HPV、Hib、肺炎球菌ワクチンによる副反応の報告状況

 平成22年度の国の補正予算で、地方自治体における子宮頸がん予防ワクチン・ヒブ(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)ワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンの接種事業への財政支援(1085億円)が決まり、今後これらワクチンの接種者拡大が想定されますが、6日に開催された厚労省の検討会で、これら3ワクチンの販売開始以降の副反応の報告状況が報告されています。

平成22年度第8回薬・食審 医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び第2回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会(第2回合同開催) 資料-2
(日刊薬業行政情報資料12月6日、p19~)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226501536365

【薬食審安対調査会】HPVなど3ワクチンの安全性‐現時点で「新たなリスクない」と判断
(薬事日報 HEADLINENEWS 12月9日)
http://www.yakuji.co.jp/entry21378.html

 注目のサーバリックス(HPVワクチン)の副反応は、2009年12月の販売開始から今年の10月までに(推定接種者数40万人)81例189件で、頻度は1万分の2回だったそうです。

 内訳は、発熱11、失神11、意識消失10、注射部位疼痛9、関節痛7、頭痛7、浮動性めまい6、けいれん6などが続いています。

 一方、アクトヒブ(Hibワクチン)の副反応は、2008年12月の販売開始から今年の10月までに(推定接種者数140万人)44例58件で、頻度は10万分の3回だったそうです。

 内訳は、熱性痙攣9、発熱8、痙攣5、アナフィラキシー反応4、血小板減少性紫斑病4、発疹4などが続いています。

 さらに、プレベナー(小児用肺炎球菌ワクチン)の副反応は、今年2月の販売開始から10月までに(推定接種者数70万人)42例64件で、頻度は10万分の6回だったそうです。

 内訳は、発熱17、白血球数増加4などが続いています。

 国の予算が投入されるということで、あわてて情報を開示するという感が否めませんが、保護者などがもっとこれらのデータに簡単にアクセスできるように考慮すべきだと思います。(わかりやすい解説をつけて) 

関連資料:
第15回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会(2010年10月29日開催)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000vgo6.html

厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の意見書
(厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 ワクチン評価に関する小委員会 2010.10)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000tpdp-att/2r9852000000tpf6.pdf

関連情報:TOPICS
  2010.09.16 公衆衛生の専門家から見たHPVワクチン
  2010.08.07 子宮頸がん予防ワクチンによる有害反応の情報開示が必要
  2010.07.08 HPV、Hibなどのワクチン「ファクトシート」


2010年12月10日 13:18 投稿

コメントが7つあります

  1. アポネット 小嶋

    やはり、この資料は自治体担当者への説明の際、資料として使われたようです。

    全国都道府県担当者会議(子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金)
    (12月9日開催、日刊薬業・行政情報資料)(あとでWAMNETにも出ると思います)
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226501614998
    http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226501615034

    医療介護CBニュース 12月9日
     https://www.cabrain.net/news/article/newsId/31348.html

    この資料だけでは、よくわかりませんが、接種費用の9割分都道府県に基金を設置して、国が接種事業費の2分の1と事務費を助成するということのようです。(接種希望者の自己負担の取り扱いは、よくわかりません)(訂正しました)

    対象者は、

    HPVワクチンの対象者は中学1年~高校1年の女子
    Hibワクチンの対象者は0~4歳の乳幼児
    小児肺炎球菌ワクチンの対象者は0~4歳の乳幼児

    だそうです。

    対象の接種となる範囲は、平成24年度末までの接種分のみで、事業開始前の接種分は対象外、また、25年度以降(2012年4月以降)の接種分についても対象外となるそうです。

    現在高校1年生の女子のHPVワクチンについては、年度内に1回でも接種を受ければ、高校2年生になっても残り2回分は助成の対象にするとのことです。

    一方、接種後の副反応報告の整備や予防接種後健康被害に関する民間保険への加入義務づけも求められるとのことです。

    また、自治体へは医療機関及び被接種者に対し、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が実施する医薬品副作用被害救済制度があることの周知も求めています(Q&Aをみると、「子宮頸がん等予防ワクチンのによる健康被害は、予防接種法に基づかないワクチン接種と同様、医薬品の副作用による健康被害として独立法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済制度の対象となる場合があります」としています)

    Q&Aを見ると、ガーダジルがこの間に承認された場合も、対象となることを示唆していますね。

    なお、接種者へのリスクベネフィットに関する情報提供は、各自治体にまかせるということのようです。

    Q&Aでは次のように一応例示されていますが。

    ———————————————-
    Q:
    子宮頸がん予防ワクチンの接種に当たっては、現在のワクチンがすべてのヒトパピローマウイルスに有効でないことや、将来の子宮頸がん検診の重要性等について、接種者又はその保護者に啓発をすることが必要であるが、国において啓発手法について、標準的な考え方があるか。
    啓発方法
    誰が(市町村、接種医療機関か)
    誰に(接種者・保護者の両方か、保護者のみか)
    どのような内容を
    どのような手段で
    (予診票等にチラシ等を添付し送付、接種時にチラシを手渡し等)

    A:
    基本的には、普及啓発については、事業の実施主体である市町村が行う必要があると考えていますが、都道府県においても、市町村と連携して行つていただきたいと考えております。

    普及啓発方法やその対象者等については、接種対象者の年齢によっても異なると考えられるため、それぞれの実情を踏まえて効率的効果的な対応を行つていただきたい。

    普及啓発内容については、国立がん研究センターのホームページにおいて、子宮頸がん予防ワクチンが販売開始された当初から、このワクチンの正しい情報について情報提供を行つており、また、昨年度開始したがん検診無料クーボン事業において配布する検診手帳に、今年度から、子宮頸がん予防ワクチンについての追記内容を、5月に自治体に連絡しているため、これらを
    参照されたい。

    なお、子宮頸がん予防ワクチンについて、接種対象者やその保護者等に普及啓発方法の愕1等を、今後厚生労働省からお示しする予定です。

    Q:
    子宮頸がん予防ワクチンの有効性について現段階では、子宮頸がん予防ワクチンの接種について、科学的な検証が終わっているとは思えない状態で、公費を使って補助する根拠、また、予防接種事故が発生した場合の対応について、耐えうる説明を市民(国民)にどのようにしたらいいのかご教示いただきたい。

    A:
    1.WHOが全ての地域において接種を行うよう勧告を行つていること
    2.Hib、肺炎球菌の感染による細菌性髄膜炎で乳幼児が死亡し、HPV感染による子宮頸がんで死亡する女性も多いこと
    3.ワクチンの有効性・安全性は高いこと
    4.接種促進に対する国民の要請が高いこと
    等から、HP∨ワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンについて、予防接種法上の定期接種に位置付ける方向で急ぎ検討すべきとの厚生科学審議会予防接収部会長からの意見書を受け、また、国会における審議、地方自治体からの要望等を踏まえ、補正予算として計上しております。

    なお、予防接種事故が発生した場合には、一般医薬品と同様、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の救済の対象となり、さらに、被害救済に万全を期するため、助成対象事業には民間保険への加入、健康被害副反応報告が行われるための措置を講じることを要件としております。

    Q:
    ウシ由来成分及び添加物トロメタモール0.6mgが含まれているが、「危険ではないのか」という保護者に対してどのように説明をしたらよいか。

    A:
    ウシ由来成分については、一定の安全性が確保されているとのリスク評価がなされているものであること、また、諸外国において本剤の接種により伝達性海綿状脳症(TSE)がヒトに伝播したとする報告はないことから、本剤によるTSEのリスクは極めて低いものと考えられます。

    また、トロメタモールについては、日本薬局方外医薬品規格に掲載されている添加物で汎用されており、一定の安全性が確認されております。

    Q:
    ウシ由来成分及びヒツジ由来成分が含まれているが、「危険ではないのか」という保護者に対してどのように説明をしたらよいか。

    A:
    本剤の製造工程に使用されるウシ由来成分及びヒツジ由来成分は、危険部位(脳、せき髄等)を使用していない等、生物由来原料基準に適合しており、生物由来原料又は本剤の製造工程において、加熱等適切な処理が行われております。
    ——————————————-

    今回の事業についてのスタンスは、あくまでも費用への助成をするだけということのようです。

    自治体の担当者は大変そう。

    関連ブログ:
    「勧奨はしないが緊急促進する」とは? ワクチン緊急接種促進(中略)会議
    (感染症診療の原則12月11日)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/cd730a8c885b3d371742c5073234fd15

    ワクチン導入→検診プログラムの修正
    (感染症診療の原則12月12日)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/3d34fc95b1d3542e924f99f1b920cba0

    接種しなおしにも補助はあるのか?
    (感染症診療の原則12月12日)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/f1a937f228b3da967f70675b0426f320

  2. アポネット 小嶋

    「感染症診療の原則」ブログで、上記コメントに対しての記事が掲載されています。

    HBVとHPV あるいは 鎖国とWHO
    (感染症診療の原則 12月13日)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/082a73fe9958e1a0a624f1253e269ebe

  3. Blog感染症診療の原則 編集部

    この会に参加した方複数からうかがったのですが、ワクチン導入にあたって重要なモニタリングシステムを準備しないまま、接種開始をしてしまうようです。つまり、副作用情報はPassive surveillanceで集めるけれど、WHOが指示しているモニタリングすべき情報が日本ではまったくわからない状況になるということです。

    上の厚労省の回答でWHOがやれといっているから、というところがありますが、WHOは全ての国でという推奨をしていません。条件がちゃんと書かれているんですけどね。
    WHOのポジションペーパー、サベイランスのガイダンス内容をちゃんと誰かが責任をもって読んでいるのかが不安になってきました。

  4. アポネット 小嶋

    いつもコメント頂きありがとうございます。承認遅れてすみませんでした。
    (コメント1、2は時系列に合わせるため、投稿時間を変更しました)

    公衆衛生や疫学の専門家による追跡調査というのは、現在のところ考えられていないのでしょうか?

    あと、副反応の情報について、新型インフルエンザ並の迅速な情報開示を行っていくのでしょうか?

  5. アポネット 小嶋

    厚労省のHPに全国都道府県担当者会議の資料が掲載されました。

    全国都道府県担当者会議
    (子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金)
    (2010年12月9日開催)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/other/101209.html

    こちらの方がきれいです。

    資料2 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金について
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/other/dl/101209b.pdf

    資料6 質疑応答集
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/other/dl/101209j.pdf

    参考資料1
    子宮頸がん等ワクチンの副反応報告状況(平成22年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(平成22年12月6日開催)資料)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/other/dl/101209k.pdf

  6. アポネット 小嶋

    12月16日に開催された、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会のワクチン評価に関する小委員会で、作業部会によってまとめられたこれら3ワクチンに関する報告書案が提出されています。

    第3回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会
    (2010年12月16日開催)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000yw9d.html

    HPVワクチンの報告書案を見たところ、7月に公表された「ファクトシート」(TOPICS 2010.07.08)の追加という形になっており、海外の臨床試験の概要や副反応の報告、最近の知見も網羅されています。

    関連記事:
    医療介護CBニュース(12月16日)
    https://www.cabrain.net/news/article/newsId/31481.html

  7. アポネット 小嶋

    28日の読売新聞で気づいた方もいるかと思いますが、検討会で報告されたサーバリックスの副反応の報告状況が記事となっています。

    読売新聞12月28日
     http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101227-OYT1T01223.htm

    失神や意識消失などの副反応の事例は、すでに公表されているので今更という気もしますが、感染症診療の原則でも指摘されているように私も「失神多数」という見出しはどうなのかなと思いました。

    ※数字修正 HPVワクチン(俗称「子宮頸がんワクチン」)失神「多発」ニュース
    (感染症診療の原則12月28日)
    http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/118d039caa22a62908ec6f83b5dad826

    厚労省はおそらくHPVワクチンの安全性・有効性などについての一般向け情報の作成をすすめていると思います(間に合うまでは、結局メーカー作成のものを使用か?)が、公費を投入する以上、新型インフルエンザワクチン並に得られた情報をもっとわかりやすく迅速に公表(他のワクチンや海外との比較も含め)して欲しいですね。