薬学雑誌の5月号に、福山市で行われた小・中・高校生に対するくすりの使用実態調査の結果が掲載されています。
学校薬剤師を介した小・中・高校生の一般用医薬品・健康食品の使用実態調査
(薬学雑誌 131(5), 835-842(2011))
http://yakushi.pharm.or.jp/FULL_TEXT/131_5/pdf/835.pdf
この調査は、地元の学校薬剤師を兼務する福山大学薬学部の教員が、福山市内の小・中・高校生合わせて600人を対象(回収率89.8%)に行ったもので、薬やサプリメント、健康食品の使用の有無や理由などについて尋ねています。
「食事や間食以外に、自分の体のために何かを食べたり飲んだりしたことがありますか?」という問いに対し、小学生で13.1%、中学生で55.4%、高校生で60.2%が使ったことがある(最近、過去○か月などの期間は尋ねていない)と答え、このうちの2割~3割が健康食品を使ったことがあるとしています。
種類としては、小・中・高校生いずれにおいても、ビタミン・ミネラル、プロテインが多く使用されていることがわかった他、青汁やグルコサミン、オルニチン、 ローヤルゼリーなど、病気の予防や高齢者がよく利用するものも含まれていたそうです。
また、運動系の部活動への所属の有無により比較検討したところ、小・中・高校生いずれにおいても、運動系の部活動に所属している生徒で健康食品等摂取が高い傾向があったことが明らかになったそうです。
研究者らは、運動系の部活動に所属している児童・生徒において健康食品の摂取が今後増加する可能性があるとして、健康食品を摂取させる児童・生徒自身またその親に対して、その有用性を正確に説明し、明確な摂取基準を提案することが必要になるとしています。
なお、福山大学では、昨年には保育所に通う幼児とその保護者と高齢者施設の高齢者を対象とした同様の調査を行っています。
福山市における大学-高齢者及び保育施設連携を活用した一般用医薬品・健康食品利用実態に関する調査研究
(薬学雑誌 130(8), 1093-1103(2010))
http://yakushi.pharm.or.jp/FULL_TEXT/130_8/pdf/1093.pdf
また、幼児のサプリメントの使用に関する調査としては、新聞記事にもなった下記研究が有名ですね。
健康食品の情報提供システム体制の構築と安全性確保に関する研究
(2009年厚生労働科学研究)
下記検索画面で、上記タイトルの一部か「200939042A」というキーワードを入れ、検索をかけて下さい
厚生労働科学研究成果データベース検索トップ
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIST00.do
Use of Dietary Supplements among Preschool Children in Japan
(Journal of Nutritional Science and Vitaminology Vol. 55 (2009) , No. 4 pp.317-325)
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jnsv/55/4/55_317/_article/-char/ja/
就学前幼児によるサプリメント利用についての研究
(国立健康・栄養研究所 健康・栄養ニュース 2010.6)
http://www.nih.go.jp/eiken/info/pdf/kenkoeiyonews32.pdf
また、WEB上には大学生を対象とした調査もありました。
男子および女子大学生における食生活と健康食品利用の比較
(大阪教育大学紀要 vol.56(2), 35-47(2008))
http://ir.lib.osaka-kyoiku.ac.jp:8080/dspace/bitstream/123456789/1535/1/2_56(2)_p35-47.pdf
さらに、最近も下記医学雑誌に報告が掲載されているようです。(未入手。内容未確認)
中学生・高校生のサプリメントに対する意識調査
(臨床スポーツ医学 vol.27(12), 1391-1394(2010))
2011年05月01日 21:21 投稿
とても残念です。
福山での研究に関して。
鹿児島での研究(2010年 九州山口薬学大会、2010年 日本薬剤師会大会にて発表)が全く引用されていないとは。
質問票などは、多少の違いはあるにせよ、ほぼそれまま利用されているのに・・・・・・(資料として提供)
謝辞にも一言もそれらが触れられていないとは。
誠に残念です。
日薬学術大会の発表は私も直接聞きましたのでよく覚えています。今思えば質問項目も似ていましたね。
学術大会の要旨集(O-10-03-04)を改めてみたところ、鹿児島薬剤師会の薬事情報センターの方が中心となって行った調査は、16名の学校薬剤師が、15の小学校(5年生882名、6年生866名)、8中学校(1年生618名、2年生392名、3年生670名)、5高校(1年生1391名、2年生1010名)を対象におこなったもので、福山の調査よりサンプル数が多く、かなりしっかりとした調査だったと思います。
大学の恰好の研究対象とされたのかもしれません(利用されたのかもしれません)が、鹿児島の研究も私たちが取り組むべき課題として、もっと広く認識されるべきでしょうね。
もしまだでしたら、どこかの薬学系のまたは医学系の雑誌に是非投稿されるとよいと思います。(こういうとき、やっぱり統計処理などのアドバイスがもらえる薬学部が地元にあるといいですね)
やはり学会発表だけではなく、きちんと査読を受けた論文にならないと、学術的には重みとならないからです。
九州山口薬学会の研究助成をもらってアンケート調査を実施した関係もあり、九州山口薬学会誌にちょうど投稿していたところでした。
九州山口薬学会誌も査読ありですが、限られた地区での配布になります。
薬局薬剤師がエビデンスをつくる。それを目的に有志薬剤師で毎年何か実施し、できれば形(論文)にする方向で、ここ何年か取り組んでいます。
できれば、より広範の人の目に触れる媒体へ今後トライしていきたいと考えています。
もう投稿されていたのですね。失礼しました。
現場の薬局薬剤師がエビデンスをつくるというのは、重要な取り組みです。是非今後ともがんばって下さい。