経団連の2011年度規制改革要望

 報道で目にすることがなく存在自体知らなかったのですが、経団連では毎年規制改革に関する要望書を出しています。去年からは個別要望項目として整理され、要望事項は詳細・多岐に及んでいますが、9月20日には2011年度の規制改革要望が出されています。

2011年度経団連規制改革要望
~“新生日本”の創造に向けた基盤整備を~
(日本経済団体連合会 2011.09.20)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/088/index.html

  今回の要望は今年6月17日~7月11日に、経団連全会員企業・団体を対象に調査を行い、111社・団体から寄せられた648の回答を関係委員会で精査して、12分野174項目の個別要望として取りまとめたそうです。

 私たちとの関連が深いものとしては以下のようなものがあります。

2.運輸流通分野
  http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/088/02.pdf

(31)
医薬品登録販売者制度の見直し
①登録販売者の常備配置要件について、テレビ電話などの情報通信技術の活用による、登録販売者との常時接続による説明・応答可能な環境を整備することを条件として要件適合とする。

(要望理由)
登録販売者は店舗販売業営業時間中は常駐配置義務があり、登録販売者不在時の顧客の緊急需要に応えられない実態がある。
⇒第2類及び第3類医薬品は、当該医薬品販売時における当該医薬品の情報提供は義務化されていない。顧客より相談があった場合は説明義務が有るものの、情報通信技術を用いて即座に顧客の質問に回答できるシステムを構築・導入すれば、登録販売者常駐配置と同等の環境を整えられることとなり、登録販売者不在時の顧客の緊急な販売要請に応えられる。

②販売義務時間(営業時間の1/2以上)の撤廃。

(要望理由)
薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令第2条第1項の定めにより、医薬品販売義務時間の規定(一般用医薬品を販売授与する営業時間の一週間の総和が、店舗自体の営業時間の一週間の総和の1/2以上であること)が存在する。例えば24時間営業を行なっている小売業の場合、12時間以上の販売義務が課せられることとなり、登録販売者の常備要件と併せると、事実医薬品販売ができず、参入規制となっている。

③登録販売者試験の受験資格における「実務経験」要件を撤廃する(もしくは、「実務経験」に代えて、研修制度による研修修了者にも受験資格を付与する)。

(要望理由)
現在の登録販売者制度では、満1年以上の実務経験が受験資格にあることから、実質的に1年目からの異業種参入ができず、公平な競争環境となっていない。

(32)
一般用医薬品のインターネットを含む通信販売規制の見直し
一刻も早く安全かつ平等に医薬品を供給するための制度設計について科学的根拠に基づく議論を開始し、第3類以外の一般用医薬品についても広く通信販売が可能となるよう、所要の法令整備を早急に図るべきである。

(要望理由)
2009年6月に施行された厚生労働省が定める省令により、従来適法に行なわれていた一般用医薬品の通信販売は、「対面の原則」のもと全面的に禁止された。一般用医薬品が通信販売で購入できなくなったことにより、健康の維持や体調管理に不安を訴える切実な声が事業者に多数寄せられており、販売継続を求める署名も150万を超えている。国民の健康の維持を図る観点からは、全ての国民に平等に安全に医薬品が届けられることが前提であり、今後も増え続ける買い物弱者対策の観点からも、インターネットをはじめ、消費者にとって利便性が高い通信販売を含めたかたちで供給体制を構築すべきである。

 12.その他〔医療、社会保険等〕
  http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/088/12.pdf

(10)
処方箋の電子化
患者本人を特定する仕組みを整えた上で、EHR/PHR(Electric/Personal Health Record)等を介し、処方・調剤・服薬に係る情報を患者・医療従事者・薬剤師等で共有できる仕組みを整えるべきである。

(要望理由)
処方せんの電子化を進めることにより、医療機関・薬局間の情報共有の効率化、疑義照会内容や後発品への変更の状況把握、医薬品の相互作用やアレルギー管理等の情報蓄積や活用等が可能となる。また、患者は服薬履歴を容易に蓄積し、正確な情報を受診時に提示するなどにより、適切な診療につながる。さらに、調剤・服薬履歴を照会できれば、災害・救急等の緊急時に、迅速・確実な対応が可能となる。このほか、遠隔医療の推進の側面からも処方せんの電子交付に係る環境整備は必要である。

(11)
処方箋・調剤録等の外部保存
処方せんや調剤録についても診療録等と同様に、「病院、診療所、医療法人等が適切な管理する場所」「行政機関等が開設したデータセンター」「民間事業者等との契約に基づいて確保した安全な場所」に電子的に保存できるようにするべきである。

(要望理由)
処方せんの電子的保存については、紙媒体で受け取ったものをス7キャナを利用して電子化することが認められているものの、外部保存の対象となっておらず、保存できる場所は医療機関内や薬局内に限定されている。
 また、調剤録の保存については、書面であるか電子的であるかに拘わらず、薬局に備えることとなっており、薬局外に保存することはできない。
 一方、診療録等は、安全が確保されている民間のデータセンターに保存できるようになっている(※4)。薬局個別に電子化を行う負担の軽減や情報の安全性確保のために、処方せん、調剤録等についても、安全が確保されている民間のデータセンターへの外部保存を認めるべきである。

  経団連の要望ということで、いかに人・モノをどう効率化するかということがうかがえます。

 処方せんの電子化など検討が進みつつあるものもありますが、担当の省庁はすんなりと受け入れられるようなものばかりではありません。

2009年度規制改革要望(2009.06.16)
 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/057.html
2010年度規制改革要望(2010.10.14)
 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/088/index.html


2011年09月22日 23:46 投稿

コメントが3つあります

  1. 処方せん・調剤録・薬歴もですが、同一敷地内でも、薬局と届けてない倉庫等もダメってことですから・・・・これは医科と同じにして欲しいと思います。

    それに、色々災害があると、外部保存も必要なのかもと思ってしまいますね。

  2. アポネット 小嶋

    医科はよくても、薬局はダメというのがあるんですね。(同じ医療提供施設なのに)

    去年2010年の要望書には下記のようなものもありました。(今年は対応済みなのでしょうか?)

    市街化調整区域での調剤薬局の開発許可について(p37)
    http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/088/02.pdf

    (要望事項)
    開発許可制度運用指針による市街化調整区域内での開発許可について、医療法で規定する医療施設であるところの調剤薬局について、病院等医療施設の周辺への開設を許可するよう開発許可制度運用指針に明記願いたい。

    (要望理由)
    市街化調整区域においては、医療施設関係として、医療法第1条の5第1項に規定されている病院、同第2項に規定されている診療所、第2条第1項に規定されている助産所の設置が可能である。しかし、調剤を実施する薬局の記載がないことから、市街化調整区域内の病院、診療所の近隣に調剤薬局を開設できないという状況が発生している。医薬分業をする上において、病院、診療所と調剤薬局が緊密に連携することは必要であり、国民の健康保持に寄与するためにも、市街化調整区域に調剤薬局が開設できるよう開発許可制度運用指針に明記して頂きたい。なお、開発指針許可制度運用指針では、有料老人ホームや介護老人保健施設などが病院と緊密に連携する上でやむを得ない場合において開発を認められている。

    これを認めれば、企業化した薬局の参入がより容易になるとは思いますが。

  3. 近くにも調整区域があって少し調べた事があるのですが、地域住民が必要とすると意見書を出せばいいのでは?と言われました。
    周辺に商店がほとんど無かったからだと思いますが。

    市(所沢とか宇都宮が検索すると出てきます:貼り付けがうまくないので、すみません。)によっては独自の条例?で、許可できるみたいですが、確かに原則ダメですね。

    しかし、こう言う要望書が出てるのですね・・・・有難うございます。

    「医療提供施設」になった以上、感情論では同じにして欲しいと思います。