13日の中医協総会で、これまでの議論を踏まえてまとめられた平成24年度診療報酬改定についての現時点での骨子が示されました。
第214回中央社会保険医療協議会 総会(2012年1月13日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001zphk.html
(資料総-2)これまでの議論の整理(現時点の骨子)(その1)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001zphk-att/2r9852000001zplz.pdf
内容的にはこれまでに紹介していますが、医療部会がまとめた「平成24 年度診療報酬改定の基本方針」に則して整理されているので、改めて、私たちと関係のある部分について抜粋します。(具体的な要件と点数配分はもう少し先)
【重点課題1】
急性期医療の適切な提供に向けた病院勤務医等の負担の大きな医療従事者の負担軽減
重点課題1-4
病棟薬剤師や歯科等を含むチーム医療の促進について
- 勤務医の負担軽減等の観点から、薬剤師が勤務医等の負担軽減等に資する業務を一定以上実施している場合に対する評価を行う。
【重点課題2】
医療と介護の役割分担の明確化と地域における連携体制の強化の推進及び地域生活を支える在宅医療等の充実
重点課題2-4
在宅歯科、在宅薬剤管理の充実について
(2)在宅薬剤管理指導業務をより一層推進する観点から、以下の見直しを行う。
- 在宅業務に十分に対応するためには、相応の体制整備が必要となることから、在宅業務に十分に対応している薬局に対して、一定以上の過去の実績も考慮した施設基準を設け、評価を新設する。
- 小規模薬局であっても、近隣の薬局と連携することにより、在宅業務へ参画することが可能となるが、在宅患者訪問薬剤管理指導料等について、小規模薬局間で連携して取り組む場合でも算定可能とする。
- 無菌調剤を行うためには、特別な設備が必要とされるが、現行の施設基準では一部不都合が生じていることから、より合理的な基準となるよう見直しを行う。
- 緊急時の対応を求められた場合、薬局から患家までの距離が遠いと患者に不利益が生じるケースも予想されることから、在宅訪問が可能な距離について見直しを行う。
I 充実が求められる分野を適切に評価していく視点
I-1 がん医療の推進 について
(5)緩和医療のさらなる推進の観点から、現場のニーズを踏まえて、医療用麻薬である以下の4製剤については、30 日分処方に改める。
・ コデインリン酸塩(内用)
・ ジヒドロコデインリン酸塩(内用)
・ フェンタニルクエン酸塩の注射剤(注射)
・ フェンタニルクエン酸塩の経皮吸収型製剤(外用)
I-3 精神疾患に対する医療の充実について
(3)地域における精神医療の評価
- 向精神薬は多量に使用しても治療効果を高めないばかりか、副作用のリスクを高めることが知られており、多剤・多量投与の適正化について、精神科継続外来支援・指導料の要件を見直す。
- 治療抵抗性の統合失調症患者に対し、重篤な副作用が発現するリスクの高い治療抵抗性統合失調症治療薬が使用されている場合に、医学管理を行うことについての評価を行う。
(4)一般病棟における精神医療のニーズの高まりを踏まえ、一般病棟に入院する患者に対して精神科医師、専門性の高い看護師等が多職種で連携し、より質の高い精神科医療を提供した場合の評価を新設する。(
I-5 感染症対策の推進について
(2)入院結核患者について、直接監視下短期化学療法(DOTS)の実施や会議の開催、保健所との連携に関して、医療機関でのDOTS の中身にはばらつきが大きく、また、ガイドラインの活用も徹底されていないこと等を勘案し、入院中の包括的な服薬管理等(院内DOTS)を軸に地域に帰ってからも継続的に服薬支援を行うことについて、評価を行う。
(4)院内感染の防止策について、感染防止対策チームの評価を医療安全対策加算とは別の評価体系に改める。また、感染防止対策チームを持つ医療機関と300 床未満の医療機関との連携、及び感染防止対策チームを持つ医療機関同士が相互に感染防止対策に関する評価を行った場合や、連携して院内感染対策に当たった場合の評価を行う。
I-9 イノベーションの適切な評価について
(1)薬価専門部会の議論を踏まえてとりまとめられた「平成24 年度薬価制度改革の骨子」及び保険医療材料専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「平成24 年度保険医療材料制度改革の骨子」を参照のこと。
(2)新たに区分C2(新機能・新技術)として保険適用された医療機器に伴う技術料を適切に設定し評価するとともに、その他の医療材料や医薬品に係る管理料等についても、診療上の使用実態を踏まえ適切な評価を行う。
- 特定薬剤治療管理料や外来化学療法加算など、薬剤の管理料等について、新たに保険適用された医薬品の使用実態等を踏まえ評価の見直しを行う。
II 患者からみて分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点
II-1 医療安全対策等の推進について
(1)医療安全対策等を推進するため、以下の見直しを行う。
- 院内感染の防止策について、感染防止対策チームの評価を医療安全対策加算とは別の評価体系に改める。また、感染防止対策チームを持つ医療機関と300 床未満の医療機関との連携、及び感染防止対策チームを持つ医療機関同士が相互に感染防止対策に関する評価を行った場合や、連携して院内感染対策に当たった場合の評価を行う。
II-2 患者に対する相談支援体制の充実等について
(2)入院早期から退院支援が必要な者を明確化し、また、地域連携診療計画の内容と同等のものを作成して患者に説明した場合の評価を新設し、退院支援を行うことについての評価を行う。なお、退院調整加算と退院時共同指導料を算定する場合には、地域連携診療計画の内容と同等のものを作成して患者に説明することを要件化する。また、その結果、早期に退院した場合の評価を見直す。
III 医療機能の分化と連携等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点
III-6 調剤報酬について
(1)薬学的な管理・指導の充実を図る観点から、以下の見直しを行う。
- お薬手帳を通じて薬剤情報を共有することの有用性が再認識されていることから、薬学的管理指導のさらなる質の向上を図るため、薬剤服用歴管理指導料と薬剤情報提供料を包括的に評価する。また、医薬品のさらなる適正使用を図るため、薬歴を活用した残薬確認についても評価する。
- 特に安全管理が必要な医薬品(ハイリスク薬)が処方されている場合の算定要件を明確化するための見直しを行う。
- 乳幼児への薬学的管理指導に関しては、現行では、調剤技術料(自家製剤加算及び計量混合加算)の中で調剤から薬学的管理指導に至る内容が評価されているが、点数設定を含め、現行の扱いを整理するとともに、薬剤服用歴管理指導料への加算を新設する。
(2)調剤報酬の中で適正化できるものについては、以下の見直しを行う。
- 基準調剤加算の施設基準については、算定要件である備蓄医薬品数は実態等を踏まえた品目数とすること、また、特定の医療機関の開業時間等に応じた開局時間を設定している薬局は算定要件を満たさないこととするよう見直しを行う。
- 薬学管理料における、調剤情報提供料、服薬情報提供料等については、一連の調剤・薬学的管理指導行為の中で算定されるものであるため、整理・統合する方向で見直しを行う。
IV 効率化余地があると思われる領域を適正化する視点
IV-1 後発医薬品の使用促進について
- 後発医薬品調剤加算及び後発医薬品情報提供料については、後発医薬品調剤体制加算の見直し等にあわせて、整理合理化するとともに、保険薬局における後発医薬品の調剤を促すため、調剤基本料における後発医薬品調剤体制加算の要件を見直す。
具体的には、現行の加算の要件(数量ベースでの後発医薬品の使用割合が20%以上、25%以上及び30%以上)について、22%以上、30%以上及び35%以上に改めるとともに、評価については、軽重をつける。
なお、現状、「経腸成分栄養剤」及び「特殊ミルク製剤」は、1 回の使用量と薬価基準上の規格単位との差が大きいため、数量が大きく算出されること、かつ後発医薬品が存在しないことから、後発医薬品の使用割合(数量ベース)を算出する際に除外しているところであるが、同様の観点から、「漢方製剤」及び「生薬」についても除外する。 - 後発医薬品に関する患者への情報提供を充実させる手段として、保険薬局での調剤に際し患者に渡される「薬剤情報提供文書」を活用して後発医薬品に関する情報(後発医薬品の有無、価格、在庫情報)を提供した場合に限り、薬学管理料の中で評価を行う。
- 医療機関における後発医薬品の使用を進めるため、後発医薬品使用体制加算の現行の要件(後発医薬品の採用品目割合20%以上)に「30%以上」の評価を加える。
- 保険薬局における後発医薬品の在庫管理の負担を軽減するため、医師が処方せんを交付する場合には、一般名による処方を行うことを推進する。
なお、一般名処方を行った場合の処方せん料の算定においては、「薬剤料における所定単位当たりの薬価」の計算は、当該規格のうち最も薬価が低いものを用いて計算することとする。 - 現行の処方せん様式では、「後発医薬品への変更がすべて不可の場合の署名」欄があり、処方医の署名により処方薬すべてについて変更不可となる形式となっているが、個々の医薬品について変更の可否を明示する様式に変更する。
- 「後発医薬品の品質確保」については、これまでも医療関係者や患者の信頼を確保するために、アクションプログラムに基づき、国、後発医薬品メーカーそれぞれが取組を実施しているところであるが、今後は、後発医薬品メーカーによる品質の確保及び向上への取組、情報の発信をより一層促すとともに、これに加え、以下の取組についても実施する。
1)厚生労働省やPMDA等が中心となり、医療関係者や国民向けの後発医薬品についての科学的見解を作成する。
2)ジェネリック医薬品品質情報検討会の検討結果について、より積極的に情報提供を図る。
関連情報:TOPICS
2011.11.30 調剤報酬改定の見通し(中医協論点)
2011.12.14 後発医薬品の使用促進のための環境整備方針まとまる(Update)
2011.12.26 無菌室の共同利用に関するパブコメ
1月18日 9:50更新
2012年01月13日 11:22 投稿
お薬手帳は指導と一緒になったり離れたり、もっと一貫した政策にならないものかといつも思いますね。
また、医科の情報提供書も薬剤師がいる施設は、薬局と一緒で薬事法の義務ですから、点数とるのはおかしいですよね。
医科と調剤で同じ内容のものは、整理していって欲しいものです。
(って言うと、調剤料を下げられそうですが。苦笑)
18日開催の中医協総会で、13日の議論を踏まえて新たな骨子が示されました。
第215回中央社会保険医療協議会 総会(2012年1月18日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000020222.html
(資料総-2-1)これまでの議論の整理(現時点の骨子)(その2)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000020222-att/2r98520000020268.pdf
私たちと関連のある部分で追記となったのは、おそらく上記赤字の部分だけです。
前回総会での委員からの、「保険薬局における後発医薬品の情報提供については、実施しているところだけを上乗せ評価するのでなく、原則として、後発医薬品を扱うすべての保険薬局で行われるように既存の薬学管理料の要件に追加する方向で見直すべき。」という意見が反映されたものと思われます。
となると、算定用件はまだはっきりとは決まったわけではありませんが、この通りで決まれば、薬情の算定自体も詳しい後発品情報を盛り込んだ薬情を発行しないと算定できないということになる可能性があります。
このことは、すなわち一定の後発品の取扱いや在庫が必要となる他、調剤前にまず「薬情」を示して、変更するかどうかの判断を患者さんに尋ねるなど、これまでの保険調剤の手順変更も必要となるかもしれません。
パブリックコメントが開始されています。(現時点では、トップページや更新情報からリンクが張られていなかったので、どこに掲載されているかすぐにわからなかった。これは問題あり)
「平成24年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」
に関するご意見の募集について
http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p20120118-01.html
意見や考えがある方は、提出してみて下さい。25日(水)までです。
27日の中医協総会で、病棟業務について算定要件が示されています。(点数はまだ。調剤は次の総会だと思う)
第218回中央社会保険医療協議会総会
(2012年1月27日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000215yd.html
個別改定項目について(その1)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000215yd-att/2r98520000021634.pdf#page=41
関連記事:
病棟薬剤師の業務に対する評価の具体案が出ました
(MagPlus 2012.01.27)
http://magplus.jiho.jp/magplusplus/report/id/31
(28日、関連記事リンク追加)
医療介護CBニュース1月27日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/36487.html
m3.com 医療維新1月27日(要会員登録)
http://www.m3.com/iryoIshin/article/147688/
算定可能な施設は限定されるようです。
日経やNHKの報道によって知ったのですが、36ページの特定機能病院等における初・再診料等の評価の見直しというところも、私たちに微妙に影響するかもしれません。
特定機能病院等における初・再診料等の評価の見直し
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000215yd-att/2r98520000021634.pdf#page=36
現在も一部実施されていますが、簡単に言うと、紹介状なしで大学病院などの大病院(紹介率の低い特定機能病院及び500 床以上の地域医療支援病院)に、ほかの医療機関による紹介状がなしで受診した場合は、初診料の一部を保険適用外(おそらく、該当患者は点数を大幅引き下げとし、残りの部分は患者から自費分として直接請求)とすることですが、今回はこれに加え、逆に症状安定などで大病院から診療所などに紹介されたにもかかわらず、大病院での診療を希望する患者に対しても、同様の自己負担を求める制度です。
中医協総会で27日に提案されたばかりなので、すんなりと決まるかどうかは疑問ですが、もし決まるとなると、診療所などへの紹介率が高まり(髙ければこの報酬は適用されない)、大きな病院の勤務医の負担軽減となる一方、外来患者は減少し、院外処方せんの発行減となる可能性があります。
周知期間を設け、実施するとしても2013年の4月からだそうですが、大病院の門前にある薬局は影響を受ける可能性があります。
いずれにしても、医療連携の中での地域薬局の関わり役割の検討が求められることだけは確かのようです。
参考:
m3.com 医療維新1月27日(要会員登録)
http://www.m3.com/iryoIshin/article/147632/
NHK NEWS WEB1月27日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120127/t10015591981000.html