仏ピオグリタゾン製剤の使用制限についての国内コメント

 9日のフランス当局のピオグリタゾン製剤の使用制限の発表(TOPICS 2011.06.10)について、現時点では武田社のウェブサイトには関連情報の掲載がありませんが、PMDAのウェブサイトにはメーカー発出の関連情報がアップされています。

ピオグリタゾン塩酸塩製剤のフランスにおける使用制限について
(PMDA 2011.06.10)
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_1.pdf

 製造販売業者である武田薬品工業(株)から、以下のお知らせ文書が配布されたとのことです。

医師向け
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_1_m.pdf

【今回の措置の背景】
 今回の措置は、フランス当局が実施していたCNAMTS疫学研究の全体解析において、ピオグリタゾン塩酸塩を投与された患者(約16万人)で、非投与患者(約133万人)に比べて、膀胱癌の発症率が有意に高い結果が得られた(〔HR= 1.22 (95%CI 1.05 – 1.43)〕)ことに基づくものです。

〔CNAMTS試験の概要〕
 フランス国内の保健データベース(SNIIRAM)内の約150万人の糖尿病患者(40~79歳)に関する2006~2009年のデータを用いて、膀胱癌などの癌発症率を比較した疫学研究(後ろ向きコホート)。本疫学調査の結果、膀胱癌の発症率について、用量依存性、性差(男性のみ有意)がみられた。なお、他の癌については発症率の増加はみられなかった。

【今後の日本での対応】
 アクトスと膀胱癌との関連については、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に関係する情報を報告し、評価が行われているところであり、PMDAと膀胱癌のリスクに関する注意喚起につき検討を進めています。フランスで実施された今回の新たな疫学研究(CNAMTS疫学研究)の成績を詳細に解析するとともに、米国で実施している疫学研究を今後も進め、アクトスと膀胱癌との関連について検証する所存です。

患者向け
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_info/file/kigyo_oshirase_201106_1_p.pdf

アクトス、メタクト、ソニアスに含まれる成分に関するフランスの措置について

患者様に服用いただいております糖尿病治療薬「アクトス」、「メタクト」、「ソニアス」に含まれる成分(ピオグリタゾン塩酸塩)につきましては、このたび、フランスで実施された調査において、膀胱がんのリスクがみられたことから、フランス国内において新たな患者様への処方を控えること、また、服用している患者様においては服用を中止すべきではなく、主治医と相談するよう、行政当局から通達がありました。

現在、弊社においてもこれらの薬と膀胱がんとの関連性について検討しており、現時点においては明らかな関連性は示されていません。

弊社では、現在得られている情報を医師、薬剤師の皆様と共有しております。つきましては、今後の治療方針に関しては、主治医の先生とご相談いただき、くれぐれもご自身の判断で薬の使用を中止しないようお願い申しあげます。なにとぞ、ご理解たまわりますようお願い申しあげます。

NHKも動画つきニュースを配信しています。タイトルが刺激的です。

仏“武田薬品の薬に危険性”(NHK 6月11日)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110611/t10013458701000.html

 文字の記事には書いていませんが、現時点ではフランス国内での製品回収や販売停止する計画はないとのことです。 

 今後、このリスク増1.22倍という数値をベネフィット・リスクでどう判断するかというのが今後のカギとなりますが、長期使用によるリスク増について触れられていないのは気がかりです。

関連情報:TOPICS
 2010.06.10 仏当局、ピオグリタゾン製剤の一時使用停止を発表
 2011.04.30  ピオグリタゾンの膀胱がんリスクへの懸念(フランス)
 2010.09.18 ピオグリタゾンと膀胱がんの発症リスク(米FDA)


2011年06月11日 09:33 投稿

コメントが3つあります

  1. アポネット 小嶋

    13日、一般向けのプレスリリースが出ています。

    フランス規制当局によるActos®およびCompetact®に対する措置について
    (武田薬品工業株式会社 2011年6月13日)
    http://www.takeda.co.jp/press/article_44005.html

    ————————————————————

    欧州時間6月9日、フランス保健製品衛生安全庁(「AFSSAPS」)は、当社の100%子会社であるラボラトワール・タケダ株式会社(本社:フランス、Puteaux市)に対して、ピオグリタゾン塩酸塩(以下「ピオグリタゾン」)を含有する2型糖尿病治療剤Actos®およびCompetact®について、新規処方を控えること、および、現在いずれかの薬剤を服用している患者さんについては、主治医への相談前に服薬を中止すべきではないことを通達しました。

    今回のAFSSAPSの措置は、フランス当局が実施していた疫学調査の全体解析において、ピオグリタゾン投与群で、非投与群と比較して、膀胱癌の発症率が有意に高い結果が得られたことに基づくものです。

    欧州医薬品庁(「EMA」)では、欧州時間6月9日、「現時点で、ピオグリタゾン製剤を服薬中の患者さんについて、処方を変更することは勧めない」との声明を発表しています。EMAは、既にEU法令に基づくピオグリタゾンの再評価を2011年3月に開始しており、ピオグリタゾンにかかる全ての安全性・有効性にかかるデータに加えて、今回AFSSAPSが実施した疫学調査の結果についても、6月20日から23日までに開催される会議において検討する予定です。

    一方、米国では、2002年からKaiser Permanente医療保険グループ主導による大規模な疫学調査を実施しており、その中間解析結果では、全体解析において、ピオグリタゾンの投与と膀胱癌の発症率には、統計学的に有意な関連性は認められませんでした。本調査は2013年に完了予定です。

    当社では、常に患者さんの安全性が何よりも最優先事項であると考えており、ピオグリタゾン製剤を含め、当社が販売している全ての製品に関する安全性および忍容性の調査を今後も引き続き実施するとともに、医療関係者の皆さま、患者さんを含むあらゆるステークホルダーの方々への適時・適切な情報提供に努めてまいります。

  2. アポネット 小嶋

    日本糖尿病学会(http://www.jds.or.jp/)は14日、関連ページを掲載するとともに、武田薬品工業・厚生労働省・PMDAに対し、諸外国における動静のみならず、我が国における当該事象の可能性についての可及的速やかな解析とその結果の公表を求める要望書を提出しています。

    ピオグリタゾン製剤に関する情報について
    http://www.jds.or.jp/jds_or_jp0/modules/news8/article.php?storyid=216#216

    我が国におけるピオグリタゾン製剤による膀胱癌の危険性に関する検討推進のお願い
    (2011年6月14日 厚労省宛)
    http://www.jds.or.jp/jds_or_jp0/uploads/photos/741.pdf

    学会としては当局の見解待ちというところでしょうか。

  3. アポネット 小嶋

    日本糖尿病協会(http://www.nittokyo.or.jp/)も16日にコメントを出しています。

    ピオグリタゾン製剤(商品名:「アクトス」・「メタクト」・「ソニアス」)についてのお知らせと注意
    (日本糖尿病協会2011年6月16日)
    http://www.nittokyo.or.jp/kinkyu_jj110616p.html

    ——————————————————————————————————————

    我が国の規制当局の見解では、現時点でピオグリタゾン製剤の服用の中止あるいは変更は推奨されていません。

    現在治療でピオグリタゾン製剤を使用している方は、今回の情報が出たからといって、ご自身の判断で薬の使用を中止したり、減量したりすることはしないでください。ご自身の治療について不安がある場合は、是非主治医にご相談ください。

    日本糖尿病協会では、糖尿病の治療をしている方が不安を持つことがないよう、厚生労働省や日本糖尿病学会と連携しつつ、この件に関して今後も正確な情報を提供していきます。