TOPICS 2011.06.14 で紹介したラグビー日本代表候補だった山中亮平選手の禁止薬物検出問題ですが、何と2年間の資格停止処分となったそうです。
ラグビーの山中、2年間資格停止 ひげ育毛剤に禁止薬物
(47NEWS 2011.08.10)
http://www.47news.jp/CN/201108/CN2011081001000319.html
記事を整理すると、4月に宮崎市であった日本代表候補の合宿中の4月9日に行われた抜き打ち検査で、筋肉増強効果のあるステロイド剤系の成分の「メチルテストステロン」か「メタンドリオール」(どちらかは特定できず)が検出、4月28日にIRB(国際ラクビーボ機構)から暫定的資格停止が行われていました。
そして、山中選手は7月に行われたIRBの聴聞会で、(1)口ひげを伸ばすために育毛剤を塗った、(2)競技力向上のために使用したのではない、(3)禁止薬物が入っているとの認識はなかった などと主張し、IRBは山中選手がドーピング目的で使用したものではないことは認めものの、所定の2年間の資格停止処分を軽減する理由はないという結論が示されていました。そして、10日、日本ラクビー協会がこれを受け入れたと発表しています。
日刊スポーツによれば、日本ラグビー協会の赤間高雄アンチ・ドーピング委員長は「医師から処方された薬ではなく、簡単に買えるものだった」と説明したそうですが、おそらくこれは第一類の「ミクロゲン・パスタ」(メチルテストステロン配合で育毛目的はこれだけ。なぜ商品名を出さないの?)だと思われ、これは簡単には買えないはずです。
ミクロゲン・パスタ(PMDA)
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J0601007662_03_A.pdf
薬局で購入したのであれば、対面で情報を十分に行わなかった薬剤師と店舗の責任は大きいですし、もしネット販売や友人からの譲渡などであれば、こういったうっかりドーピングの可能性があるOTC医薬品の販売方法や情報提供のあり方を考えるべきです。(外箱に禁止物質配合と表示するとか。購入(入手)ルートも明らかにして欲しいですね。)
山中選手は、2年間(2013年4月27日まで)国内の試合も出られないことから9日に退部し、2年後の復帰を目指すそうです。何とも気の毒です。
日本アンチドーピング機構(http://www.playtruejapan.org)でも注意喚起の情報を発出しています。
一般薬・サプリメントの使用について
(日本アンチドーピング機構 2011.07.21)
http://www.playtruejapan.org/downloads/release/20110721/Attention_Supplements.pdf
関連情報;TOPICS
2010.06.14 ドーピングの話題を3つ
2011.06.14 薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2011年版
2010.07.21 ブルーライン運動(山口)
2009.12.02 うっかりドーピング防止のためには対面販売が必要
参考:
毎日新聞8月10日
http://mainichi.jp/enta/sports/news/20110810k0000e050059000c.html
日刊スポーツ8月10日
http://www.nikkansports.com/sports/news/f-sp-tp0-20110810-818305.html
デイリースポーツ8月10日
http://www.daily.co.jp/newsflash/2011/08/10/0004352542.shtml
2011年08月10日 18:44 投稿
日本ラグビーフットボール協会がプレスリリースを出しています。
ドーピング防止規則違反に対する処分について
(日本ラグビーフットボール協会 2011年8月10日)
http://www.rugby-japan.jp/news/2011/id10901.html
また、時事通信は口ひげを生やす目的で、理髪店で薦められた塗り薬を1月に薬局で購入して使用した伝えています。
時事通信8月10日
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2011081000774
一方、日刊スポーツが「ミクロゲン・パスタ」の商品名をおそらく初めて出しました。
山中使用薬、禁止薬物含有明記されていた
(日刊スポーツ8月10日)
http://www.nikkansports.com/sports/news/f-sp-tp0-20110810-818348.html
「成分が問題だと本人が気付けなかったことが全てだった。」としていますが、私たちが何とかアドバイスができなかったものかと思います。
関連ブログです
山中選手に2年間の資格停止
(大友信彦ブログ 2011.08.10)
http://otomo-rug.jugem.jp/?eid=138
合宿中も連続で使用するなど、本人は美容用品くらいにしか思っていなかったようです。
大友氏も、
今回検出されたのは、かつて「筋肉増強剤」と呼称されたアナボリック・ステロイドの一種であり、アンチ・ドーピング思想のいわば本丸。それが、一般の薬局で気軽に買えてしまう現実も、ある意味恐ろしいのですが、言い換えると、アンチ・ドーピング思想はそこまで来ている。いい悪いではなく、スポーツ界の現実はそこまで来ているわけです。
と指摘、この手のくすりの販売方法や情報提供について改めて考えさせられます。(ネットの情報もすごいですね)
一部掲示板やブログで、「ドーピング隠しに使用したのではないか」といった書き込みも見られましたが、私はやはりうっかりドーピングだと思います。
スポーツファーマシストの方も今回の措置を悔やんでいます。
SO山中選手その後
(江戸川スポーツファーマシスト組合2011.08.10)
http://sportspharmacist777.blog.fc2.com/blog-entry-70.html
それと以前記事にしましたが、テストステロン含有外用剤は、塗布部も含め、小さな子どもの手に触れないよう十分注意することが必要です。
TOPICS
2009.08.10 テストステロン配合OTC外用薬に添付文書の変更指示
2009.05.08 テストステロン外用薬は子どもが触れないようにすべき(米FDA)
仮に「ミクロゲンパスタ」だったとした場合、第一類ですが改正前の遙か前から販売されてた。スポーツ新聞・週刊誌・一般新聞等でも以前から広告も掲載ありの商品で今でも簡単にと言っては何ですが買えます。情報提供云々ありますが使用者が不要の意思表明をすれば買える訳ですし。巷には、一般用医薬品をはじめ医薬部外品、酒類、いや食品まで幅広い視点でいうと場合によってはドーピングに違反する成分も含まれている。ここで例えばザバスhttp://www.meiji.co.jp/sports/savas/products/whey100.php?を見ると(私も買ったことあるが)パッケージに、「(公財)日本アンチ・ドーピング機構の公式認定商品です。」、と認定マーク付きで表示されてるので消費者も安心して買える。ところが医薬品には表示がない。せめて医薬品には、日本アンチドーピング機構と連携して表示(中も外も)が出来ないものか!?縦割り的な思考でなくもっと網羅的に出来るはずだが・・・。また、プロやアマであろうが、学生であろうがスポーツをする現場でもドーピングの情報教育の提供がもっと必要であろう。勿論、医薬品販売業者も積極的な情報提供は必要だがそれでも最終選択権は使用者にある。それはそれで個人責任である。今回の、このドーピング違反記事で、医薬品販売の規制緩和(通販含む)に賛成の私としては危惧してるところです。 個人的には改正薬事法の制度不備もあると思ってますが。まぁ近年、政権が代わり過ぎの影響ももありますがね。
>ところが医薬品には表示がない。せめて医薬品には、日本アンチ
>ドーピング機構と連携して表示(中も外も)が出来ないものか!?
>縦割り的な思考でなくもっと網羅的に出来るはずだが・・・。
表示を希望する声は多いようなのですが、表示を入れてしまうとブランドイメージが下がるとして、メーカーが難色を示しているという話を聞いたことがあります。(危険な薬と思われるかもしれないから?)
私も山中選手のような悲劇を繰り返さないためにも、外箱に「スポーツ選手がこの薬を使用する場合には薬剤師などの専門家に相談してください。」か、それに準ずるロゴマークを作って入れてもいいと思いますね。
少なくとも「ミクロゲン・パスタ」については、使用の用途が限られ、かつ第一類の医薬品なので、情報提供という意味で、このことをしっかり明記した方がいいと思いますね。
七赤金星さん。
ザバスはそもそもスポーツ愛好者向けの商品だから、表示をしていても不思議ではないですし、この表示をすることで販売増も見込めます。医薬品とて、製薬会社は販売増については積極的に、そうでなければ消極的ということです。
今回の事例で言えば、成分を調べようとすればすぐに分かるでしょうし、ドーピングの対象成分も、ネットですぐに調べられる。「塗り薬は関係ないと思ってた」というのも、残念ながら本人の瑕疵です。
医薬品販売制度について規制緩和に賛成ということは、そういうことです。
第一、ドラッグストアでは現行法の情報提供でも
「お客さんは体格がいいですが、スポーツをされてるんじゃないですか」
とまで踏み込むこともないでしょうから(アマチュアだったら鬱陶しいと思うだけだろうし、プロならチーム専属の医療者がいる可能性)、普段から「かかりつけ薬局(薬剤師)」を持つくらいでないと防げない。
これは、規制緩和賛成とは対極の考え方でしょうが。
そもそも、ドラッグストアはアメリカ型の販売形態ですから…。
毎年、風邪薬の副作用で亡くなる人は多く、またその事を知らない消費者も沢山いますが、それを(タバコのように)薬の包装や説明書に記載するかどうかはまた別の話です。同じ成分の市販・医療用の両方の薬の説明書を見比べればその違いに驚かれるでしょう(しかし、そもそも治療のための知識が説明書に網羅されている訳ではないのです)。
理解すべきは、日本は経済活動を重要視する国であって、日本人もまたその影響を強く受けているということです(タバコの表示や価格が先進国の中でダントツに遅れていることを鑑みれば理解しやすいと思います)。
日本の金融商品は金融機関の利益が最優先であって、顧客の利益はその次です。
私は薬剤師で規制緩和には反対ですが、国民の健康は経済利益よりも優先すべきと考えるからです。