TOPICS 2009.12.12で、ピルを薬局で処方せんなしで販売するという英国の試行事業(pilot scheme)を紹介しましたが、25日その検証結果が明らかになりました。
Pharmacies should offer under-16s direct access to contraceptive pill, says NHS report
(Pulse today 2012.04.25)
http://www.pulsetoday.co.uk/newsarticle-content/-/article_display_list/13820810/pharmacies-should-offer-under-16s-direct-access-to-contraceptive-pill-says-nhs-report
報告書全文はおそらく下記。本来なら上記記事からログインしなければ見れないはずなのですが、ググったらログインなしで見ることができた。
Evaluation of Oral Contraception in Community Pharmacy Pilot in Southwark and Lambeth Final Evaluation Report (NHS South East London 2012.1)
http://www.pulsetoday.co.uk/documents/4585159/0/contraceptive+service.pdf
試行事業は5薬局で21か月にわたり行われ、741人から相談を受け、512人にピルが販売されたそうです。
相談者の多くは30歳以下(675人92.2%)で、19歳以下も22.5%(165人)を占めた他、16歳以下の女子3人に販売されたそうです。
236人(46.1%)は使用するのが初めてでしたが、使用経験者も181人いたそうです。
相談に要する時間は7分~45分でバラツキはありますが、相談件数が多かった薬局では平均19分だったそうです。
検証を行ったところ、試行事業を行った薬局では緊急避妊薬の供給が大幅に減少し、トータルで費用の節減ができたことから、報告書では、トレーニングを積んだ地域薬剤師による質の高い避妊サービスが行われたとして、事業を国内全体に広げるべきとした勧告が行われたそうです。
費用対効果で薬局での緊急避妊薬の供給よりピルの販売の方がよく、地域薬局できちんと対応が行われていることが理由ですが、16歳未満への販売も考慮すべきとしたことから、英国内では結構話題となっています。(報告書では13歳以上16歳未満に販売を行った場合のモデルケースも示してる。また各紙のインタビューでも13歳以上の事業拡大をNHSの担当者が答えている)
英国王立薬剤師会(RPS: Royal Pharmaceutical Society of Great Britain)もコメントを発表しています。
RPS in support of direct access to contraceptive pill for under 16s
(RPS 2012.04.25)
http://www.rpharms.com/what-s-happening-/news_show.asp?id=520
なお、英国内では別の地域で、13歳以上16歳未満にピルを供給する試行事業なども行われています。(TOPICS 2010.11.02)
関連情報:TOPICSTOPICS
2009.12.12 ピルの処方せんなしでの試験販売始まる(英国)
2008.12.10 ピルのOTC化に向けて、試験販売が開始へ(英国)
2008.04.05 薬剤師はさらなる役割を担うべき(英国)
2007.12.13 英国、ピルのOTC化に向け試験販売を計画
2007.02.06 ピルのOTC化の検討が明らかになる(英国)
2010.11.02 ティーン女子への処方せんなしでのピルの供給(英国)
参考:
Widen over-the-counter pill access, says NHS report
(BBC NEWS 2012.04.25)
http://www.bbc.co.uk/news/health-17847069
Oral contraceptive services should be available from all pharmacies
(PJ Online 2012.04.26)
http://www.pjonline.com/news/
oral_contraceptive_services_should_be_available_from_all_pharmacies
Contraception study says 13-year-olds should get the pill in certain scenarios
(Guardian 2012.04.25)
http://www.guardian.co.uk/society/2012/apr/25/the-pill-13-girls-nhs
Girls aged 13 ‘should be given the contraceptive Pill from pharmacies without a prescription’ claims NHS report(Mail Online 2012.04.25)
http://www.dailymail.co.uk/health/article-2134931/The-Pill-given-girls-13-prescription-report-says.html
Easier access to Pill for under 16s
(WebMD UK 2012.04.26)
http://www.webmd.boots.com/contraception/news/20120426/easier-access-to-pill-for-under-16s
2012年05月01日 23:28 投稿
米国への出張の際に、現報を読んでみましたが、若年者の意図せざる妊娠と、その結果としての中絶が多々発生し、様々な社会的問題も起こっている地域での取組との報告であり、内容的にはかなり問題のある調査の様に思えました。
尤も、過剰な負担と結果としての待ち時間が多大になるGP(一般診療医)や、産・婦人科医等の負担を軽減し、かつ緊急事後避妊薬の使用を減らすという効果が、地域の薬剤師の活動により期待できるという事が繰り返し述べられ、そのための環境整備も謳われている点は、活用できそうです。
論文として医学雑誌に掲載されています。
Evaluation of a community pharmacy delivered oral contraception service.
(J Fam Plann Reprod Health Care. Pulished online Aug 25.2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22923279
http://jfprhc.bmj.com/content/early/2012/08/24/jfprhc-2012-100304.abstract