中薬で辛涼解表薬の銀翹散が新型インフルエンザに有効ではないかということは以前から指摘されているところですが、鎮咳作用のある麻杏甘石湯との合方が有用性・安全性でオセルタミビル(タミフル)と劣らないという研究結果が、Ann Intern Med 誌に掲載されています。 (薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介しています。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)
研究の 目的や背景 |
maxingshigan(麻杏石甘湯=麻杏甘石湯)とyinqiaosan(銀翹散)の合方(以下”中薬”)について、合併症を伴わない新型インフルエンザ(uncomplicated H1N1)の治療での有用性と安全性をオセルタミビルと比較する |
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研究の方法 | Prospective, nonblinded, randomized, controlled trial |
どんな人が 研究の対象? |
中国内 4地域11病院で新型インフルエンザの診断が確定した410人の患者(発症後72時間以内、15~56歳、但し平均年齢は19歳と若い) |
どんな介入? | オセルタミビル投与群、中薬投与群、オセルタミビル+中薬投与群、コントールの4群に分けて5日間薬を服用 ※中薬はephedrae(麻黄)、zhimu(知母)、qinghao(青蒿)、shigao(石膏)、yinhua(銀花)、huangqin(黄芩)、chaoxingren(炒杏仁)、lianqiao(連翹)、bohe(薄荷)、zhebeimu(浙貝母)、niubangzi(牛蒡子)、gancao(甘草)の12種の薬草で構成(生薬名はちょっと自信がありません) |
何を比較? | 解熱までの期間や症状の緩和状況など |
わかったこと | ・コントロール群で26.0時間だった解熱(fever resolution)までの時間がオセルタミビル投与群では34%、中薬投与群では37%、オセルタミビル+中薬投与群では47%とそれぞれ短縮した。 ・オセルタミビル+中薬投与群の方がオセルタミビル投与群と比べ解熱までの時間が19%短縮した ・症状緩和の状況うやウイルスのコントロールには有意差がなかった ・中薬群で2名から吐き気・嘔吐の訴えがあった |
コ メ ン ト | アブストラクトだけなので情報は限られますが、ロイター記事によれば研究者はやはり重症例には無効だと述べていて、合併症を伴わないような症例には有用だと思われます。ただ米国などでは麻黄がダイエットで濫用されたことから販売が禁止されていることもあり、実際の代替使用は限られると思います。日本でも、銀翹散は医療用医薬品はないので、現実的には漢方に詳しい薬局でこれらを購入して使用ということになります。銀翹散単独の研究もして欲しかったですね。 |
論 文 名 | Oseltamivir Compared With the Chinese Traditional Therapy Maxingshigan–Yinqiaosan in the Treatment of H1N1 Influenza A Randomized Trial |
掲載雑誌 | Ann Intern Med August 16, 2011 155:217-225; |
リ ン ク | http://www.annals.org/content/155/4/217.abstract |
論文紹介記事:
Chinese Herbs Equal to Tamiflu in Reducing H1N1 Fever: Study
(Health DAY 2011.08.15)
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=655877
Chinese herb mix may shorten flu fever
(Reuter 2011.08.15)
http://www.reuters.com/article/2011/08/15/us-chinese-herb-flu-idUSTRE77E5OI20110815
2011年08月16日 10:37 投稿