも発表された報告などの記事がいくつか掲載されていますが、日薬でもいち早く簡単な報告を定例記者会見で行っています。
第70回FIPリスボン会議参加報告(日薬定例記者会見2010年9月9日)
http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/pdf/100909_3.pdf
FIP Lisbon 2010 http://www.fip.org/lisbon2010/
(動画は2009年のトルコ・イスタンブールでの年会の様子のようです)
FIPは、1912年に設立された世界約200万人の薬剤師・薬学研究者を代表する国際組織で、現在82か国にわたる122団体と4,000人の個人が加入しています。
FIPの活動として意外と知られていないのが、WHOと連携したさまざまな取り組み(薬局業務指針等の作成、偽造医薬品対策、たばこ対策他)で、スイスのジュネーブにもFIPのオフィスがあることを最近まで知りませんでした。(ちなみに本部はオランダのハーグ)
現在、FIPでホットな話題は記者会見のペーパーでも記されている、2008年年会(スイス,バーゼル)で採択された“2020年ビジョン”(2020 Vision)で、年会ではこのビジョンの各国での実施状況やビジョンの実現に向けた議論が交わされ、記者会見も日本でも2020 Vision に向けた取り組みが必要だと述べています。
2020 Vision – FIP’s Vision, Mission and Strategic Plan
http://www.fip.org/files/fip/strategic%20plan%20no%20annexes.pdf
日本語和訳は下記サイトに掲載されています
FIP 2020 vision into 3 Asian languages!
(Western Pacific Pharmaceutical Forum 2009.7.25)
http://www.wppf.org/news/news.aspx?ID=286
http://www.wppf.org/images/stories/3_388.pdf
このビジョンでは、薬局業務は先進国を中心にこの25年間で“モノから患者へ”と変わったとして、
「薬局業務と薬学研究を推進して新たな発見や発展をもたらすとともに,世界の人びとが適切で費用対効果に優れた良質の医薬品にアクセスでき,安全に使用できるようにして世界の健康増進をはかること」(独自訳です、もっと適訳があるとは思いますが)
(原文:FIP’s Mission is to improve global health by advancing pharmacy practice and science to enable better discovery, development, access to and safe use of appropriate, cost-effective, quality medicines worldwide.)
がFIPの当面の任務と定めたうえで、患者の管理・健康についての正確な情報の提供・有効で安全な薬物療法の提供の他、偽造医薬品、インターネット薬局の合法性(legitimacy)、開発途上国における薬局業務の脆弱性、感染症(HIV/AIDS,結核,マラリア,鳥インフルエンザなど)対策などの今日的課題にも取り組むべきだとしています。
そして、これを実現するために
- Advance pharmacy practice in all settings
(あらゆる場所で薬剤師業務を進歩させる) - Advance the pharmaceutical sciences
(薬科学を進歩させる) - Increase FIP’s role in reforming pharmacy and pharmaceutical sciences education
(薬学・薬科学の教育改革におけるFIPの役割を高める)
とした、3つの戦略的目的を定め、次の4つの戦術的アプローチを掲げています。
- Build constructive partnerships
(建設的な連携関係を構築する) - Increase the visibility of FIP
(国際環境の中でFIPの認知度を高める) - Increase revenues for FIP to accomplish its global mission
(FIPのグローバルなミッションを達成するために収入を増やす) - Increase effective communications
(有効なコミュニケーションを強化する)
日本では、こういった広い視点での取り組みや理論化は、まだ十分行われていませんが、薬剤師や薬学研究者の将来を考えるうえで、我が国でも 2020 Vision の実施に向けた取り組みを強化する必要がありそうです。
参考:
日薬アワー「FIP報告」(2008.10.23 MEDICAL LIBRARY・ラジオNIKKEI)
http://medical.radionikkei.jp/entry-158294.html
国際薬学連合FIPによる2020 VisionとPharmaceutical Sciences 2020
(日本薬学会 2008.10)
http://www.pharm.or.jp/hotnews/archives/2008/10/fip2020_visionp.html
資料:About– FIP
http://www.fip.org/www/?page=menu_about
FIP and the World Health Organization: 2008-2009
http://www.fip.org/www/?page=af_WHO
FIP 2009-2010 Annual Report – weaving positive change into global health
http://www.fip.org/annualreport09-10/ (e-book)
http://www.fip.org/annualreport09-10/data/document.pdf
関連情報:TOPICS
2009.11.20 コードネーム Pangea II(国際刑事警察機構)
2006.11.25 WHOとFIPが新しい時代の薬局薬剤師の役割を示す(旧サイト)
2005.06.05 FIPが提唱する薬剤師による禁煙指導
2010年09月13日 00:54 投稿
いつも辛辣な書き込みです。
ノブさんのFIP報告、その他。
(10しす 2010年9月15日)
http://tensis.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-0e49.html
FIP報告、全くないよりましですが、確かに各国の薬剤師会などのWEBサイトにいくと、もっと詳しい様子がかいてありますね。
私も、12ページということでファイルをダウンロードする際に期待を寄せていたのですが、ほとんどが年会のパンフレットだったのでがっかりですね。
また、私も2020 Visionの存在はつい最近まで知りませんでした。
日薬アワーでも放送されていたようですが、世界の薬剤師・薬学研究者が目指すべき方向である以上、日薬雑誌できちんと紹介・解説すべきですね。