薬学雑誌の5月号に、誌上シンポジウム「医薬品の安全性情報とリスクコミュニケーション」が掲載されています。
この企画は、本来昨年静岡で3月31日に開催されるはずであった、日本薬学会第131年会の一般シンポジウム「医薬品の安全性情報とリスクコミュニケーション」(→プログラムファイルp29)の演者の方が発表予定内容としてまとめたようです。
内容的には、 TOPICS 2012.04.15 で紹介した厚生労働科学研究と重複します
医薬品の安全性情報とリスクコミュニケーション 大東文化大院 杉森裕樹 NTT東日本関東病院 折井孝男 |
(誌上)シンポジウムを企画するにあたって |
欧米における医薬品の安全性に関するリスクコミュニケーションの取り組み並びにわが国の現状と課題 鈴鹿医療大薬 山本美智子 |
リスクコミュニケーションの概念、EMA、MHRA、FDA。、そして日本の取組状況について解説。承認薬情報、安全性情報、添付文書情報がそれぞれ独立して提供されている問題点を指摘し、これらの情報を関連づけたり、全体の概要を把握するために、情報をシームレス流れとして相互に関連付けられた情報であることが望ましいとした他、医薬品情報の作成やレビューなどにも、患者が参画していけるような環境づくりが進むことを期待した。 |
医薬品のリスク・マネジメントにおけるエビデンス診療ギャップ:レセプト分析からの視点 京大院 中山 健夫 |
未知の副作用の同定や既知の副作用への実施状況の解明に役立つことが期待されるレセプトデータの活用法記した上で、抗パーキンソン薬における心弁膜症リスクによる事例を紹介した。(関連記事 TOPICS 2011.04.21) |
医療・健康記事をよくするためのメディア・ガイドラインの提案 毎日新聞生活報道部 小島正美 |
プロトピック軟膏に関する共同通信の記事を題材に、国内の健康に関する新聞報道のあり方について問題点を指摘したうえで、10項目からなる「メディア・ガイドライン」の試案を提示。また、ニュースを読み解く能力を高めるために、リスク理解ガイドブックの作成を提案している。(本サイトの論文紹介記事もこの指摘に対応したい) |
患者とのリスクコミュニケーション 厚労省医薬食品局安全対策課 広瀬誠 |
厚労省の取組を紹介。患者とのリスクコミュニケーションはリスクに関係のあるすべての立場の関係者を対象として、情報共有、相互理解を深め、それぞれの立場で取り組むことが必要と指摘し、患者向けの情報の作成には患者団体の関与も検討する必要があるとした。 |
山本氏が指摘するように、私も一つの成分(商品)のページから、添付文書(過去の添付文書についてもどのような安全性対策が取られてきたかを検討する上で必要)、承認情報、詳しい安全性情報(可能であれば海外の規制機関への情報へもリンク)の履歴などが見れるようにすることが必要かと思います。
また、患者さんも参加しての情報づくりが必要とされている今日、処方医に過度の配慮をすることなく、どのような安全性情報をどのようにわかりやすく伝えるかを検討する必要があると思います。(薬情に重大な副作用をどのような表現で記載し、どのように伝えるかなどは最たるもの。確かにケースバイケースはあるとは思うけど、現場の裁量に任せてしまうのどうなのだろうか)
関連情報:TOPICS
2012.04.15 医薬品のリスクコミュニケーション(厚生労働科学研究)
2012年05月01日 21:37 投稿
読売新聞及びYomiDr.(http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/)掲載の「最新の医療ルネサンス」で副作用情報に関するシリーズ掲載が始まっています。
副作用情報をどう伝えるかについてがテーマで、薬局における情報提供のあり方(特に薬情)を考えさせられます。
5月1日(インターフェロンによる自殺)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=58183
5月2日(抗アレルギー薬による意識消失)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=58219
5月2日の記事の「起きる可能性は低くても、(副作用についての)大切な情報は患者に伝える工夫をできないものか」という声には耳を傾ける必要があります。
5月8日の記事では、記者さんの質問に慶応大の望月真弓教授が答える内容となっています。
5月8日(Q&A)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=58351
薬剤師による副作用の情報提供について、望月氏は次のようにコメントをしています。
薬局の窓口で薬を患者さんに渡す時、時間が十分ないなどの理由で、説明文書をただ渡すだけで終わっているところもあるようだ。
重篤な副作用について説明すると、患者さんが副作用を恐れるあまり、治療に必要な薬を飲まなくなることを心配して、まれな副作用はあまり強調しない傾向がある。
本来は、薬によって得られる利益と副作用による不利益を理解できるように説明しながら伝えることが大切。