コクランのシスマテックレビューで、スタチンの心臓血管病に対する一次予防についてのレビューが掲載され、波紋を呼んでいます。(確認できたのはアブストラクトだけです。全文が見たいな)
Statins for the primary prevention of cardiovascular disease
(Cochrane Database Syst Rev 2011)
http://onlinelibrary.wiley.com/o/cochrane/clsysrev/articles/CD004816/frame.html
http://www2.cochrane.org/reviews/en/ab004816.html
Statins:Benefits Questionable in Low-Risk Patients
http://as.wiley.com/WileyCDA/PressRelease/pressReleaseId-89797.html
このレビューでは、14のRCT34,272人のデータが解析され、総死亡率は0.83倍、致命的でない発作が0.70倍、血行再建率の縮小(reduction of revascularisation rates)が0.66倍と一次予防にエビデンスがあるとしながらも、心疾患の既往歴がない人での予防効果や、スタチンの服用によって生じるQOLへの影響についてははっきりとしたエビデンスがないとしたそうです。(副作用がベネフィットを上回る場合も)
英国ではシンバスタチンがスイッチされていることもあり、各紙は心疾患の既往歴がない人が心臓血管病の予防にスタチンを服用することが有用なのかどうか疑問を投げかけています。
また研究者らは、RCTの中に製薬会社がスポンサーとなっているものもあるとして、論文の評価に慎重になるべきだとしています。
日本での論争に微妙な影響を与えそうです。
関連情報:TOPICS
2010.10.21 長寿のためのコレステロールガイドラインに日医などが反対声明
参考:
Statins ‘may cause loss of memory and depression’
(Mail ONLINE 2011.01.19、コメントがすごいです)
http://www.dailymail.co.uk/health/article-1348435/Statins-cause-loss-memory-depression.html
Questions over statin prescribing
(BBC NEWS 2011.01.19)
http://www.bbc.co.uk/news/health-12224312
Researchers Say Not Everyone Needs Statins to Prevent Heart Disease
(ABC NEWS 2011.01.19)
http://abcnews.go.com/Health/researchers-question-statins-prevent-heart-disease/story?id=12638427&page=1
Review Questions Statins for Low-Risk People
(Medpage TODAY 2011.01.18)
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Prevention/24413
2011年01月20日 00:46 投稿
NHS Choices が解説記事を掲載しています。
Statin benefit for low risk people ‘questionable’
(NHS Choices 2011.1.19)
http://www.nhs.uk/news/2011/01January/Pages/cholesterol-lowering-statin-drugs-examined.aspx
レビューの対象となった臨床試験では次のような問題点があるとしています。
アウトカムとして、スタチンを服用することで心臓発作にかなるリスクに影響を及ぼすかどうかの正確な判断を得ることが、難しい。
いくつかの臨床試験は、心血管イベントの既往歴を含んだものとなっている(つまり、これは純粋な第一次予防の母集団ではない)。
いくつかの臨床試験では、有害事象に関するデータが不十分だった
2つの大規模試験ではよい結果が出たとして、臨床試験が途中で打ち切られているが、これは過大な評価につながっている。
一つを除く臨床試験で、製薬企業から資金提供を受けており、潜在的なバイアスを考慮する必要がある。
臨床試験は、主に白人・中年が対象となっており、これらのグループ以外に結果が適応できないかもしれない。
そして、結論として
スタチンを処方するべきかどうか決めるときは、個人個人の心血管リスクプロフィールの検討が必要なこと、心血管イベントのリスクが低い人へのスタチンの広範囲の使用は支持しないとしたそうです。