処方薬と暴力行為との関連性

 精神神経系の副作用のうち、暴力行為との関連性が指摘されているものとして、パロキセチンなどのSSRIが有名ですが、PLos ONE 誌のオンライン版に、バレニクリン(チャンピックス、米国名:Chantix)もSSRIと同様に関連性の可能性が示唆されるとする論文が発表されています。(誤訳等がございましたらご指摘下さい)

Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others
PLoS ONE 5(12): e15337. doi:10.1371/journal.pone.0015337)(オープンアクセス)
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0015337

 論文を発表したのは、TOPICS 2010.07.23 で紹介した論文を発表した研究グループで、米FDAの有害事象報告システム(Adverse Event Reporting System (AERS) 、大規模有害事象症例報告データベース))に登録された有害事象のデータ(2004年から2009年9月まで)から、homicide(殺人)、 homicidal ideation(殺人の考え)、 physical assault(身体的攻撃)、physical abuse(身体的虐待)など暴力関連の記載があるもの(成分ごとに5事例以上、その他2つの条件あり)をピックアップし、Proportional Reporting Ratio(PRR、副作用自発報告による統計的なシグナル検出手法の一つ)という方法で、成分ごとの因果関係の可能性を数値化し、比較しています。

PRRについては、下記ファイルで触れられています。(あまり理解できないけど)

JAPIC AERSのご案内
http://www.japic.or.jp/service/information/pdf/japic_aers.pdf

治験と副作用の解析:統計学からのアプローチ
(関西学院大学理工学部「生命情報学講義」 p60-)
PPTファイル(開けないかもしれません) Google変換ビュー

 その結果、3つの条件を満たした31成分1527の事例がピックアップされ、バレニクリン、11の抗うつ剤、6つの鎮静剤/睡眠剤、3つのADHD治療薬ではより関連性の可能性が大きいとしています。

 PRRは、バレニクリンが18.0(暴力関連の報告数は408)と最も高く、次いでフルオキセチン10.9(同報告数72)、パロキセチン10.3(同報告数177)と続き、SSRIがやはり上位を占めています。(SSRIでも数値が低いものももあり) また、精神神経系の副作用との関連性が指摘されているモンテルカストやゾルビデム、トリアゾラムも比較的上位に入っています。

 ただ、研究者らは今回のPRRについては、広範囲な使用状況やより高い報告率、また偶然で数値が大きくなった可能性もあると指摘し、前向き研究でさらに関連性と成分ごとの差を調べるべきとしています。 

 一部のブログでしか取上げられていないマイナーな論文なので、あくまでご参考まで。

関連情報:TOPICS
  2010.07.23 バレニクリンによる精神神経系副作用の特徴
  2009.12.30 チャンピックスの精神神経系副作用、更なる注意喚起が必要
  2009.08.10 チャンピックスに精神神経系の副作用に関する警告欄が新設
  2009.07.02 バレニクリン、精神神経系副作用の黒枠警告追記へ(米FDA)
  2008.10.23 バレニクリンと有害事象(米国)
  2008.05.22 バレニクリン、パイロットは使用禁止(米国)

参考:
Anti-Smoking Drug Chantix Tops List of Drugs Linked to Violence in New Study
(FAIRWARNING 2010.12.16)
http://www.fairwarning.org/2010/12/anti-smoking-drug-chantix-tops-list-of-drugs-linked-to-violence-in-new-study/
Chantix, Prescription Drugs And Violent Acts
(Pharmlot 2010.12.16)
http://www.pharmalot.com/2010/12/chantix-prescription-drugs-and-violent-acts/


2010年12月18日 11:22 投稿

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