今月のちょっと気になった論文や報告です。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。
紹介日 | 論文・報告タイトル (紹介記事・ブログ) |
概要・コメント |
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06.24 | Angiotensin Receptor Blockade and Risk of Cancer in Type 2 Diabetes Mellitus: A Nationwide Case-Control Study. (J Clin Oncol. 2011 Jun 20. [Epub ahead of print]) ・Nelm |
台湾の患者データベースを用いた Case-Control Study で、ARBの発がんリスクを調べたもの。研究者らは21750人の降圧治療を開始した新規の糖尿病患者のデータを解析、この研究でもARB全体では、オッズ比0.98(95% CI, 0.85 to 1.14)と有意差が認められなかったが、ARBの成分ごとに違いがあり、ロサルタンでは0.78倍とリスクを低下させた一方、カンデサルタンでは1.79倍、テルミサルタンでは1.54倍とリスクが増加した。ARBにがんリスクなしというFDAの結論に疑問を投げかけた内容となっています。 |
06.15 | Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials (BMJ Published 14 June 2011) |
スピリーバレスピマット(チオトロピウム)の死亡リスクをプラセボと比較したメタアナリシス(5つの臨床試験、6,522人のデータ)。使用群では死亡リスクが52%上昇するとの結果。チオトロピウムの心臓への影響はこれまで確か関連性はないとされているので、もしかすると霧状に薬剤を吸入するという剤型の問題か過量吸入といった手技の問題も考えられる。とりあえずはハンドヘラーの方が安全ということらしい。米国ではまだ承認されていないというのも興味深い。(FDAは安全性を確認していない?) |
06.15 | Watch out for amiodarone’s eye effects (Prescriber Update 2011;32(2):14-15) |
ニュージーランドにおけるアミオダロン(アンカロン他)との関連が疑われる目症状に関する有害事象をまとめたもの。有害事象モニタリングセンター(CARM)には2011年4月までに関連性が疑われる目関連の有害事象は51報告(視覚神経障害3、色素沈着19、視覚異常12など)あり、これらは平均4か月以内に発現する場合がある。再診時に目症状の有無の確認は重要だとのこと。ちなみに日本では、視覚暈輪、羞明、眼がかすむ等の視覚障害があらわれた場合には、減量又は投与を中止することとなっている。(色素沈着も12.3%) |
06.15 | Clozapine: impacts on the colon (Prescriber Update 2011;32(2):14-15) |
クロザピン(クロザリル)関連の便秘は14~60%の患者に見られる。クロザピンの抗コリン作用は強力であり、CARMには14の消化管運動減弱の報告があった。(うち2例は死亡、また2例では救命処置が必要だった) クロザピンの処方にあたっては、腸の機能状態を確認するとともに、患者に対しては水分摂取や食事の指導、また便秘の治療は事前に行っておく必要があるとしている。(日本では限定使用なので、地域薬局で見ることはまずないとは思うけど。服用者が身近にいることもあると思うので留意を) |
2011年06月24日 01:20 投稿