小さな記事ですが、今後広がりを見せる可能性もあると思い、紹介します。
製薬会社の広告掲載を中止すると発表をしたのは、The Australasian College for Emergency Medicine (ACEM)(http://www.acem.org.au/)が発行している Emergency Medicine Australasia 誌で、学会のメディアリリース及び雑誌の論説でその理由を明らかにしています。
Doctors and Big Pharma: emergency physicians draw a line in the sand
(ACEM MEDIA RELEASES 2011.2.3)
http://www.acem.org.au/media/media_releases/Drug_Advertising_-_G_Jelinek.pdf
A stand against drug company advertising
(Emergency Medicine Australasia (2011) 23, 4–6)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1742-6723.2010.01393.x/full
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1742-6723.2010.01393.x/pdf
近年、医学論文における利益相反がしばしば問題となっていますが、それを掲載する医学雑誌も製薬会社から広告を受けることにより収入を得ている現実があります。(もちろん、はじめから広告を掲載しないとして発行されている医学雑誌もありますが)
同学会では、「雑誌の広告を見ることにより、処方に影響を与える可能性がある」「医薬品広告は、入手可能なエビデンスを元に判断の材料となる客観的なデータを提供する医学雑誌の使命反する」と指摘し、他の医学雑誌も追従することを呼びかけています。
一方、広告ではないのですが、企業がスポンサーとなったランダム化試験が医学雑誌のインパクトファクターと収入にどのような影響を及ぼすかという分析結果が去年発表されています。
Conflicts of Interest at Medical Journals: The Influence of Industry-Supported Randomised Trials on Journal Impact Factors and Revenue – Cohort Study
(PLoS Med 7(10): e1000354. ちなみにここは広告を掲載しない雑誌です)
http://www.plosmedicine.org/article/info:doi/10.1371/journal.pmed.1000354
医学雑誌は投稿者に求めている利益相反の情報公開と同じ原則を自分たちにも適用すべき
(薬害オンブズパースン会議 注目情報 2011.2.4)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=316
6メジャー・ジャーナル:メーカースポンサーランダム化研究はIFを底上げ、出版会社の利益をかさ上げ(内科開業医のお勉強日記 2010.10.28)
http://intmed.exblog.jp/11486947/
医学雑誌にはガイドラインなど、日常診療や治療に影響を与える内容を含むことが少なくなく、これが増刷されて(当然製薬会社が購入)医学雑誌の収入源となることも容易に想像できます。
製薬会社の影響を少なくして、最新のエビデンスを提供するという医学雑誌の使命を果たしたいというこの動き、果たして日本でも広がっていくでしょうか?
参考:
Medical journal bans drug company ads
(The Sydney Morning Herald 2010.2.3)
http://news.smh.com.au/breaking-news-national/medical-journal-bans-drug-company-ads-20110203-1aev8.html
Australian Medical Journal Bans Pharma Advertising
(Pharmalot 2011.2.3)
http://www.pharmalot.com/2011/02/australian-medical-journal-bans-pharma-advertising/
2011年02月05日 00:03 投稿
薬害オンブズパースン会議の注目情報で関連記事が掲載されています。
オーストラリアの学会誌が製薬企業広告を載せないことを表明
(薬害オンブズパースン会議・注目情報 2011.05.20)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=323