震災から3週間近く経ったものの、災害はまだ進行中の感があります。また、被災地や避難されている方に何かできないかかを思い悩みます。
しかし、この間くすりをめぐる動きは少なくありません。計画停電の実施も少なくなり、ようやく余裕が出てきたので、震災関連記事の更新と並行して、最近の話題の記事掲載を再開したいと思います。
震災の記事で埋もれてしまいましたが23日、イレッサの副作用で間質性肺炎を発症するなどして死亡した3患者の遺族が国とアストラゼネカ社に計7700万円の損害賠償を求めた東京地裁の訴訟の判決が言い渡され、国と同社に患者の2遺族に対しへ計1760万円を支払うよう命じています。
大阪地裁の判決では国への賠償請求は棄却されましたが、東京地裁の裁判長は間質性肺炎の副作用について、警告欄を設けるか、副作用欄のより前の方に記載して死に至る可能性があると説明するよう、アストラゼネカ社に対し行政指導を怠ったとして、国の賠償責任を認めています。
薬害イレッサ弁護団HP(http://iressabengodan.com/)に裁判所が作成した判決要旨と企業の製造物責任と国の国家賠償責任について触れた第3分冊が公表されています。
東京地裁判決要旨・骨子(薬害イレッサ弁護団)
http://iressabengodan.com/doc/000168.html
東京地裁判決第3分冊(薬害イレッサ弁護団)
http://iressabengodan.com/doc/000169.html
今回の判決について弁護団は、「国の不十分な行政指導のために、指示・警告上の欠陥がある医薬品による被害を生じさせたことが、より明確となった。大阪・東京両地裁判決によって薬害イレッサ事件の問題点及び課題は既に明らかで、国及びアストラゼネカ社は、高等裁判所の審理を待つことなく、協議により薬害イレッサ事件を早期全面解決するべきである。私たちが求める全面解決は、原告全員の救済、未提訴者の救済ルール設定、薬害イレッサ事件の教訓を薬害防止やがん医療に生かすこと、及び抗がん剤副作用死救済制度を創設すること等である。」などとした声明を発表しています。
薬害イレッサ訴訟大阪判決に対する原告・弁護団声明(2011年3月23日)
http://iressabengodan.com/topics/2011/000167.html
ところで、イレッサは米国でも2003年5月に「迅速承認制度」(Accelerated Approval Process)の下で承認され、限定的に使用されていました。しかし、2011年2月1日に承認申請自体を取下げる予定であることを発表しています。米国市場では完全撤退ということになります。
アストラゼネカ社が米国でイレッサの承認申請を取下げ、市場から完全撤退
(薬害オンブズパースン会議 注目情報 2011年3月30日)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=322
関連情報:TOPICS
2011.02.26 イレッサ大阪訴訟、企業に賠償命令も国の責任は認めず
2011.01.29 イレッサ訴訟を考える
2011.02.24 医学会イレッサ声明文、国が声明文案を提供
参考:
毎日新聞3月23日
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110324ddm041040051000c.html
朝日新聞3月23日
http://www.asahi.com/national/update/0323/TKY201103230304.html
医療介護CBニュース3月23日
https://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=33226
2011年03月30日 14:18 投稿
アストラゼネカ社は30日、間質性肺炎の副作用について承認時までに得られていた情報に基づき、時として致死的になり得ることを意味する「重大な副作用」として明記していて、第1版添付文書の注意喚起は適切であったなどとして、東京地裁の判決内容に承服できないことから東京高等裁判所に控訴したと発表しています。
イレッサ訴訟:控訴の決定について
(アストラゼネカ ジャパン プレスリリース 2011年3月30日)
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2011/11_03_30.html
一方、同社の控訴に対し、薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団は抗議声明を発表しています。
アストラゼネカ社の控訴を受けて抗議声明を発表しました
(薬害イレッサ弁護団 2011年3月30日)
http://iressabengodan.com/topics/2011/000181.html
厚労省は5日、
「イレッサの「重大な副作用」欄には、当時から一読できる範囲に間質性肺炎と明記してあり、間質性肺炎が致死的となり得ることや、「重大な副作用」欄に記載された症状がいずれも致死的となり得ることは、医師であれば一般に理解していることであり、不十分な注意喚起の仕方だったとは言えない。この記載方法が不十分だったという事実認定は、医師の専門性を著しく低く評価するものである。」
「「重大な副作用」欄ではなく「警告」欄に記載させるなどの対応をすべきであったとの指摘があるが、国はイレッサ承認の当時に得られた科学的知見に基づいて、「重大な副作用」欄に記載させるとともに、市販直後調査を義務付け、医療機関に積極的な注意喚起を行わせるなど、採り得る限りの対応をした」
として、事実認定や法律判断に妥当とは言い難い問題点があるなどとして、東京高等裁判所に控訴したことを発表しています。
イレッサ訴訟(東京地裁判決への対応について)
(厚生労働省2011年4月5日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017zb0.html
一方、国の控訴に対し、薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団は抗議声明を発表しています。
国の控訴を受けて抗議声明を発表しました
(薬害イレッサ弁護団 2011年4月5日)
http://iressabengodan.com/topics/2011/000187.html
6日、原告団・弁護団も「原告全員の一律救済を否定した点においては、この判決をそのまま受け入れることはできない」「全面解決に向けた道筋も明らかとなっていないままでは、訴訟を確定させることはできない」として、控訴をしたことを明らかにしています。
全面解決をめざし原告団も控訴しました
今後も早期の全面解決を求めていきます!
(薬害イレッサ弁護団 2011年4月6日)
http://iressabengodan.com/topics/2011/000188.html