意識消失のリスクがある薬で交通事故を起こしたら責任は誰?(Update)

 京都で交通事故で7人が死亡するという痛ましい事故がおこりました。各紙の報道によれば、てんかんがあり自動車の運転が止められている状況たったとのことで、関連性があるとすればやりきれない思いがあります。

 突然意識を失い交通事故を起こすことは心臓疾患などでもおこることがあり、けっしてまれなケースではありませんが、私たちとして頭をよぎるのは薬の服用が原因でもこういったケースが起こりうるという点です。

 意識消失や突発性睡眠などが起こって交通事故が起こる可能性がある医薬品としては、パーキンソン病治療薬のプラミペキソールやロピニロールが有名です。

 PMDAに掲載されている交通事故を起こす可能性のある医薬品の副作用の件数を調べると結構あります。

プラミペキソール(ビ・シフロール、ミラペックス=最近発売)

年度 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004
交通事故 1 3 2 8 23 1   1
意識消失   1   1        
失神             1  
突発性睡眠 4 6 9 26 2 3 3
睡眠発作     3 2   1    

ロピニロール塩酸塩(レキップ)

年度 2011 2010 2009 2008 2007 2006
交通事故     2      
突発性睡眠 4 1 6 5 2 1

 これらの薬は、警告欄で自動車の運転が強く禁止されていることは皆さんもご存じだと思いますが、最近はこれ以外でも、意識消失を起こして交通事故の危険性が指摘されるものがあります。

バレニクリン酒石酸塩(チャンピックス)

年度 2011 2010 2009 2008
交通事故 1      
意識消失 10 3 1 4
失神 2 1    

 プレガバリン(リリカ)

年度 2011 2010
交通事故 1  
意識消失 13 15
失神 3  

モキシフロキサシン塩酸塩(アベロックス)

  2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005
意識消失 1   3 3 5   4
失神   2   3 1 3 1
低血糖症   6 1     2 2

(てんかんや糖尿病の既往歴者に投与してこれらが発現している可能性もある。同様のものとしてテリスロマイシンもあるが現在は販売が中止されている)

 添付文書には、チャンピックス、リリカ、アベロックスいずれも「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」となっており、服用中は「車の運転をさせない・しない」ことになっていますが、都会ならともかく、地方では通勤通学など車を日常的に使用するのが一般的です。(「投与にあたっては,これらの副作用が発現する場合があることを患者等に十分に説明すること」だけで果たしてよいのだろうか?)

 チャンッピクスを発売するファイザーでは患者向けに「自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないでください」としたリーフ等を作成していますが、服用中に車の運転が全くないというのは現実的には難しい(ほとんどありえない)のが現状です。(ちょっと前までは“避けて下さい”の表現だったのが、“しないでください”となった。処方医が処方しやすいように配慮してなのか、それとも事故を起こした場合は使用者に責任を転嫁するため?)

 現時点では警告欄での注意喚起は行われていない、アベロックスやリリカやチャンピックスを服用中に他人を巻き込むような交通事故を起こした場合、その責任は(代替の治療法があるにもかかわらず処方した)処方医にあるのか、それとも助言(服薬指導)や疑義照会が(十分)できなかった薬剤師にあるのか、運転することを承知してこれらを服用した本人にあるのか、それとも警告欄での注意喚起など、対応が遅れた製薬会社にあるのか、今回不幸な事故を目の当たりにして、改めて頭をよぎりました。(いつかはきっと起こってしまうと思う)

「リリカ」服用後に自動車事故7件
意識消失でカーブ曲がり切れず激突、注意喚起届かず
(RISFAX Headline 2012.04.04)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=38100

関連情報:TOPICS
 2011.10.20 PMDAからの医薬品適正使用のお願い「チャンピックス錠」
 2008.05.22 バレニクリン、パイロットは使用禁止(米国)

4月13日 9:20 アベロックスに関する事項を追加


2012年04月13日 02:06 投稿

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