医薬分業のすすめ(http://www2.nsknet.or.jp/~s-yoshi/)でご存じの方もいるかと思いますが、石川県のよしだ小児科クリニックの吉田均先生が、地元医師会の学術講演会でお話をするとうかがい、さっそく参加してきました。
タイトルは、「小児上気道炎 ~見直しませんか、いわゆる“かぜ薬”~」というもので、ググッたところ、去年日本外来小児科学会年次集会のランチョンセミナーで行われた講演で使われたスライドとだいたい同じものが使われていました。
「小児上気道炎-見直しませんか、いわゆる”かぜ薬”-」
(2011.8.27 HORIBA Medical Web site)
http://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Medical-Diagnostics/Documents/tec_jp/1uhw_2011gairaisyoni_LS.pdf
講演の内容はスライドの通り、抗菌剤の適正使用(CRPと白血球数の迅速測定により診断と治療を行うことがポイントだとのこと)と解熱剤の使用による害の他、本サイトでもこれまで紹介してきた小児で使われる鎮咳薬や抗ヒスタミン薬の問題点などでした。
今まで、話には聞いてきましたが、「なぜ発熱が有益で、解熱剤の使用が有害なのか」がわかった他、Hibや肺炎球菌のワクチンの導入が小児科診療を大きく変えているといった話もされました。
吉田先生の所では、ある日の抗菌薬の処方率はわずか5%、抗ヒスタミン剤と鎮咳剤に至ってはゼロ、処方なしという人も42%もいたそうです。(つまり処方するのは去痰薬くらい)
また、過去には家族に解熱薬を処方しない理由について説明することが大変だったという話もしていました。
なお、吉田先生と同様の考え方をもつ先生方らは下記のような総説やガイドラインを作成しています。(これらを読んでしまうと、日本で販売されているOTCかぜ薬のこどもへの使用はできないと改めて認識)
資料:
西村龍夫:小児プライマリーケアにおける抗菌薬の適正使用について
―プライマリーケアの治療を考え直そう―
(日本小児科学会雑誌:114巻(9)1357-1366、2010 にしむら小児科HP)
http://www009.upp.so-net.ne.jp/tatsuo/sho114-09-P1357-1366.pdf
小児外来診療における抗菌薬適正使用のためのワ-キンググル-プ:
小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン
―私たちの提案―
(外来小児科2005;8:146-173)
http://www004.upp.so-net.ne.jp/ped-GL/GL1.htm
関連情報:TOPICS
2010.12.25 小児用かぜ薬販売時の情報提供の徹底周知を通知
2011.07.29 去痰薬、乳児への有用性はない(フランス研究)
2008.12.09 カナダ当局、6歳未満にはOTC風邪薬・咳止めを使用しないよう勧告
2008.10.08 小児用OTC風邪薬は4歳未満に与えてはいけない(米国)
2008.04.09 抗ヒスタミン剤、2歳未満は処方せんが必要(豪州)
2012年04月19日 23:56 投稿
当日参加した耳鼻科の先生がさっそくblogでとりあげています。
足利医師会学術講演会から
(ロックな耳鼻科 2012.04.20)
http://ogujibi.blog110.fc2.com/blog-entry-1152.html
さっそくのご紹介ありがとうございます。
この講演をきっかけに足利のお医者さんに
こういった流れができてくることを期待します。
現時点では上気道炎に対する薬剤の使い方の認識が
他地域に比べ遅れているような気がします。
いつもブログ拝見させて頂いています。
解熱剤や抗ヒスタミン剤の処方頻度は以前から見るとかなり減ったというのが実感です。
それでも、まだ処方されている先生の考え方一つで必ずしもそうではないケース(抗生剤など、親たちのニーズもあるのでしょうね)があり、患者さんへの説明を変えなければいけないときは考えさせられます。