ドラッグストアなどが行っているポイントサービスについては、調剤については値引きに当たるとして従来は対象外としていましたが、このほど厚労省より、「調剤での医薬品代金の支払いに対するポイント付与について制限するものではない」とした見解が示されたことから、各社が調剤についてもポイント付与の導入に踏み切っているようです。
調剤ポイント実質解禁
調剤併設ドラッグストアで動きが活発化
(Diamond Online ドラッグストアニュースPick-Up 2010年11月3日)
http://diamond.jp/articles/-/9942
各社とも露骨な宣伝はしていませんが、ネット上で確認したところ、少なくともウェルシア、マツキヨ、ツルハ、スギなどですでにサービスが開始されており、徐々に拡大しているようです。
北海道新聞 11月5日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/258604.html
ウエルシアで調剤もポイント加算対象に
(CMLと仲良しこよし 2010年9月13日)
http://d.hatena.ne.jp/Shinez/20100913/p1
自己負担金100円につき1ポイントというのがほとんど(上記ブログは過剰な期待?)のようですが、1回の支払が大きい場合(長期処方、抗がん剤など高薬価の薬剤が処方)には、数百円単位でのポイント付与となるので、やはり顧客獲得には武器となるでしょう。
クレジットカードの使用とのからみもありますので、調剤へのポイント付与自体を禁止することはできないと思いますが、私は、「調剤も物品販売の一つ」に自ら価値を下げているような気がしてなりません。
また、ポイント付与の動きが拡大すれば、「1%のポイントが還元できるなら、技術料や薬価を1%分下げても大丈夫ですね」といった声が出たり、調剤報酬の技術料についても、薬剤料・管理料といった現在のスタイルから欧州のように定率マージンの導入につながってしまうのではないかという懸念を持ちます。
日薬も、実質的な値引き販売として療担規則違反で訴えるだけではなく、今後予想されるポイントを付与する店舗の拡大で、調剤を医療から単なるサービスに低めることや、調剤報酬改定への影響に及ぶ可能性があることにも警鐘を鳴らすべきでしょう。(9月22日の定例記者会見で会長がコメントを出したようですが、会長名でプレスリリースくらい出して、もっときちんと立場をアピールできないのかなあ)
関連ブログ:[日経DI]調剤の支払いでポイントがたまる!?
(薬局のオモテとウラ 11月9日)
http://blog.kumagaip.jp/article/41652592.html
関連記事:ポイント還元サービスと医療保険
(薬事日報・無季言 11月10日)
http://www.yakuji.co.jp/entry21123.html
11月9日、10日 リンク追加
2010年11月06日 12:50 投稿
日薬は10日に都道府県会長宛に通知を行っています。
12日の定例記者会見で通知内容を公表しています。
保険調剤におけるポイントカードについて
(日本薬剤師会2010年11月12日)
http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/pdf/101112_7.pdf
日経DIの方でも議論が白熱していますね。
調剤の支払いでポイントがたまる!?
(日経メディカルオンライン11月9日、要会員登録 リンクすみません)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201011/517325.html
さまざまな意見を読んでみて、私は調剤が各店舗が独自に価格を決めた医療サービスであれば、ポイントをつけることには何ら問題はないと考えます。
しかし、保険調剤は医療保険を使った公定価格の公共のサービスであるということを忘れてはいけません。
行政や公的機関が行うサービスを利用して、事実上の現金還元となるようなポイントサービスを実施しているところが果たしてあるでしょうか?
導入肯定派の方からは、面分業がすすむきっかけとなるのではないかとの意見もありますが、果たして本当の意味での面分業につながるのでしょうか?
ポイント付与がさまざまな形で広まれば、薬局の選択基準は「自分を信頼してくれる薬局」で選ぶ人もいるでしょうが、やがて「ポイントが付くところ」「安いところ」といった意識も広がっていくでしょう。
そして、薬局における薬歴管理や指導の意味を失わせ、やがて調剤は、単なる「医療用医薬品の販売」に国民の意識を変えてしまいかねないでしょう。
自分たちの職能を否定です。
ただ、こういった競争が生まれる背景には、私は公共のサービスでありながら患者さんの自己負担額が全国統一でないという現状が大きいと考えます。
施設基準や処方せんの枚数、後発医薬品の使用や変更率など、薬をもらう患者さんにとって直接関係のない部分(しかも説明もしにくい)まで点数化して、その部分にもついても自己負担を求めるという現在の仕組みこそが、私は今回の競争を生み出していると思います。
公共性・公平性を考えるのなら、患者さんの負担は施設基準や処方せんの内容や受付状況によらないわかりやすい体系(「薬剤料+定額」を基本に、時間外などの加算を加える)にして、全国どこの薬局でくすりをもらっても自己負担額が異なるという状況をなくし、真の意味での競争を促すことが必要です。
日薬もポイント付与を「不適切なサービス」とするだけではなく、薬局によって患者さんの自己負担額が異なるという現状についての解消に努める必要があるでしょう。
近い将来、「調剤報酬なんかもう国が決める必要はないでしょう。保険組合と交渉して一定のマージンを確保してね。」といったことにもなりかねません。
そうなってもいいというなら、ポイント付与で競争するのもいいでしょう。
11月19日のRISFAXのHEADLINEによれば、日薬は18日この件について、日医、日歯、保険薬局協会と協議したようです。
保険薬局協会の会員には、確かドラッグストアまたは業務提携しているところがあったと思ったのですが。
調剤報酬改定への影響をやはり考え出したみたいですね。
医療費の支払いで、クレジットカード利用が認められた時点で勝負はあったとする声を聞きます。 クレジットカード会社への手数料支払いを医療機関が負担したならば、そこですでに値引きが発生していた筈です。 ここで、医療機関側の費用として無視したならば、クレジットカード利用でポイントが付くのに、現金で支払った顧客にはメリットがないのか、ということになります。
クレジットカード利用の場合、手数料が加算されますとしていれば、この問題はなかったのかもしれません。秋葉原などの大型電気店では、現金払いとクレジットカード払いで、価格に差を設けていました。
クレジットカード払いの手数料を払えるほど余裕があるならば、医療費のコスト切り下げに協力せよという展開のほうがありそうです。
日刊工業新聞が、各社の導入状況を伝えています。
日刊工業新聞 2010年11月23日
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1120101123ceah.html
マツキヨは2%の付与の店舗もあるようです。
スギはポイント専用の景品とのこと。
ここまでくると、一部の企業だけが行っていることとはいえ調剤報酬改定への影響は必至と考えます。
ここまで各社が競ってしまったら、中途半端な理由で禁止したりすると、かえって生活者から反発がでるかも。
キャリアブレインが新たに取材を行っています。
医療介護CBニュース11月25日
https://www.cabrain.net/news/article/newsId/31018.html
厚労省の担当者は、保険調剤の一部負担金をクレジットカードで支払えば、クレジットカードのポイントが付くことなどを例示して、クレジットカードによる支払いが規制されていない現状では、ポイントの付与を規制することは、現状では難しいと話しているそうです。
まいけるさんが指摘されたように、クレジットカードの問題もクリアにしないと、規制することはやはり困難でしょう。