薬物の脳内移行性は年齢によって異なる(霊長類)

 理化学研究所は25日、薬物の脳内移行性は年齢によって異なるとした研究結果を発表しています。ヒトによる研究ではありませんが、アカゲザル(霊長類)で行った実験で明らかになったとのことで、ヒトにおいても年齢による副作用の現れ方の違いに、脳内移行性の差が関わっている可能性を示しています。

 薬物の脳内移行性は年齢で異なることを霊長類(アカゲザル)で確認
-子どもの脳は大人よりも薬物の影響を受けやすい-
(独立行政法人 理化学研究所 2011年5月25日)
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2011/110525/

Developmental Changes in P-Glycoprotein Function in the Blood–Brain Barrier of Nonhuman Primates:PET Study with R-11C-Verapamil and 11C-Oseltamivir
J Nucl Med published online May 13, 2011)
http://jnm.snmjournals.org/cgi/content/abstract/jnumed.110.083949v1

 研究は、血液脳関門の重要な役割を果たすP糖タンパク質などの薬物輸送分子(薬物トランスポーター)の働きに着目し、P糖タンパク質の輸送を受けるベラパミル(ワソラン)に放射性マーカーを取り込み、PETで脳内移行性を調べるというもので、幼少期(9月齢)、青年期(24~27月齢)、及び成熟期(5.5~6.8年齢)での脳への取り込み速度を調べています。

 その結果、幼少期アカゲザルでは、成熟期アカゲザルと比べ、投与2分後に最大で4.1倍高いことが明らかになったそうです。(ということは、P糖タンパク質の影響を受ける薬剤の子どもへの投与は注意が必要?)

 また、異常行動との関連性の可能性が指摘されているオセルタミビル(タミフル)についても同様の実験を行ったとところ、幼少期のサルでは成熟したサルの2.5倍と高くなったそうです。

 これまで、オセルタミビル(タミフル)の脳内移行性については、これまで成熟マウスで調べられたことがありますが、結果ははっきりしておらず、研究者らは今回、アカゲザルを用いた脳内移行性に関わる薬物トランスポーターの機能を解析できたことにより、ヒトに近い霊長類での薬物動態研究の進展が期待できるとしています。(タミフルの10代投与禁止の継続にも影響を与えるかも)

関連情報:TOPICS 2009.06.18 タミフルの10代患者の使用制限は継続

参考:47NEWS 5月25日
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052501001000.html


2011年05月25日 22:07 投稿

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