ビクトーザ皮下注と高血糖

 まだ、メーカーのウェブサイトには掲載されていませんが、ノボ ノルディスク ファーマ社はこのほど市販直後調査に基づく、ビクトーザ皮下注18mgの適正使用のお願いを発しています。

 この情報は今日MRさんが持ってきたもので、市販直後調査でこの高血糖が7例、さらに高血糖ケトアシドーシスの症例が2例(死亡例も)あったそうです。

 低血糖ならわかるのですが、なぜ高血糖が発現するかというと、強化インスリン療法(1型、2型SU剤2時無効によるコントロール不良例などインスリン依存状態の患者)などを行っている人が、ビクトーザの使用にあたって、今までのインスリン療法を中止したために、高度のインスリン作用不足状態を起こしてしまい、血糖が上昇したり、ケトアシドーシスに至ったためだとのことです。(上記9例中8例がこれに該当)

 普通に考えれば、強化インスリン療法を行っているなど、インスリン療法でコントロールを行っている人が、インスリンの使用を突然やめればインスリンの不足状態となり、高血糖に陥ることはわかると思うのですが、医師の中には、保険上の問題(インスリンとの併用は認められていない)から既存のインスリンを中止し、ビクトーザの効果に(過剰の)期待をしたのかもしれません。(メーカーも想定外のようです)

 インクレチン関連の製剤とSU剤の併用による低血糖のリスクはすでに指摘され、併用の場合にはSU剤の減量が推奨されているところですが、逆にSU剤を全く投与中止となると高血糖を招くこともあることのようです。つまり、かもしれません。(個人的に思ったことです) SU剤を多く使っていた人がビクトーザの併用によってSU剤を減量する場合はも、低血糖だけではなく高血糖についても留意する必要があるかもしれません。

 ノボ社は次のように注意喚起を行っています。(もう少しわかりやすくしてもいいかも)

 インスリン依存状態の患者様(1型糖尿病患者、インスリン治療が不可欠な2型糖尿病患者様等)へは、インスリンから本剤への切り替えを行わないよう、お願い申し上げます。

関連情報:TOPICS
 2010.04.22 ビクトーザ皮下注に関する学習メモ
 2010.04.14 シタグリプチンの追加投与時はSU剤の減量が必要 


2010年09月27日 22:04 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    ノボ社(http://www.novonordisk.co.jp/)の医療従事者向けページにアップされました。

    ビクトーザ皮下注18mgの適正使用のお願い
     http://www.novonordisk.co.jp/media/victoza_properly_used_request_201009.pdf

    市販直後調査期間中に収集された副作用情報_3回目(6/11-9/10)
     http://www.novonordisk.co.jp/media/
    victoza_early_postmarketing_phase_vigilance_sideeffect_information_v3.pdf

  2. アポネット 小嶋

    日本糖尿病学会のインクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会は、この件についてのアナウンスを行っています。

    「インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP4阻害薬)の適正使用に関する委員会」から
    (日本糖尿病学会10月1日)
      http://www.jds.or.jp/jds_or_jp0/uploads/photos/666.pdf

    【緊急情報】
    最近インスリン療法を中止して、リラグルチドに切り替えた症例で糖尿病ケトアシドーシスを発症し、死亡に到った2例に加え、著明な高血糖をきたした7例が報告されている。
    リラグルチドはインスリンの代替とはならないため、インスリン治療中の患者では、患者がインスリン依存状態にあるか、非依存状態にあるかについて評価を行ったうえで本剤使用の可否を判断する(インスリン依存状態にある患者では本剤への切り替えは行われるべきではない)。
    インスリン依存状態、非依存状態の鑑別にはCペプチドの測定が有用であるが、Cペプチドは腎機能の低下により、みかけ上高値に出る場合、症例によってはグルカゴン負荷試験などによる判定を必要とするなど、鑑別が難しい場合が多く、専門医に委ねるべきと考える。