TOPICS 2010.11.17 で、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の「情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会」で、「一般用医薬品のインターネット販売及びテレビ電話等を活用した医薬品販売」が検討課題として取上げられていることを紹介しましたが、30日、さっそくヒアリングが実施されています。
第3回高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会(2010年11月30日開催)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai3/gijisidai.html
今回のヒアリングは、健康・安全に配慮しつつ、広い国民のニーズを満たすため、郵便等販売をできるようにするには、薬事法で要求される「リスクに応じた情報提供」を『どういう形でやればいいのか?』『どういう条件が満たされればいいのか?』を論点に、
- 対面で、どのような情報提供がなされているか?
- どうすれば、非対面でも同様の情報提供ができるのか?
などについて、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会、楽天、ケンコーコム、薬害団体などに対し、事前に質問状を送付してヒアリング前までに回答をもらい、さらにその回答を踏まえて、当日は新たに次のような質問を行ったようです。
厚労省に対しては、
- 副作用作用報告において購入経路は必ずしも報告されていないとのことなので、対面の原則の有効性が判断できないのではないか?
- 対面による適切な情報提供等を通じて、購入者の状況を的確に把握する必要があるとのことだが、理購入の場合に購入者の状況を把握する意味はないのではないか? また、ネットでも、双方向の情報やり取りにより購入者の状況把握はできるのではないか?
- テレビ電話の今後の取り扱いは、技術進歩や関係者の意見等を踏まえ、対応を検討していくとのことだが、具体的な検討の予定はあるのでか? 具体的にどのような技術進歩があれば可能となるのか?
- 業界団体で、障害者などに対し、郵便等販売によらず医薬品を供給する取組がされているとのことだが、双方向の情報のやり取りに基づく的確な情報提供ができれば郵便等販売で済むのではないか?
また、日薬に対しては
- ネットは対面よりも劣るとのことだが、劣るかどうかでなく、ネットの方が副作用の危険性が高まるという根拠はあるのか?
- 顔色の把握は非対面では困難とのこどだが、代理購入の場合は、把握できないのでは?
- 非対面では副作用発生時の初期対応ができないとのことだが、副作用発生時は医療機関受診するのでは?
- ネットによる一方的な情報提供は補完的なものとのことだが、ネットでも、購入者の回答内容で情報提供の内容を変えることや、電話・メール等により双方向の情報やり取りはできるのでは?
- 店舗の混み具合に関わらず、情報提供を行うことは当然とのことだが、一般用医薬品販売制度定着状況調査で、第1類医薬品販売時に書面による詳細な説明があったのは50.5%、説明自体なしが19.8%となっていることについて、どう思うか?
一方、楽天やケンコーコムに対しては、
- 研究を引用し、一般的に、ネットは対面と比較して伝達される情報の正確性において優れているとのことだが、他にも同様の結果のある調査や研究はあるか?
- IT技術を駆使し、正確かつ確実な情報提供を行い、相談応需が可能な体制を整えたり、通販の安全な販売環境を確保するための販売ルールを提案し、既に実施しているとのことだが、ネット販売を希望する薬局が、そのような体制を整えることは、容易にできるものか? また、現在の販売体制における販売について、購入者から苦情などはないか?
- 省令案のパブコメに対しても大多数の国民が反対していたにもかかわらず強行したものであり、消費者不在の議論とのことだが、消費者団体や薬害団体は、一般用医薬品のネット販売の規制に賛成していると聞いている。このことについてどう思うか?
当日は、これらの回答を踏まえ、どのようにすれば薬事法で求められる情報提供がネット販売で対応できるかとして、次の論点で検討を行ったのとことです。
- 質問画面の表示等により購入者の情報を把握する。
- 医薬品の発送前に必ず質問事項の回答を行うようにする。
- 双方向の意思疎通が可能となるようなテレビ電話などを使う。
- 公的機関による認証などで購入者が識別できるようにする。
- 一律に画面表示を行うようにする。
どのようなやりとりが行われたのでしょうね?1月7日に議事概要がアップされています。(→リンク)
関連情報:TOPICS
2010.11.17 IT戦略本部の規制・制度改革に関する専門調査会
2010.11.29 IT戦略本部の専門調査会がネット販売等に関するパブコメ開始
1月8日リンク追加
2010年12月02日 15:03 投稿
当日の専門調査会のやり取り、議論につきましては、動画共有サイト(ニコニコ動画)にて生中継され、その中継された映像の全編を動画共有サイトでご覧いただけます。
(2010年12月7日までの期間限定・会員登録が必要です。)
ご参考していただければ幸いです。
■第3回 情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会 生中継
(番組ID:lv33137519) ・(ニコニコ生放送)
http://live.nicovideo.jp/watch/lv33137519
倉重さん、どうもありがとうございます。
私もトライしたのですが、プレミアム会員にならないと見れないみたいなので、あきらめました。どなたか視聴した方がいましたらコメントを下さい。
関連することかも知れませんが以下のサイトに合理的すぎる記事がありました。
http://agora-web.jp/archives/1138441.html
元薬剤師の方で、編入後、医師に転身した方の発言です。
hellさん、記事の紹介ありがとうこざいます。
いろいろな見方があるものですね。
薬事日報の記事です。
ネット販売でヒアリング‐“安全確保”が今後の争点
政府高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会
(ファーマシストマガジン 12月3日 薬事日報配信)
http://www.pharmacist-magazine.com/news/article/36.html
専門委員会のヒアリングをニコニコ生放送で見た方が書いたブログをみつけました。
第3回 情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会 生中継 まとめ
(foolproof 12月3日)
http://d.hatena.ne.jp/yamaoritaniori/20101203/1291374346
ケンコーコムは、覆面調査を隠し撮りをして、店舗販売の実態をヒアリングで紹介したようですね。
私も、悪質な違法通販業者を積極的に取り締まらないことには疑問を感じますね。(もしかして、イメージ低下を狙ってあえて取り締まらない?)
一方、次の方の感想は私たちに対して手厳しいです。
医薬品ネット規制の下らなさと、それを守る既得権益の見苦しさ
(ほのぼの先生の悩み相談INブログ12月3日)
http://ameblo.jp/honobono77/entry-10726043887.html
>しかも意味不明な例え話をするんですよ。硫化水素をネットで購入
>して自殺するものや、風邪薬をネットで購入して麻薬成分を抜き出
>して犯罪に使うなど、ネットは危険です!とか言うんですよ。当然
>他の委員からそれは別に店頭で買っても出来る事だし、ネットだか
>らという理由ではないと突っ込まれるんですけど(笑)
後者はプソイドエフェドリンのことだと思うんのですが、私もネットだから危ないのではないと思いますよ。
あの覚醒剤密造事件(TOPICS 2010.06.10、TOPICS 2010.06.11)が発覚した時点で、大量購入の事例がないかどうかの調査を行うとか、海外での販売規制に沿って、第一類にリスク区分を変更する提案をしていたというのであれば、理解は得られたかもしれませんけどね。
個人的には、ネットの販売規制が必要なものは、依存や濫用の可能性のあるもの、悪用される可能性のあるもの、十分な情報提供が行われないと健康リスク(副作用)の可能性が高いものに限られると思います。
こういったものは、ネット販売の是非ではなく、健康リスクに関する情報を強化する、あるいは薬剤師の管理下で販売されるような仕組みにすべき(第一類にリスク分類変更を求める)だと思います。そういった意味で、ケトプロフェン外用剤の指定第二類にリスク分類変更をあっさり認めてしまうというのは、私は理解に苦しみますね。(総合感冒剤の大包装が野放しになっているのもそう。→TOPICS 2010.06.04)
日薬も今回のヒアリングを甘く見ていたんじゃないですかね?
去年の厚労省の検討会とは異なり、ITの利活用という視点で用意周到に準備されていたヒアリングです。
反対することも結構ですが、ITの利活用がどこまで可能なのかという視点でも検討を行わないと、後でひどい目にあるかもしれませんよ
今回の議論が経過措置終了後の動きに大きな影響が及ぶことは間違いないでしょう。
日薬は12月10日の定例記者会見で、11月30日にヒアリングが行われたこととパブコメが始まっていること(TOPICS 2010.11.29)を発表しています。
IT戦略本部「一般用医薬品のインターネット販売及びテレビ電話等を活用した医薬品販売」に関するパブリックコメントの募集について
(日本薬剤師会定例記者会見 2010年12月10日)
http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/pdf/101213_1.pdf
個人的には追加の質問にもどう答えたかを明らかにしてもらいたかったですね。
今回は珍しく、「パブリックコメント等が“国民の声”として採用される傾向にあり、また、内容以上に「賛成」「反対」数の量的な要因が尊重される傾向が多く見られます」と危機感をにじませていますね。
専門調査会の委員である岩瀬大輔氏(ライフネット生命保険株式会社代表取締役副社長)が、ブログでヒアリングについての記事を掲載しています。
医薬品のネット販売規制を考える(11月30日)
http://agora-web.jp/archives/1136385.html
(コメントのやりとりが興味深いです)
医薬品のネット販売規制を考える(2)(12月14日)
http://agora-web.jp/archives/1146492.html
上記では、ヒアリングのやりとりに触れています。
日薬とチェーンドラッグストア協会は相当必死だったことを伺わせます。
まだ続きがあるみたいなので注目しましょう。
もう一つ、つぶやきをまとめた下記のページも当日の様子を垣間見ることができます。
第3回 情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会 生中継
(Togetter)
http://togetter.com/li/74167
これじゃ、論破されてしまいますね。
後で公表される議事録もよく見てみましょう。
1月7日の読売新聞は、3月に行政刷新会議の規制・制度改革分科会で、市販薬のインターネット販売に関する規制などを対象に、「規制仕分け」が行われる構想があると伝えています。
読売新聞2011年1月7日
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110106-OYT1T01215.htm
正式なアナウンスがあった場合には別記事を立てます。
(調剤基本料24点1元化が規制仕分けの対象にならなければいいけど)
本日の日経新聞では、先の薬害オンブズーパーソンの覆面調査を引き写す形で、「薬局、薬剤師は、必要な注意喚起も行っていない」とする煽り記事を掲載し、医薬品のネット販売解禁への側面援護射撃をしています。
1月7日に議事概要がようやくアップされました。
情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会(第3回)議事概要
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai3/gijiyousi.pdf
ツイッターでの書き込みで言われるほど、生出氏、小田氏の主張はひどくはありませんでした。
小田氏も例えをもう少しうまく使えばよかったと思いました。
特にDVという言葉を使わずに虐待ということばを使えばもっと理解してもらえたのに。
委員からは、そんなことをやる必要があるのでしょうかとの指摘はありましたが、やはり頻繁に湿布や傷薬を買いに来て、傷だらけの子どもがそばにいれば、虐待を発見につながる可能性があります。これは、ちょっと委員の想像不足ですね。