本サイトでもたびたび紹介し、国でも取り組まれているようになりつつある、自殺対策としての医療機関への受診を促す富士モデルですが、28日の中日新聞で気になる記事が目に留まりました。(リンク切れしたらすみません)
精神薬の大量処方が問題 都内で「いのちを守る」勉強会
(中日新聞・静岡版 2011年10月26日)
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20111028/CK2011102802000136.html
記事によれば、この勉強会は都内で国会議員も招いて行われたもので、不眠に着目して精神科の受診を促す「睡眠キャンペーン」はかえって自殺者の増加をもたらすといった内容だったそうです。
気になったので、主催とされる2つの団体のHPを覗いてみました。
CCHR 人権擁護の会
http://jp.cchr.org/
http://www.cchrjapan.org/(日本支部の独自サイト?)
NPO法人再チャレンジ東京
http://www.jigyo-saisei.com/
人権擁護の会は、精神医学における人権侵害を調査・摘発し、精神治療の分野を正常化することを目的として活動している非営利の精神保健監視機関の日本支部のようで、精神科領域の薬物療法そのものに対して否定的な団体のようです。(→ウィキペディア)
一方、再チャレンジ東京の方は、個人と中小企業経営者の債務返済による自殺死を未然に防ぎ、再生をサポートする団体で、近年の景気後退で借金苦などで自殺者が増えている現状にも対応を行っているようです。
この再チャレンジ東京では、今年7月1日に富士モデルについて否定的な見解を示し、自殺対策を見直すことを求める要望書を提出しています。(人権擁護の会の影響が色濃いけど)
要望書:自殺を防ぐための正しい取り組みを
(NPO法人 再チャレンジ東京 自殺防止国民運動本部 2011年7月1日)
http://www.jigyo-saisei.com/PDF/kokumin-youbousyo.pdf
要望書は、2006年から静岡県富士市が、翌年から静岡県でパイロットプログラムとして実施し、2010年3月から国も導入を開始した精神科受診を促す「睡眠キャンペーン」について、精神科受診につながった人々が急増しているにもかかわらず、自殺者数は(2005年:71人→2009年:70人)と特に変わっていないと指摘し、このようなキャンペーンにCM費用などの巨額な予算が投じられることは、実効性という観点から、早急な見直しが必要というものです。
精神科に受診を促すのはよいが、そこで受ける治療でかえって自殺を招くのではないかという不信や不安を示したものと言えますが、富士モデルは本当に根拠に基づかない自殺対策なのか、海外での取り組みも含め、もう少し調べてみる必要があるかもしれませんね。(こういった話題を地元の中日新聞がとりあげるのはいいけど、このキャンペーンは私たちも関係する結構大事な問題なので、きちんとフォローして下さいね)
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2011年10月28日 11:46 投稿