アジスロマイシンと突然死のリスク

 クラリスロマイシンやエリスロマイシンなど、マクロライド系抗生剤にはQT延長や心室細動など突然死をもたらす重大な副作用の事例がありますが、NEJM 誌に、アジスロマイシン(ジスロマック)でも同様な傾向があるのではないかとした論文が掲載されています。(薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介しています。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)

研究の
目的や背景
マクロダイド系抗生剤では催不整脈による突然死のリスク増が知られている。アジスロマイシンについてはリスクは少ないとされているが本当かどうか
研究の方法  コホート研究
どんな患者が研究の対象? Tennessee Medicaid の1992年から2006年の患者データのうち、アジスロマイシン(347,795処方)、アモキシシリン(1,348,672処方)、シプロフロキサシン(264,626処方)、レボフロキサシン(193,906処方)が処方された人と抗生剤を与えられなかった1,391,180処方のデータ
何を指標? アジスロマイシンを5日服用した人
何を比較? 抗生剤を服用しない人や他の抗生剤を使用した人
アウトカム 心臓血管病などよる死亡増加
わかったこと 抗生剤を使用しなかった人と比べ、
アジスロマイシン使用者で心臓血管病による死亡リスク増が2.28倍、何らかの原因による死亡リスク増が1.85倍だったのに対し、アモキシシリン使用者では、リスク増はなかった
アジスロマイシン使用者では、アモキシシリンの使用者と比べ、
心臓血管病による死亡リスク増が2.49倍、何らかの原因による死亡リスク増が2.02倍だった
コ メ ン ト 抗生剤を選択する場合には疾病の重症度によっても異なることがある。アジスロマイシンがより死亡リスクが高いケースに使用されている場合もあり、この結果を持ってアジスロマイシンを心疾患を有する患者に慎重投与すべきかどうかの判断は難しい。
論 文 名 Azithromycin and the Risk of Cardiovascular Death
掲載雑誌等  N Engl J Med 2012; 366:1881-1890 May 17, 2012
リ ン ク http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1003833

論文紹介記事:
Popular Antibiotic May Raise Risk of Sudden Death
(New York Times 2011.05.16)
http://www.nytimes.com/2012/05/17/health/research/popular-antibiotic-may-raise-risk-of-sudden-death.html
抗生物質アジスロマイシンが死亡リスク高める可能性、米研究
(AFP BBNEWS 2012.05.17)
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2878329/8953660
アジスロマイシンと心血管死亡リスク:絶対的影響は少ないが、心血管疾患患者では考慮必要?
(内科開業医のお勉強日記 2012.05.17)
 http://kaigyoi.blogspot.jp/view/magazine#!/2012/05/blog-post_4734.html
Azithromycin May Up Risk of Cardiac Death
(Medpage TODAY 2012.05.16 要会員登録)
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Arrhythmias/32725


2012年05月17日 14:35 投稿

コメントが3つあります

  1. そこでリカマイシンを使いたいのに、原材料製造の関係で…あわわわ。

    とりあえず、「現在販売している会社が、後発品扱いで新規に製造販売してくださることを希望」とお願いしておきました。

  2. アポネット 小嶋

    米FDAがこの論文についてのステートメントを発表しています。

    FDA Statement regarding azithromycin (Zithromax) and the risk of cardiovascular death
    (FDA Drug Safety and Availability 2012.05.17)
    http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm304372.htm

    Healthcare professionals should be aware of the potential for QT interval prolongation and heart arrhythmias when prescribing or administering antibacterial drugs.

    「医療専門職は抗菌薬を処方するか適用するとき、QT延長と不整脈の可能性を認識しているべきである。」

    つまり、レボフロキサシンを含め抗菌薬を処方する場合は留意するようにとのことです。

    日本の添付文書でも、重大な副作用の項に

    QT延長、心室性頻脈(Torsades de pointesを含む)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、QT延長等の心疾患のある患者には特に注意すること。

    と記されていますね。

  3. アポネット 小嶋

    海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.10 No.11、FDAのステートメントの和訳が掲載されています。(本来ならPMDAのサイトで提供した方がいい)

    Azithromycin[‘Zithromax’]:心血管死のリスクに関するFDAの声明
    (海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.10 No.11)
    http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/11120524.pdf#page=7

    関連記事も出ています。

    抗生物質と心臓病死の関連で安全性情報―米当局
    (あなたの健康百科 5月21日)
    http://kenko100.jp/news/2012/05/21/02