医療薬学会やブログなどで既に紹介されている調査で、すでにご存じの方がいるかもしれませんが、薬学雑誌の5月号に詳しい結果が掲載されています。
離島における一般用医薬品のインターネット購入に関する意識調査
-インターネットを使用する居住者を対象として-
(薬学雑誌 131(5),783-799 (2011))
http://yakushi.pharm.or.jp/FULL_TEXT/131_5/pdf/783.pdf
この調査は、多くの離島を擁する長崎県の五島市の居住者を対象に行われた調査で、一次離島(薬局や薬店があるような大型離島。この調査では福江島、奈留島及び島山島の居住者)と二次離島(・本土への直接的な移動手段がなく、薬局・薬店・薬剤師が存在しない、大型離島の周辺に点在する離島。この調査では前島、久賀島、蕨小島、椛島、赤島、黄島、黒島及び嵯峨島の居住者)の2つに分けて比較調査を行っています。
調査結果の詳しい内容は各自ご覧になっていただければと思いますが、下記ブログで概要が紹介されています。
医薬品ネット通販議論 と ある動画 と 論文
(ドラッグ+調剤+α=何でも屋薬剤師の日記 2011.03.05)
http://d.hatena.ne.jp/cocokarafine/20110305/1299285272
調査結果のうちもっとも注目したのは、一般用医薬品のインターネットでの購入の必要性をたずねた部分で、「購入したことがないし、必要性も感じたことがない」との回答が一次離島、二次離島居住者でぞれぞれ 234 名(84.5%)、16 名(61.5%)と大多数を占めた一方、「購入したことはないが、必要性を感じたことがある」との回答はそれぞれ 24 名(8.7%)、8 名(30.8%)にとどまっています。
また必要性を感じない理由について尋ねたところ、「身近な薬局やドラッグストアで購入できる」「そもそも薬はインターネットで購入するものでないと考える」と答えた人が多く占め、インターネットを利用してまで一般用医薬品を購入したいという人は少数派であることがわかります。
さらにネット利用者に、「一般用医薬品を手に入れる方法として今後期待するもの」を尋ねたところ、「今のままで十分」という回答が一次離島居住者の70.4%、二次離島居住者の 53.8% と最も多く占めた一方で、「できればインターネットで購入したい」と回答したのは、それぞれ5.8%、7.7%にとどまったそうです。
研究者らの結論は、
- インターネット使用可能の離島居住者はインターネットによる一般用品の購入は行っていたが、一般用医薬品の購入を行っているものはほとんど無く、その必要性も感じていなかった。
- しかし、一部にはインターネットによる一般用医薬品の購入の必要性を感じている者もおり、インターネットによる一般用医薬品の購入を規制するのであれば、それに変わるシステムを早急に構築する必要がある。
- 2. における新たな仕組みを見出されるまでは離島居住者に対する特例措置を継続する必要がある。
というものですが、調査結果を読んでみて、私も離島居住者であっても、必要な一般用医薬品の入手には現状であまり問題ないとの印象を持ちました。
ちょっと言い過ぎかもしれませんが、一般用医薬品は製造承認基準に沿って発売されているので、私は同効商品であれば中身はあまり大差はないと考えています。
にもかかわらず、パッケージの色とネーミングだけを変えて女性用・男性用の売り分けが推奨される水虫の薬、配合成分をわずかに変えた新商品を発売し、他商品との違いを訴求するなど、メーカーの販売戦略に乗せられて、生活者がネットで自分で選んで購入できる仕組みをつくって消費喚起を求める商材なのでしょうか?
ネット販売業が欲しい薬が手にはいらないといいますが、私は必要な薬はかぜや便秘など日常のセルフメディケーションに対応できる一般用医薬品は、配置薬も含めれば十分入手可能な状況だと思います。
また、漢方薬や伝統薬については、使用の必要性や適否についてを確認するため、何らかのコミュニケーションを経ての販売が必要だと思います。現在は、第三類以外は通販禁止ですが、使用目的が正しいかどうかや使用者体質などの状況の把握は必要で、直接聞いた上で、詳しい販売記録を保管するという条件ならば、ある程度規制を緩和してもよいのではいかと思います。
つまり、ネットで説明に従ってクリックすれば購入できるというのはふさわしくなく、最低でも電話などでリアルタイムで相談できるという仕組みは作ることは最低限必要だと思います。ただし、「痛●湯」など特定の商品のみを販売することは選択を狭めることになるので、メーカーの影響を少なくする配慮や、相談に対応する人は、少なくとも登録販売者という条件が必要でしょう。
2011年05月01日 13:06 投稿
この報告に直接関わったわけではないですが、
報告にある購入先である、薬剤師のいる保険薬局に勤務している薬剤師です。
報告書からは分からないだろう事を補足です。
福江島にはOTC販売をきちんと(調剤のおまけ程度ではなく)行っている薬局が当店を含め8店舗、昔からある小規模の薬店が3~4店舗ほど、島外資本の大規模のドラッグストアが3店舗(調査時点で、現在は4店舗)あります。
その他配置薬販売もいくつか会社があります。
そのため、インターネットでよく買われるだろう家電や書籍などと違い、十分な種類の医薬品の供給はされており、また価格競争もあるので、価格も種類によってはネットの物より安く提供しているものもあります。
そのため、インターネットで購入する動機が生まれにくいという背景が考えられます。
2次離島の方は通院や買い物などで、福江島へ来ることも多くネットで購入するよりは、出てきたついでに買っていく方が多いのだろうと考えられます。
また、報告書ではあまり反映されていませんでしたが、当店では医薬品の電話による注文を受けることもたびたびあるので、通信販売自体があまり利用されていないわけではありません。
コメントありがとうございます。
離島といってもさまざまなんですね。
p796 の fig.11 にもありますが、ネット利用者であってもわざわざ一般用医薬品をネットで購入しないというのは、店舗・配置を通じて必要な薬が入手できるということなのでしょうね。
調剤と情報2011年6月号巻頭のReportで取材記事が掲載されています。
薬剤師@福江島さんの
>報告書ではあまり反映されていませんでしたが、
>当店では医薬品の電話による注文を受けることもたびたびあるので、
>通信販売自体があまり利用されていないわけではありません。
それって、合法なのですか?
ご存じと思いますが、届け出をすれば第3類は通信販売が可能です。
第2類については離島等の継続使用の場合は通信販売での購入が可能です。
小嶋さん
第3類は届け出は必要なかったと思いますが違いましたか?
第2類の離島に関する記述ですが、予め届け出をして(ここが届け出が必要ですね)、離島の中でも薬局薬店がない島に限り郵便等販売が可能となり、それ以外では継続使用者のみが経過措置で可能となっていたと思います。しかも郵便等販売の場合、販売記録を残さなければならないはずですよね。
>第3類は届け出は必要なかったと思いますが違いましたか?
薬事法施行規則等の一部を改正する省令」(平成21年2月6日厚生労働省令第10号)(概要)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/gaiyou.pdf
郵便等販売に関する規定新施行規則第15条の4、第142条(準用)
① 薬局開設者又は店舗販売業者は、郵便等販売を行う場合は、次に掲げるところにより行わなければならない。
ア第三類医薬品以外の医薬品を販売等しないこと。
イ薬局等に貯蔵し、又は陳列している第三類医薬品を販売等すること。
ウ郵便等販売を行うことについて広告をするときは、広告に以下の情報を表示すること。
[薬局等の管理及び運営に関する事項]及び[一般用医薬品の販売に関する制度に関する事項]
(「掲示に関する規定」の項を参照。)
② 薬局開設者又は店舗販売業者は、新たに郵便等販売を行おうとするときは、あらかじめ、届書を都道府県知事に提出しなければならない。
後半の部分はご指摘の通りです
「薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令の施行について」(平成21年5月29日薬食発第0529002号医薬食品局長通知)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/kisokutuuti.pdf
>通りかがりのものさん
もちろん所定の届出を提出しており、
薬局・薬店の無い離島(報告書でいう2次離島)、継続販売の確認をとった方にのみ郵送販売を行っています。
販売記録もきちんと残しており、法にのっとった運用をしていると考えております。
了解しました
申し訳ございません。
回答を戴いたことに対するお礼を記入するのを忘れておりました。
お忙しいところありがとうございました。
福江島さん、これからもがんばってください。
小嶋様、ありがとうございました。
勉強になります。ありがとうございます。
もう一つだけ教えて頂けませんか?
試しに、第3類だけ郵便等販売をしようと思うのですが、行政ホームページにて継続販売や薬局薬店のない離島に郵送販売する際の届けでしょうと言うものはあるのですが、第3類の届け出書を見つけられません。どこか掲載されている場所があれば教えて頂けませんでしょうか。
それと、条文を見ていると継続販売の場合、下記の一文はかなり難しいですね。これでは、風邪薬や下痢止めなど、突発的なものは販売できないと言うことになりませんか?そうなるとかなり困難ですね。
↓
「なお、施行後、その症状等が緩和するなど、使用を止めた者に対しては、当該医薬品と同一の医薬品の郵便等販売は認められないこと。」
詳しくは地元の保健所に聞いてみて下さい。
下記の自治体の情報が詳しいのでリンクを張っておきます。
届出の書式は各自治体で微妙に異なるようです。
郵便等販売届書(薬局・店舗販売業)(東京都目黒区)
http://www.city.meguro.tokyo.jp/shinseisho/hoken_eisei/hoken/hanbai/yutodo/
郵便等販売届書(薬局・店舗販売業等)(熊本県)
http://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/33/yuubintouhanbai.html
どうもありがとうございました。