ジェネリックは医師に相談して(東京保険医協会ポスター)

東京保険医協会ポスター 都内の方はもうご存じかもしれませんが、仲間の薬剤師から、「見ると気分が悪くなるぞ」といって、教えてもらったポスターです。(右画像をクリックすると、別ウインドウでリンクのPDFファイルが開きます)

 このポスターは、保険医の自主的な任意団体である東京保険医協会(http://www.hokeni.org/)が作成したもので、ジェネリックを積極的に推進している薬局にとってはかなり刺激的な文言が並んでいます。

ジェネリックポスター「ジェネリック(後発医薬品)は医師に相談して」
(待合室掲示用) (東京保険医協会 2012.1.26 掲載)
http://www.hokeni.org/top/download/download.html#dl50
http://www.hiroshima.med.or.jp/news/docs/posterA3.pdf

 ジェネリックと先発品間の有効性や安全性などの問題については、他の団体もこれまでも指摘している(TOPICS 2009.08.28)ところですが、このポスターではより具体的に「ジェネリックの効能格差は最大40%」といった問題点を掲げた他、「薬局ごとに採用しているジェネリックは違っていて、よく効くジェネリックを調剤してもらえるとは限りません。ジェネリックに切り替えるときは医師に相談しましょう」などとも呼びかけています。

 これでは、「医師が選ぶジェネリックはよくて、薬剤師(薬局)が選ぶジェネリックはよくない」ともとられかねない内容ですね。

 また、ポスターの下の方に「ジェネリックの中の安くてきちんと効くものを医師と相談して使いましょう」とも記されています。それなら、推奨するジェネリック選択基準も含めて具体的に示して欲しいですね。(この団体は、メーカーが違っても中身は同じものが少なくないというジェネリックの現状を当然知っているんでしょうね。)

関連情報:TOPICS 
 2009.08.28 後発品は有効性や安全性が異なる可能性がある(広島県医師会)


2012年03月12日 22:03 投稿

コメントが10つあります

  1. アポネット 小嶋

    まだWEBに見解はアップされていませんが、日本ジェネリック医薬品学会がこのポスターを問題視しているようです。

    後発品は薬剤師でなく「医師に相談」
    東京保険医協会 GE学会「誤解だらけ」、下手に変更要望
    (RISFAX HEADLINE 3月28日)
    http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=38028

  2. アポネット 小嶋

    日本ジェネリック医薬品学会(http://www.ge-academy.org/)の見解がWEBにアップされました。

    協会に対し、早急な現在のポスターの回収または内容の変更の検討を求めています。

    「ジェネリック(後発医薬品)は医師に相談して」院内掲示用のポスターに対する日本ジェネリック医薬品学会の意見について
    (社団法人 日本ジェネリック医薬品学会 2012年3月26日)
    http://www.ge-academy.org/img/iken120326.pdf

    学会では、協会が指摘した次の4点について見解を述べています。

    1.新薬(先発医薬品)と「同じ成分、同じ効能」か?
    2.ジェネリックの効能に“ばらつき”がある
    3.ジェネリックの効能格差は最大40%!
    4.薬局でよく効くジェネリックはもらえるのか?

    私たちと関係のある4.については次のように記されています。

    ————————————————————————————————–

    ジェネリック医薬品は先発医薬品と同等で代替できると確認された上で承認され販売されています。医薬品として、よく効く、効かないということは有りません。貴協会もそのような医薬品の存在を許容されているとは思えませんが、もし先発医薬品と比較して「よく効く」または「効かない」医薬品があれば、いずれの場合も先発医薬品と同等効果ではないため、製造中止となります。

    ジェネリック医薬品間、あるいは、あるジェネリック医薬品と先発医薬品間で異なるとしましたら、色、形、保存性、飲みやすさ、味などが異なる可能性があります。

    治療に用いる主成分を医師が選択していただければ、ジェネリック医薬品間のそれら製剤特性上の違いまで医師に調べていただかなくても、薬剤師は、患者さんの気持ち、反応をお聞きし、観察することによって、最も妥当な医薬品を選択できる情報源と職能を持ち、また、そのための教育も受けているため、安心して任せられると思います。

    また、一般名による処方箋記載が進められています。主成分は一般名で医師が選択し、個々の医薬品は薬剤師が選択するという合理的な制度に是非、ご理解をいただきたいと思います。

  3. アトピー患者

    私はアトピーで皮膚科に通っています。
    ジェネリック製品は一般に通常製品より安価であることが宣伝されています。
    しかし、そうでしょうか。
    今月の初めに薬局で調剤してもらったとき、ジェネリックにしますかといわれたので
    「はいいいですよ」と答えてジェネリックにしました。
    帰って調剤明細書を見ると後発医薬品調剤加算、
    後発医薬品情報提供料という項目がありました。
    疑問に思い、今月の終わりに全く同じ構成でジェネリックを使わないで
    といい、調剤してもらいました。
    そうすると、何とジェネリックを使用した場合、
    使用しない場合に比べて30円高いのです。
    要は、薬局がジェネリックを薦めるのは利益を出すためです。
    このようなことは、皆さんご存知でしょうか。

  4. アポネット 小嶋

    コメントありがとうございます。

    おそらく、先発医薬品とジェネリック医薬品との価格差が少なかったために、こういったことが起きたのだと思います。

    薬の計算は、一日または1回あたり10円単位で5捨6入で計算します。(例えば、15円を超えて25円以下のくすりは、20円として計算する。つまり15円10銭の薬と25円の薬は同じ20円と計算されてしまう)

    このため、ジェネリックに代えても、金額が同じということがたまにおこります。

    こういったことは、1錠(1g)あたりの薬の価格が低い場合にも起こることがあります。

    それと、後発医薬品を調剤した場合の加算と後発医薬品情報提供料ですが、ジェネリック医薬品の在庫や管理などのためにはコストがかかる、ジェネリック医薬品についての情報を患者さんに提供する必要があるなどとして、厚労省が後発医薬品の使用促進のために設定したもので、薬局が利益を出すためのものではありません。

    しかしご指摘のように、このためにジェネリックを使用するとかえって高くなるというケースもあることも事実です。

    こういったためというわけではありませんが、これらはこの4月から廃止になりました。

    ですから、今後は同じ薬局でジェネリックを調剤することでかえって高くなるということはなくなるはずです。

    疑問点は調剤をしてもらう薬局でよくうかがってみて下さい。

  5. アポネット 小嶋

    16日、3月26日に日本ジェネリック医薬品学会が示した意見書に対して、東京保険医協会が見解(反論)をしめしています。

    当協会院内掲示用ポスターに対する貴学会の意見に関する見解について
    (東京保険医協会 2012年4月16日)
    http://www.hokeni.org/top/public/generic/2012/120416generic.html 

    4の「薬局でよく効くジェネリックはもらえるのか?」については、次のような見解を述べています。

    ————————————————————

     「薬の選択は薬剤師に任せて」と言われますが、(医師が後発薬に非同等性を感じている)処方医の意識を考慮しますと、後発薬の安全性と有効性がしっかり担保されるまでは、薬剤アレルギー、他院の処方の有無、飲み合わせ、服用方法など「処方薬の服用に関すること」は専門の薬剤師さんを信頼し、「処方薬の臨床的な効果について」は薬剤師さんは具体的には知り得ない部分も多いことに鑑み、医師が後発医薬品変更後の効果についても患者さんと話し合いながら評価をするのが妥当ではないかと思います。

    医師は薬の薬効のみならず最終的な治療効果(血圧を下げて心血管疾患を予防する、血糖をコントロールして透析や失明、動脈硬化症進展を予防するなど)を挙げることを目的としておりますので、有効性が高く安全であると評価したジェネリック医薬品であれば、処方の時点で積極的にジェネリック医薬品を指定して処方します。

    ただ残念ながらこれまで述べた理由により、一部のジェネリック医薬品に対して有効性と安全性に疑問を持っている医師が多いのも事実です。今次診療報酬改定を受けて、一般名処方を受けた薬剤師さんがジェネリック医薬品を採用するケースは多くあります。医師が院外薬局にて変更された後発医薬品をよく知らないケースも多いと思われます。従って、真に患者さんのための医療にするためには、医師と薬剤師が積極的に情報交換をする体制を整える必要性を痛感いたします。

    >有効性が高く安全であると評価したジェネリック医薬品であれば、
    >処方の時点で積極的にジェネリック医薬品を指定して処方します。

    「ジェネリックの中の安くてきちんと効くもの」があるなら、根拠を示して具体的にリストを示したらいかがでしょう!

  6. >医師と薬剤師が積極的に情報交換をする体制を整える必要性

    私はここが一番問題と思いますが。

    そもそも勝手に変えられるのが嫌なら「院外処方」にしなければいいと思いますし、院外に出しても自分達の都合のいいように薬剤師が働けばいいと思うのはおかしいです(従業員では無いんだから)し、ご指摘の様に、薬剤師が臨床を知らないだろう?っておっしゃるように、医師が品質のいい物を科学的に理解されているとは思えません。
    院外処方には、それなりのルールがあります。
    まずはルール知って守らないといけないでしょう。

    と、過激な言葉かもしれませんが、きちんとお互いの立場から意見を言う機会が無いから、余計にけんか腰になっているような気がします。

  7. アポネット 小嶋

    いろいろと見解が書かれてますが、要するに協会の方たちはジェネリックは全ての面で先発品と全く同じものを求めているんですよね。でも、これって無理じゃないでしょうか?

    一方で、ジェネッリックメーカーは先発品の弱点を補う努力もしていて、先発品と全く同じものを求めること自体疑問がありますね。

    そんなに心配なら「私たちは先発品しか処方しません」と言えばいいと。

    >医師と薬剤師が積極的に情報交換をする体制を整える必要性

    この情報交換って、ジェネリックの良し悪しについてのことなのですかね?

    調剤した銘柄名は今のところ処方医に連絡するルールになっているのだから、自分で治療効果を見て、必要に応じて変更不可にすればと思うのですが。

    でもこんなことをやっているのは日本ぐらいじゃないですかね?

  8. アポネット 小嶋

    関連ブログです。(先日はリンクどうもありがとうございます)

    「当協会院内掲示用ポスターに対する貴学会の意見に対する見解について」について
    (てんしす 4月18日)
    http://tensis.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-ac1b.html

    わかりやすく解説して指摘は辛辣、最後の部分は笑ってしまいます。(私たちの声を代弁。拍手です)

  9. アポネット 小嶋

    日本ジェネリック医薬品学会(http://www.ge-academy.org/)は4月16日に東京保険医協会が示した見解(反論)に対し、医薬品の品質に関する基礎的理解が不十分であるために、世間で起こっている現象を正確に把握されていない結果であるとして、19日、改めて見解を明らかにしてます。

    「社団法人日本ジェネリック医薬品学会への返書(2012.4.16 付)」
    に対する弊会の見解について
    (社団法人 日本ジェネリック医薬品学会 2012.06.19)
    http://www.ge-academy.org/img/iken20120619.pdf

    GE学会では、ジェネリック医薬品あるいは先発医薬品メーカが先発医薬品の添加物の一部変更した医薬品、剤形を変更した医薬品、含量を変えた医薬品を承認申請する場合についての認識が、十分ではないとしたうえで、ジェネリック医薬品に関する多くの報告、論文が述べている情報を、まず、医薬品に関する科学の視点で評価、整理することが必要とした指摘しています。

    その一方で、客観的にそれぞれが持つデータを、広く収集し、客観的に解析する共通の場を作り上げるなどの共同歩調の行動も取りたいとして、まずは保険医協会が発行している「ジェネリック(後発医薬品)は医師に相談して」ポスターの変更または回収をすることを改めて求めています。

  10. だいさんしゃ

    >ジェネリック医薬品に関する多くの報告、論文が述べている情報を、まず、医薬品に関する科学の視点で評価、整理することが必要

    日本ジェネリック医薬品学会は、学会誌をだすべきでしょうね。あと、GE学者を語るなら、インパクトファクターのつく科学雑誌に論文をだしてからかな。そういう状態になれば、科学の視点で評価、整理できるのでは?