昨年の春から夏にかけての公表より遅れて厚生労働科学研究成果に順次掲載される前年度(2010年度)の厚生労働科学研究の報告書ですが、21日までに私たちと関連深い「医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究」の報告書(全文)のほとんどがようやくアップされました。
今回まず紹介するのは、「諸外国におけるセルフメディケーション・OTC販売に関与する専門家の役割及びトレーニングの状況調査に関する研究」という、海外におけるセルフメデフィケーションの現状とこれに関わる地域薬局の取り組みを紹介したものです。日本における今後の地域薬局の活動の展開の可能性についての示唆となるもので、是非皆さんも一読することをお勧めします。(この他の報告書についても目を通してから順次紹介する予定です)
諸外国におけるセルフメディケーション・OTC販売に関与する専門家の役割及びトレーニングの状況調査に関する研究(平成22(2010)年度)
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201034082A
この研究は、地域における薬局における薬剤師の役割は、処方せん調剤だけでなく、地域の消費者の健康状態や症状を評価し、OTCの販売による軽医療に係る治療機会の提供、受診勧奨等や地域における健康増進・管理に関与することも重要であるとして、現地調査、各国薬剤師へのアンケート調査などを通じて海外の地域薬局の活動状況を中心にまとめられたものです。
報告書は、ニュージーランド(NZ)、豪州、フランス、フィンランド、デンマークの地域薬局と薬剤師の役割や医薬品の販売規制などを紹介した「諸外国のOTC供給に関する規制」、「医薬品のインターネット販売に係る諸問題に関する資料調査」、NZと豪州の保健事業プログラムなどの取組を紹介した「OTCを用いた薬剤師による軽医療介入」で構成されており、本サイトでこれまで紹介してきた取組やさまざまな話題がわかりやすく解説されています。
私自身よく理解できなかったさまざまな取り組みや知らなかった制度や実情等を知ることができ、たいへん参考になりました。
そのうちのいくつかを箇条書きで紹介します。
- NZでは個人輸入であっても、個人輸入であっても、処方せん医薬品として指定される成分や販売が規制される成分を含有している製品を輸入することは認められていない。輸入規制を厳格に執行するために、税関に薬剤師も配置されている(ファイル1のp11)
- NZや豪州では処方せん医薬品のオンライン販売が可能だが、処方せんを送付する手間や郵送に時間がかかることから、あまりニーズは高くない(ファイル1のP10-11、17)
- フランスでは、患者に対して近隣の薬局ネットワークを構築し、医療への適正なアクセスを保障するため、薬局の設置や移転、再編には規制が定められている(ファイル1のp18-19)
- フィンランドでは処方せんは1年間リフィルが可能(1回の調剤は3か月分まで、規制や制限がある医薬品は不正入手を防ぐ目的で初めに調剤を依頼した薬局でしか取扱いができない)(ファイル2のp4)
- フィンランドでも箱出し調剤だが、薬局は保険償還の対象となるすべての医薬品を在庫する義務がある(ファイル2のp5)
- デンマークでは18歳以上にのみ販売できるものや1日1個しか販売できないOTC医薬品のカテゴリーがある(ファイル2のp9)
- NZではNZ薬剤師会が提供する一般消費者向け介入の「Pharmacy Self care」というプログラムがある
- このプログラムには600の薬局が登録し、一般的な健康問題に関する31種類のファクトカードが年間50万枚以上が利用されている(ファイル2のp19-)(豪州にも同様のものがある ファイル3のp12)
- このファクトカードには、5月~9月までの間処方せんなしでの販売が認めらているタミフルの薬剤師用プロトコルもある(ファイル3のp7-8)
- 豪州では軽医療への介入における診断にフィジカルアセスメント、採血等が必要となることから第5次地域薬局合意において、血糖コントロールレベル評価の為の採血が行われている(ファイル3のp15)
関連情報:TOPICS 2011.10.20 日本セルフメディケーション学会で話をしました
2013.05.10 リンク再設定
2012年03月22日 23:31 投稿