TOPICS 2011.01.21 で紹介したMTX(リウマトレックス他、後発品も含む)の増量可の件ですが、23日正式に承認されています。改訂添付文書もPMDAウェブサイトにアップされています。
リウマトレックスカプセル2mg添付文書(PMDA)
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メトトレキサート錠2mg「タナベ」添付文書(PMDA)
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変更前 | 変更後 | ||
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効能・効果 | 関節リウマチ (過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ剤により十分な効果の得られない場合に限る。) |
→ | 関節リウマチ |
用法・用量 | 通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、本剤1カプセル(メトトレキサートとして2mg)を初日から2日目にかけて12時間間隔で3回経口投与し、残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減する。
ただし、増量する場合はメトトレキサートとして1週間単位で8mgまでとし、12時間間隔で3回経口投与する。 |
→ | 通常、1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。
なお、患者の年齢、症状、忍容性及び本剤に対する反応等に応じて適宜増減するが、1週間単位の投与量として16mgを超えないようにする。 |
用法・用量に関連する使用上の注意 | 通常、効果は1~2ヵ月後に得られるので、8週間以上投与しても効果が得られない場合にメトトレキサートとして8mgまで増量し、12時間間隔で3回経口投与する。
8mgまで増量する場合は、12時間間隔で、2、1、1カプセルの投与順とする。なお、睡眠中はメトトレキサートの排泄能が低下するので就寝前は2カプセルを服用しないことが安全性の面より望ましい。また、3回目に2カプセルを服用するとメトトレキサートの排泄が遅延することがあるので2カプセルを服用しないことが望ましい。 投与量を8mgまで増量すると副作用、及び白血球減少、血小板減少等の臨床検査値異常の発現の可能性が増加するので、患者の状態を十分観察すること。 |
→ | 4~8週間投与しても十分な効果が得られない場合にはメトトレキサートとして1回2~4mgずつ増量する。増量する前には、患者の状態を十分に確認し、増量の可否を慎重に判断すること。
投与量を増量すると骨髄抑制、感染症、肝機能障害等の副作用の発現の可能性が増加するので、定期的に臨床検査値を確認する等を含め患者の状態を十分に観察すること。消化器症状、肝機能障害等の副作用の予防には、葉酸の投与が有効であるとの報告がある。 |
服用時の副作用の対応と予防 | 副作用が発現した場合には、適切な処置を行いながら、本剤の拮抗剤であるロイコボリンカルシウムを投与すること。 | → | 骨髄抑制、肝機能障害、粘膜・消化管障害等の細胞毒性に起因する副作用が発現した場合には、適切な処置を行いながら、本剤の拮抗剤であるホリナートカルシウム(ロイコボリンカルシウム)を以下の方法により投与すること。注射剤を投与する場合は通常、ホリナート(ロイコボリン)として成人1回6~12mgを6時間間隔で4回筋肉内注射する。錠剤を投与する場合は通常、ホリナートとして成人1回10mgを6時間間隔で4回経口投与する。また、尿量、排尿回数をチェックし、排尿が少ないと判断したときは、点滴又は経口により水分を補給し排尿を促すこと。
副作用の予防対策については、最新の学会ガイドラインも参考にすること。 |
上記の通り、「過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ剤により十分な効果の得られない場合に限る。」という制限がなくなり、第一選択薬としての投与が可能となりました。
また、用法・用量の変更を見ると、「1週間単位の投与量をメトトレキサートとして6mgとし、1週間単位の投与量を1回又は2~3回に分割して経口投与する。」となっていることから、週1回、リウマトレックスカプセルを1日1回3Capを服用という指示も可能となっています。
承認情報はまだPMDAに掲載されていないので、投与方法の根拠についてわかりませんが、日本リウマチ学会(http://www.ryumachi-jp.com/)がウェブサイトに掲載しているガイドラインなどが理解に役立ちます。
関節リウマチに対するメトトレキサート(MTX)成人用量増量承認について(2011.02.24)
http://www.ryumachi-jp.com/info/news110224.html
関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン(2010.09.21)
http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_mtx.html
MTX成人用量増量申請の経緯について
http://www.ryumachi-jp.com/info/news091028.html
「MTXの週8mgを超えた使用の有効性と安全性に関する研究」について (2010.4.14)
http://www.ryumachi-jp.com/pdf/MTXHighdose.pdf
ガイドラインによれば、海外では日本における2-1-1などの服用法ではなく、単回投与が一般的(日本でも完成症状を伴う若年性特発性関節炎に対する用法は単回も可能)とのことで、8mg/週までの投与についてはバイオアベイラビリティも分割投与と単回投与でも差がないことが認められているそうです。
一方、10mg/週以上の場合には単回投与に比べ分割投与の方がバイオアベイラビリティが高いことから、ガイドラインでは
- MTX 6-10mg/週
→朝1回も可能、または12時間毎に1日2回あるいは初日から2日目にかけて2~3回投与 - MTX10-16mg/週
→12時間間隔で1日2回あるいは初日から2日目にかけて12時間毎に3~4回に分割投与
となっています。
リウマチ患者さんがいる施設では、ガイドラインでの確認が必要でしょう。
また、警告欄に下記の3項目が追記されています。
- 本剤の投与において、感染症、肺障害、血液障害等の重篤な副作用により、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること。
- 間質性肺炎、肺線維症等の肺障害が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、原則として、呼吸器に精通した医師と連携して使用すること。
- 腎機能が低下している場合には副作用が強くあらわれることがあるため、本剤投与開始前及び投与中は腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分観察すること。
関連情報:TOPICS
2011.01.21 リウマトレックスなど増量とファーストチョイスが可能に
2011年02月25日 00:44 投稿
審査報告書が25日、PMDAウェブサイトに掲載されています。(→リンク)
審査報告書によれば、欧米等の諸外国では、MTXは概ね7.5mg/週(開始用量~20mg/週(最大用量)の用量範囲で承認されていて、主要な診療ガイドライン及び教科書においては、各国承認以降の知見も加味した上で、副作用の定期的なモニタリング及び副作用軽減のための葉酸の使用等を前提に、最大用量として20~30mg/週まで漸増することも推奨されているそうです。
そのため、申請用量は最大20mg/週までとなっていましたが、日本における使用実態において、16mgを超えて投与された症例は限られているとして、今回の最大量は16mg/日と設定されたようです。(驚くことに、MTX 使用症例のうち8 mg/週を超えて使用されている患者が既に2~3割存在すると考えられるとのこと)
また、服用法について、1回投与又は2分割投与は3分割投与と比べ Cmax が上昇するものの、RAで用いられる20mg~30mg 程度までの用量では通常 MTXの毒性域(0.1μmol/L が36時間以上継続することはなく、安全性には問題ないと」しています。
また、適正使用のために下記のような安全対策を行うとしています。
・日本リウマチ学会が作成した「関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)
診療ガイドライン」の普及活動を行う。
・MTX 使用に際しての医療関係者及び患者用の安全対策印刷物の改訂版(特に腎
機能 確認の重要性)を「MTX ガイドライン」との整合性に留意しながら作成する。
・MTX 高用量の承認に際して、適正使用のお願い文書を作成し、医薬情報担当者
(MR) の訪問やダイレクトメール送付により、特にMTX の安全性に関する情報伝
達を実施する。
・新規納入先に対しては、発売以来実施してきたように、MR が訪問して事前に適正
使用に関する説明(服用方法、副作用発現及び重篤化予防のポイント)を実施した
施設にのみ納入を許可する流通管理体制を継続する。
・日本リウマチ学会などの学会活動を通じて、高用量増量時も含むMTX の適正使用に
係る医療関係者への啓発活動を実施する。