規制・制度改革に関する分科会第二次報告書

 21日、第19回の行政刷新会議が開かれ、規制・制度改革に関する分科会と関係省庁との調整がついたものについて、今後の規制・制度改革の方向性や目標を記した第二次報告書が示されました。

第19回行政刷新会議(2011年7月21日開催)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi19.html

 私たちと関係が深いのは、ライフイオノベーション分野について記した第二分冊で、「一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し」など30項目について、分科会・WGの基本的考え方や今後のスケジュールがなどが記されています。

規制・制度改革に関する分科会第二次報告書(第二分冊)
(2011年7月21日 規制・制度改革に関する分科会)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d19/pdf/s1-2.pdf

注目の「一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し」については、

  • 薬事法施行規則の施行により、これまで何ら問題となっていない販売形態が規制され、消費者の利便性の毀損、事業者間の公平性の阻害(地方の中小薬局等のビジネスチャンスの制限)が発生している。
  • 一方で、「一般用医薬品販売制度定着状況調査」によれば、店舗で第一類医薬品を購入する際に文書を用いて詳細な説明があったのは50.5%に過ぎず、19.8%は何ら説明がなかったなど、制度は定着していない状況が明らかになった。
  • いかなる調査においても店舗による販売にインターネット、電話等の販売が劣後するというデータはなく、郵便等販売においても安全性の確保を前提としたIT時代に相応しいルール作りは可能である。
  • 専門家により医薬品販売が適正に行われている薬局・薬店においては郵便等販売規制を撤廃すべきであり、少なくとも経過措置の切れる平成23 年5月末までに対応が必要なことから、ルール化を急ぐべきである。
  •  また、店舗での販売においては、薬剤師または登録販売者など有資格者の常駐を義務付けている。しかしこれらの有資格者を常駐させることは人件費コストを過大とするため、事実上医薬品の販売は、従来の業者に限られ、消費者の購買の機会を妨げている。
  •  昭和35 年の薬事法施行当時は「薬剤師が購入者に医薬品を手渡すこと」を想定しており、現在の情報機器などの進化は想像すらされてなかった。医薬品の専門家である薬剤師と双方向通信可能なテレビ電話・ファックス・デジタルコードなどを用いて意思疎通する販売体制を確立することを条件に常駐義務を撤廃することで、安全に一般用医薬品を販売することが可能になる。

として、次のような対応を行うとしています。

  1. 安全性を確保する具体的な要件の設定を前提に、第三類医薬品以外の薬局・薬店による郵便等販売、及びその他の工夫も含め、当面の合理的な規制の在り方について検討し、可能な限り、早期に結論を得る。<平成23 年度検討開始>
  2. なお、医薬品の販売・流通規制の在り方については、今後の環境変化に対応し、断続的に検討・見直しを行う。<逐次実施>
  3. 第一類から第三類のリスク区分についても、不断の見直しを行う。<逐次実施>
  4. 一般用医薬品を安全・安心・円滑に供給する観点から、薬剤師等の合理的かつ適切な対面販売の実施状況、円滑供給への寄与度等について検証する。<平成23 年度検討開始>
  5. 経過措置期間中の副作用発生状況等を検証し、上記②の断続的な検討・見直しの内容に反映する。<平成23 年度以降検討開始>

 一方、この間たびたび遡上に挙がっていた調剤基本料の一本化については、今回の第二次報告書には盛り込まれませんでした。

 ただ、「医療分野における制度改革の方向性」には、開かれた医療を実現し、グローバリゼーションの促進と国民からみて透明性の高い制度改革を進めることが必要」として、「 診療報酬と費用負担は国民視点での納得感、整合性、わかりやすさといった観点で見直し、安心できるセーフティネットを構築するとともに、医療提供者側の努力が報われる体系にするため、決定と検証のプロセスを抜本的に改革することが必要。」と記されていることから、何らかの形での一本化の可能性は残っているように思われます。

 この問題については、15日に行われた参議院厚生労働委員会でみんなの党の川田龍平議員の質問に対し、政府参考人は「調剤基本料の一元化については、ただいま政府内で折衝を行っておりまして、大変調整が困難な項目であると認識しております。」と答える一方、「一物二価」の状況は何とかしたいようです。

川田龍平(みんなの党)(参議院厚生労働委員会7月15日)
 (参議院インターネット審議中継、4分10秒頃から)

厚生労働委員会で予防接種法について質疑をしました
(川田龍平ブログ 2011.07.15)
http://ameblo.jp/kawada-ryuhei/entry-10954185525.html

 そこで一物二価の状況について、川田議員は次のような提案を行っています、

  • ドイツ、イタリア、デンマークなどでは、保険薬局からの保険請求に対して、政府や保険者からの支払に際して一律数%の割引を強いている政策を実行している
  • 調剤基本料であれ何であれ、基本は高いものに合わせ、窓口負担は一律とする
  • その上で効率が進んでいるところや後発医薬品の使用に消極的なところ、あるいは十分なかかりつけ機能を発揮していないところには、レセプト請求後に、そのレセプト請求の支払時に一定の割引措置を図る
  • OECD並みの医療水準というのであれば、同じOECDがいみじくも指摘するように、拙速な医療費削減政策はやめた方がよい

 私も、病院でもらうと薬代が安い、門前薬局でもらうとが高いなど、「一物三価」「一物四価」の仕組みは改めるべきだとも思います。

 一物二価が問題であるのであれば、以前にも指摘しましたが、患者負担については病院・院外薬局どこで薬をもらっても、「定額負担+薬剤料の定率負担(ビタミン剤、湿布薬などは比率をあげてもよい)」として窓口負担は一律にして、患者さんにわかりやすい仕組みに改めるべきだと思います。(償還額は、川田議員の提案も取り入れるとよい。また、大型門前薬局など一定のレセプト枚数を超えたものについては、技術料は1点9.5円で償還するという方法もある)

関連情報:TOPICS
 2011.06.19 一般用医薬品の通信販売規制問題に関する意見書(民主党議連)
 2011.04.09 規制・制度改革、医薬品のネット販売等は今回見送りに
 2010.06.18 2割の店舗で第一類の説明を行わず(覆面調査の結果が公表)
 2011.06.17 参議院厚生労働委員会質疑(6月16日)
 2011.06.13 長期高額医療の患者負担をどう軽減するか

関連記事:
【一般薬ネット販売規制】「合理的なあり方検討」今年度開始‐政府が方針決定
(薬事日報 HEALINE NEWS 7月22日)
http://www.yakuji.co.jp/entry23738.html
【民主ライフ小委】一般薬通販は検討是認‐調剤基本料一元化は削除
(薬事日報 HEADLINE NEWS 7月7日)
http://www.yakuji.co.jp/entry23600.html
【内閣府参事官】調剤基本料一元化へ‐内閣府当初案の原形とどめず
(薬事日報 HEADLINE NEWS7月12日)
http://www.yakuji.co.jp/entry23661.html

7月22日14:00リンク追加


2011年07月22日 00:11 投稿

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