PubMed で検索を行っていたところ、国立医薬品食品衛生研究所(国衛研)が毎年報告書をWEBに掲載していることを初めて知りました。この研究は2011年の報告書に掲載された研究です。
国立医薬品食品衛生研究所報告
http://www.nihs.go.jp/library/hakkounen.htm
大規模副作用症例報告データベースの解析に関する研究
(Bull, Natl. Inst. Health Sci.,129,1-26(2011)
(ファイルが21.13MBと非常に大きいです)
http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2011/001-026.pdf
内容は、医薬品の安全性、有効性における現在の課題と同研究所が行ってきた大規模副作用症例報告データベースの解析に関する研究について紹介したもので、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などについての安全情報の解析結果も記されています。
解析の方法は、以前にも紹介(TOPICS 2010.12.18)したことのある(よくまだ理解できていないけど)“Proportional Reporting Ratio”(PRR、副作用自発報告による統計的なシグナル検出手法の一つ)が用いられていて、各薬剤ごとの有害事象の特徴が表されています。(報告件数が多いからといってそれが特徴的な副作用とはならない)
私たちが現場で遭遇した副作用や有害事象がその薬剤にとってどの程度の特徴的なものであるかどうか、どのような副作用に留意すべきかを知ることができ、一読をする価値はあるかと思います。(例えば、抗うつ薬の薬剤離脱症候群やセロトニン症候群などの発現のシグナルは成分ごとによって特徴がある)
私もよく知らなかったのですが、ここでいうデータベースというのは、米国FDA が公開している大規模副作用報告データベース(AERS:Adverse Event Reporting System) のことで、米国内で販売される医薬品については、重篤な副作用について米国内に限らず世界中から当該医薬品に関わる副作用をFDA に報告することが義務付けられていることから、日本からの報告数も多いそうです。(2005年第3四半期から2010年4四半期までの総報告数2,476,827件中、米国が1,613,796件、次いで日本が150,045件と2番目、さらに英国、フランス、ドイツと続いている)
著者は、「AERS は自発報告にもとづく副作用データベースであることから、当該医薬品の販売量である分母を知ることができない統計学上の弱点を持つが、報告数410万件、307万症例の世界から集められた厖大なデータは、医薬品の安全性を考える上で貴重な情報である」と指摘し、この分野の研究の推進が強く求められているとしていて、私たちもこれらの解析方法についてどういうものなのか理解する必要がありそうです。
国衛研の報告にはこの他にも、現場と関係がある興味ある研究や報告がありました。これについては別記事でまとめて紹介したいと思います。
関連情報:TOPICS
2010.12.18 処方薬と暴力行為との関連性
2012年02月07日 00:19 投稿