小麦加水分解物含有石鹸による健康被害広がる

 小麦加水分解物が含まれていた石鹸の問題(TOPICS 2011.05.21)で独立行政法人 国民生活センターは14日、緊急記者会見を開き、アナフィラキシーショックによる呼吸困難まなど、259件の危害情報が同センターに寄せられていることを明らかにしています。

小麦加水分解物を含有する「旧茶のしずく石鹸」(2010年12月7日以前の販売分)による危害状況について
-アナフィラキシーを発症したケースも-
(独立行政法人 国民生活センター 2011年7月14日)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110714_1.html
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110714_1.pdf

 同センターの苦情を受け付けるPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、同製品に関する相談がこれまでに640件寄せられていて、特に5月20日に自主回収を公表(TOPICS 2011.05.21)後の相談は526件に急増、うち216件中には(健康)危害に関するものだったそうです。

 危害内容(自主公表の相談も合わせて全247件中)の内訳は、「皮膚障害」165件、「その他の傷病及び諸症状」49件、「呼吸器障害」28件などで、危害部位は、「顔面」121件、「全身」51件、「眼」「気道」22件と続いていて、かぶれ・湿疹や、目のかゆみ、腫れ等の軽いアレルギー症状を呈しているケースの他、アナフィラキシーを起こしているケースなど深刻な例も少なくなかったそうです。

 同センターの報道資料で、国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 福冨友馬氏は、

 この加水分解小麦による健康障害に関して、多くの一般の方はしばしば「もともと小麦にアレルギーがある人が旧茶のしずく石鹸を使ってアレルギー症状を生じてしまったのだろう」と勘違いしているが、実際はそうではなく、「もともとアレルギー体質のない健康な人が『旧茶のしずく石鹸』を使用したために新しく小麦アレルギーを発症してしまう」のである。
 
 どのような人にこのような健康障害が起こりやすいといった傾向はなく、誰にでも起こり得る。このような化粧品や石けんなどに含まれる食物由来のタンパク質成分に反応しアレルギーを発症した結果、食物アレルギーを発症するという現象は、これまで予想されてこなかったことである。

 「旧茶のしずく石鹸」を使用していた人のうち、どのくらいの人が小麦アレルギーになってしまうのかは、正確な調査データがないためはっきり分かっていない。2 人に1 人の割合で起こるような頻度の高いものではないが、現在医療機関を受診している患者の数からすると、必ずしも非常に稀とは言えないのが現状であると考えられている。

と指摘していて、さらなる健康被害の広がりが懸念されます。

 同センターでは、「小麦アレルギーの症状はさまざまであるが、眼や顔のかゆみや腫れ、鼻炎症状などの他、症状が重篤な場合は腹痛・下痢、血圧低下、ふらつき、呼吸困難などの症状が出る(アナフィラキシー)。小麦を食べた時に必ず起こるとは限らず、小麦製品を食べたあと運動をしたときにのみ症状が起こることもある。人によって症状はさまざまであるが、アナフィラキシーを起こすような場合は、命に関わる危険もあるのできちんと経過観察と治療を続ける必要がある。」などとした注意を呼びかけています。

 前回の記事でも書きましたが、薬局・薬店の店頭で生活者から、今までに経験したことのないアレルギー症状の相談を受けた場合は、この石鹸の使用の有無を確認した方がいいかもしれません。

関連ブログ:「茶のしずく石けん」と小麦アレルギー
        (皮膚科医の独り言(ひとりごと 2011.07.15)
         http://d.hatena.ne.jp/halks55/20110715/p1

参考:茶のしずく石鹸、生活センター注意呼びかけ
    (日テレNEWS24 7月14日)
     http://news24.jp/articles/2011/07/14/07186444.html

関連情報:TOPICS 
 2011.05.21 小麦加水分解物と小麦依存性運動誘発アナフィラキシー


2011年07月15日 12:40 投稿

コメントが6つあります

  1. アポネット 小嶋

    7月29日に開催された、平成23年度第1回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会で、2010年9月から2011年7月15日までに厚労省に寄せられた、医療機関及び製造販売業者から報告状況の概要が資料として提出されています。

    資料2-8 小麦加水分解物含有石鹸「茶のしずく石鹸」と全身性アレルギーに係る報告について(PDF:526KB)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001le8l-att/2r9852000001lenw.pdf

    報告例数は、医療機関が109例、製造販売業者が159例で、内訳は,

    ・食物依存性運動誘発性アレルギー疑い症例
       医療機関報告55例(35例)  製造販売業者報告25例(14例)

    ・アナフィラキシー症例
       医療機関報告20例( 1例)  製造販売業者報告 5例(0例)

    ・眼瞼浮腫、顔面浮腫
       医療機関報告 8例( 3例)  製造販売業者報告 0例(0例)

    ・蕁麻疹
       医療機関報告18例( 5例)  製造販売業者報告13例(0例)

    ・その他のアレルギー症例
       医療機関報告 8例( 3例)  製造販売業者報告16例(1例)

    ※()内は、うち専門家の評価により因果関係が否定できないとされた症例数)。医療機関からの報告と製造販売業者からの報告は、各報告から個人情報を知り得ず、相互の報告を照会できないことから、重複している可能性がある。

  2. アポネット 小嶋

    14日開催の薬食審・医薬品等安全対策部会で、10月17日までに悠香社から報告のあった件数が示されたそうです。

    朝日新聞11月15日
    http://www.asahi.com/health/news/TKY201111140569.html

    10月17日までにアレルギー症状が471人で、66人は入院が必要なケースだったそうです。

    (11月19日追記)
    18日、安全対策部会の資料が掲載されました。関連記事を書きました。

     TOPICS 2011.11.19 小麦加水分解物を含有する製品によるアレルギー報告

  3. アポネット 小嶋

    今回の新聞記事を受けて、リンク先やブログ・WEB記事等で再確認したところ、原因が疑われるのは、小麦加水分解物のうち、グルパール19Sという特定の品目とのこと。

    原因はグルパール?他社製品でも発症~悠香『茶のしずく問題』検証
    (DATA MAX 健康情報 2011.08.29~)
    http://kenko.data-max.co.jp/2011/08/post_811.html

    茶のしずく石けんアレルギー: 加水分解コムギ末グルパール19S
    (内科開業医のお勉強日記 2011.11.15)
    http://intmed.exblog.jp/14009671/

    【検証・悠香の自主回収④】67症例全てが悠香示す、使用原料「グルパール19S」に原因?
    (通販新聞 2011.09.20)(11.18追記)
    http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2011/09/6719.html

    特別委員会報告(グルパール19Sによる即時型コムギアレルギーの診断基準)
    (日本アレルギー学会)
    http://www.jsaweb.jp/modules/news_topics/index.php?page=article&storyid=114

    よって、小麦加水分解物としてこの「グルパール19S」製品が使用されているものは、茶のしずくと同じようなアレルギーが起こる可能性があるということのようです。

    といっても、添加物の表示だけでは含まれているかどうかわかりませんよね。

    朝日新聞のみが伝えていますが、11月14日の安全対策部会では茶のしずく以外でも疑い例の報告があったとのこと

    朝日新聞11月15日(記事抜粋)
    http://www.asahi.com/national/update/1115/TKY201111150162.html

    一部メディアは消費者庁がきちんと注意喚起していなかったからだと次々と批判を展開していますが、朝日新聞のみの報道があってから報道が過熱した感が否めません。

    また、厚労省は安全対策部会の資料を現時点でも公表していません。(おそらく今回も資料が膨大だから1週間くらいかかると思う。WAMNETのときは2、3日でアップされたのに)

    報道を耳にしてか、私の身近な所でも、「私も茶のしずくを長年愛用してきたので、この蕁麻疹症状はもしかして・・・。パンをたべてたら起きられなくなることがあった・・・」といった話が出ています。

    5月14日の記事でも書きましたが、「食後に運動するとじんましんのようなものが出てくる。呼吸が苦しくなる。パンやうどんを食べてもなることがある。(ビールなんかもそう)今まではこんなことはなかったのに。」などと訴えて薬の購入を求める人がいたり、調剤を求める人がいたら、まず、「どんな石鹸や化粧品を使っていますか?」と尋ねて、加水分解コムギ末(全てがダメというわけではないが)が含まれていないものかどうか確認したり、必要に応じて皮膚科やアレルギー専門外来などの受診を勧めることを痛感しました。(このことを知らない人がまだ相当数いる!)

    「茶のしずく石鹸」による小麦アレルギーについて
    (国民生活センター 注目情報)
    http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/komugi_kbunkai.html

    小麦加水分解物を含有する石けんによるアレルギー
    (国民生活センター くらしの危険 No.301)
    http://www.caa.go.jp/safety/pdf/110607kouhyou_1.pdf

  4. アポネット 小嶋

    今朝のフジテレビ系の情報番組でとくダネ!でとりあげられていました。

    被害者の声が紹介されていて、見入ってしまいました。

    内容は系列の関西テレビで10月21日に放映されたものをアレンジしたようです。

    “茶のしずく石鹸”で… 被害広がるアレルギー症状
    (関西テレビ ニュースアンカー 番組バックナンバー 2011.10.21)
    http://www.ktv.co.jp/anchor/today/2011_10_21.html#02

    放送はグルパール19Sについて、詳しい説明(上記にはない)があり、配合されている他の化粧品名を紹介、一部は自主回収が行われていることも伝えましたが、この配合された化粧品リストをWEBで探しても見つかりませんでした。(14日開催の安全対策部会で資料がでたのかなあ?)

    また、放送で登場した皮膚科医は、お好み焼きなどグルテンが多く含まれているものを食べると発症リスクが高いとも言っていました。

    メディア(特にTV)も今になって取り上げて・・という感が否めませんが、やはりスポンサーなどへの配慮があるんでしょうね。

    悠香のお茶石鹸『茶のしずく』はなぜ報道されない?
    (DATA MAX 健康情報 2011.10.21)
    http://kenko.data-max.co.jp/2011/10/post_831_1021_dm1217_2.html

  5. シッフズジャパン 鈴木幸雄

    茶のしずく石鹸と同じ加水分解コムギ末を含有する製品は厚労省の自主回収対象製品リストにあります。

    医薬部外品 6製品
    化粧品   29製品

    http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/cyanoshizuku/dl/06.pdf

  6. アポネット 小嶋

    情報提供ありがとうございます。