今月のちょっと気になった論文や報告です。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。
紹介日 | 論文・報告タイトル (紹介記事・ブログ) |
概要・コメント |
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05.25 | Large Cohort Study of Long-term Acetaminophen Use and Prostate Cancer Incidence (Epidemiol Biomarkers Prev May 17, 2011) |
アセトアミノフェンの長期使用と前立腺がんの発症リスクを調べたコホート研究。the Cancer Prevention Study II Nutrition Cohort での男性78,485人を追跡調査したところ、毎月30錠以上5年間以上定期使用使用してた人は発症リスクは0.62倍だった。他のNSAIDsと同様にがん予防が示唆されたが、長期使用による肝障害のリスクを考えると推奨はできない。 |
05.25 | Inhaled Anticholinergic Drug Therapy and the Risk of Acute Urinary Retention in Chronic Obstructive Pulmonary Disease (Arch Intern Med. 2011;171(10):914-920.) |
高齢COPD患者における、抗コリン性吸入薬(IACs:Inhaled anticholinergic medications)と急性尿閉(AUR:Acute urinary retention)の関連を調べたカナダの研究。女性では有意な差は認められなかったが男性ではIACsを使っている群ではAURのリスクが1.4倍、また前立腺肥大を伴うとさらにリスクは1.84倍に上昇した。 |
05.15 | Proton pump inhibitor use and risk of adverse cardiovascular events in aspirin treated patients with first time myocardial infarction: nationwide propensity score matched study (BMJ Published 11 May 2011) |
97,499人の初発心筋梗塞患者を追跡調査したデンマークの研究。アスピリンとPPIの併用、H2ブロッカーの併用、併用薬なしで心筋梗塞の再発(入院・死亡)を比較したところ、PPI併用群では併用しなかった場合と比べ再発リスクが1.46倍高まった一方、H2ブロッカーではリスクの増加は認められなかった。クロピドグレル(プラビックス)のように、特定のPPIでは影響がないという場合はなく、研究者らは胃内pHが変化し、アスピリンの生物学的利用能の低下のために発現するのではないかと推測しています。 |
05.12 | Use of Acid-Suppressive Drugs and Risk of Fracture: A Meta-analysis of Observational Studies(今のところオープンアクセス) (Annals of Family Medicine 9:257-267 (2011)) |
PPIの使用と骨折リスクとの関連を調べた韓国の研究チームが行ったメタアナリシス。11の研究を解析、H2ブロッカーを使用した場合の骨折リスクは1.10倍(有意差なし)だったのに対し、PPIを使用した場合は1.29倍(有意差あり)。また、長期にPPIを使用した場合、股関節骨折のリスクが1.31倍、脊椎骨折が1.54倍に達したが、H2ブロッカーでは有意差が認められなかった。 |
05.12 | Drug interactions with complementary medicines (Aust Prescr 2010;33:177-80)(→PDF) |
ガーリック、イチョウ、グルコサミン、St John’s wort などのサプリメントと新薬成分との相互作用についてを解説。 |
05.12 | 健康食品の素材のヒトにおける有効性に関する考察 -生活習慣病に対する健康食品の素材について- (社会医学研究. Vol.27(1)2009 45-56) |
生活習慣病に対する健康食品92の素材について、6 種類の専門書や一般書成書を用いて、「働き」、「主な成分や由来」、「注意事項」を調査し、専門書に共通している内容をまとめたもの。科学的実証の検討も行われている。 |
05.06 | Bisphosphonate Use and Atypical Fractures of the Femoral Shaft (N Engl J Med 2011; 364:1728-1737) ・WebMD |
ビスホスホネート製剤と不定形非定型大腿部骨幹骨折(Atypical Fractures of the Femoral Shaft)の関連を調べたスウェーデンのコホート研究。年齢補正後の相対的リスクは 47.3(倍)だったが、絶対的リスクは1年間に1万人あたり5人(0.5%)であり、リスクはベネフィットを上回るというもの。リスクを相対的にみるか、絶対的に見るかで評価は大きく分かれます。ただ、使用期間が長期にわたると相対的リスクは増加、また中止するとリスクは減少するという結果も示され、5年を超える使用については再評価が必要だとしています。 |
05.06 | Leukotriene Antagonists as First-Line or Add-on Asthma-Controller Therapy (N Engl J Med 2011; 364:1695-1707) |
ロイコトリエン拮抗薬(キプレス/シングレア、アコレート)が、ステロイド吸入と同程度の効果があり、第一選択の治療となりうるという報告。研究者の話だと、吸入がうまくできない人には有用ではないかとのことですが、一部研究者らへのメーカーからの援助あり。 |
05.06 | Varenicline and hyperglycemia in patients with diabetes (Canadian Adverse Reaction Newsletter, 21(2) April 2011) |
2007年4月の発売から2010年9月30日までに、ヘルスカナダは1型と2型糖尿病患者からバレニクリン(チャンピックス)と関連性が疑われる18例の高血糖(うち2例は入院)の報告を受け取った。うち7例では中止するか減量することで回復した。 |
05.06 | Fluticasone propionate and osteonecrosis (Canadian Adverse Reaction Newsletter, 21(2) April 2011) |
2010年10月31日現在、ヘルスカナダはfluticasoneプロピオン酸塩との関連が疑われる5例の骨壊死(osteonecrosis)の報告を受け取った。高用量の吸入コルチコステロイドによる骨壊死もすでに文献報告がある。コルチコステロイド骨壊死は、より若い年齢で起こる傾向があるが、進行した場合治療オプションが制限されるので、早めの鑑別は重要である。 |
05.01 | 在宅ケアにおける薬剤師業務に対するケアマネージャーの情報収集手段及び意識・要望に関する調査研究 (薬学雑誌 131(5), 843-851(2011)) |
在宅ケアに関する薬剤師業務の認知度、薬剤師に関する情報や知識を得る手段、薬剤師や薬局に対する意見・要望などをケアマネーシャーに調査した研究。研究者らは、ケアマネージャーと薬剤師の連携推進には、 「実務レベルでの業務連携」 と「薬局・薬剤師の役割や業務内容に関するケアマネージャーへの情報発信の強化」が重要だとしています。 |
05.01 | 使用成績調査データベースを利用した高血圧患者における不眠症発症要因に関する検討 (薬学雑誌 131(5), 669-677(2011)) |
降圧薬の使用成績調査データベースを用いて、降圧薬使用が高血圧患者における不眠症発症の関連要因になるかどうかを調べた研究。その結果、α遮断薬で約2.4倍, β遮断薬で約1.5倍に発症リスクが高まるとした一方、カルシウム拮抗薬では発症リスクが0.4~0.6倍に低下した。また、女性で1.8倍、合併症として胃・十二指腸疾患、筋骨格系・結合組織疾患を有する場合も約2倍に発症リスクが高まったそうです。 |
05.01 | Levothyroxine dose and risk of fractures in older adults: nested case-control study (BMJ Published 28 April 2011) |
70歳以上の高齢者を対象に行われたレボチロキシン(チラーヂン)と骨折リスクとの関連を調べたカナダの研究。レボチロキシンの使用者の骨折リスクは1.8倍となった他、用量が多いほど骨折リスクも増加した。 |
05.01 | Angiotensin receptor blockers and risk of myocardial infarction: meta-analyses and trial sequential analyses of 147 020 patients from randomised trials (BMJ Published 26 April 2011) ・Medpage TODAY(要登録) |
ARBの使用と心筋梗塞の発症リスクを調べたメタアナリシス。これまでに懸念されていた発症リスクの増加は見られなかったとしています。 |
2011年05月25日 23:40 投稿