ピオグリタゾンの使用と膀胱がんの発症リスク(海外研究)

 BMJ 誌のオンライン版に、ピオグリタゾン(アクトス他)と膀胱がんの発症リスクを調べた新たな研究(データは英国、研究はカナダの研究チーム)が発表されています。(薬剤師関連のstudyについて、一部については下記のスタイルで紹介しています。記述法などに誤りがございましたらご指摘下さい。)

研究の目的 2型糖尿病患者でのピオグリタゾン(アクトス他)の使用が膀胱がんのリスクの増加と関連があるかどうか
研究の方法 nested case-control study
どんな患者が研究の対象? 1998年から2009年までの英国の general practice research database の処方データのうち、経口の糖尿病治療薬が新規に処方されていた患者115,727人のデータ(平均年齢64歳)を追跡調査(平均4.6年)
何を指標? 膀胱がんの発症
何と比較? ピオグリタゾン以外の糖尿病治療薬が処方されていた患者
アウトカム 膀胱がんの発症リスク
わかったこと ピオグリタゾンが使用されていた人では、
 膀胱がんの発症リスクは全体で1.83倍
 使用が24カ月を超えると1.99倍
 累積使用量が28000mgを超えると2.54倍
但し、絶対的リスクは最大に見積もって1年間で100,000人につき137人
同系統のロシグリタゾンでは膀胱がんの発症リスク増は認められなかった
コ メ ン ト general practice research database は600以上のGP施設1000万人超のデータがありデータとしては大規模。また、BMIや喫煙やアルコールの使用の有無などにより調整されている。実際に処方された薬を服用していたがどうかまでは把握されていないとの課題があるが、フランス当局の解析結果(TOPICS 2011.06.10)よりも関連性が高いとする結果(研究方法は異なったかもしれないが)が出て興味深い。最近、リスク増は認められなかったとする報告(論文・報告あれこれ2011年5月)も発表されているが、今回の結果はこれまでの研究結果を支持したものとなっている。但し、絶対的リスクは小さいとの見方もでき、ピオグリタゾンの使用については使用の意義を唱える専門医は多いという。なお論文を見ると、ルクセンブルクも新規処方の禁止措置が取られているようです。
論 文 名 The use of pioglitazone and the risk of bladder cancer in people with type 2 diabetes: nested case-control study
掲載雑誌等 BMJ 2012; 344 Published 31 May 2012
リ ン ク http://www.bmj.com/content/344/bmj.e3645

関連論文:(発症リスクの増加は認められないとした論文)
Pioglitazone and bladder cancer:A propensity score matched cohort study
Br J Clin Pharmacol Online First  11 MAY 2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22574756
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2125.2012.04325.x/abstract

ピオグリタゾンによる膀胱がんリスク認められず
(MT Pro 2012.05.16 要会員登録)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1205/1205037.html

関連情報:TOPICS TOPICS
  2011.08.03 ピオグリタゾン製剤(アクトス)の調査結果報告書(PMDA)
  2011.07.22 EMA、ピオグリタゾンはベネフィットがリスクを上回る
  2011.07.07 ピオグリタゾン製剤は中止を(npojip)
  2011.06.23 アクトス問題、国内でも膀胱がんリスクの対応へ(Update)
  2011.06.11 ピオグリタゾン(アクトス)更新情報(米FDA)
  2011.06.11 仏ピオグリタゾン製剤の使用制限についての国内コメント
  2011.06.10 仏当局、ピオグリタゾン製剤の一時使用停止を発表
  2011.04.30  ピオグリタゾンの膀胱がんリスクへの懸念(フランス)
  2010.09.18 ピオグリタゾンと膀胱がんの発症リスク(米FDA)

論文紹介記事:
Diabetes Drug Pioglitazone Associated With Bladder Cancer Risk
(Medical News Today 2012.05.31)
http://www.medicalnewstoday.com/articles/246065.php
Diabetes Drug Actos May Increase Bladder Cancer Odds
(Health DAY 2012.05.31)
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=665287
Study details cancer risk of Takeda diabetes pill
(Reuter 2012.05.31)
http://www.reuters.com/article/2012/05/31/takeda-actos-idUSL5E8GVEEO20120531
Study Affirms Actos Bladder Cancer Risk
(Medpage today 2012.05.31 要会員登録)
http://www.medpagetoday.com/Endocrinology/Diabetes/33012


2012年06月01日 12:11 投稿

コメントが4つあります

  1. シッフズジャパン鈴木

    5月31日に紹介して頂いたEMAのデータベースで、ACTOSの副作用が疑われる症例数を早速、調べてみました。

    2012年4月までに3,861例報告されており、内訳を見ると、ヨーロッパ経済圏が17.6%と少なく、それ以外の経済圏が82.2%を占めています。

  2. アポネット 小嶋

    Adobe Reader 10.3 を導入して、さっそくみて見ました。
    (下記ファイルはAdobe Reader 10.x 以上でないと開けません)

    ACTOS
    http://www.adrreports.eu/dashboards/20120516/product/ACTOS.pdf

    膀胱がんだと“Renal And urinary disorder”に該当するんでしょうかね?

    表の左上の方をクリックすると数字が出てきて、“Renal And urinary disorder”は259件の報告があるそうですが、詳細項目では、“urinary bladder polyp”というのが2件で、“bladder cancer”というのは見当たりませんでした(データの見方を研究しないと)

    一方、“cardiac disorder’s”のカテゴリーにある“cardiac failure”(心不全)は221件もの報告があり、死亡のアウトカムも9例あったそうです。

    まいけるさんが概要を教えてくれましたが、表になって一目瞭然でわかりやすいですね。

  3. シッフズジャパン 鈴木

    Reaction GroupsからNeoplasms benign, and unspecifiedを選ぶと950例となります。

  4. アポネット 小嶋

    ありがとうございます。

    ここに“bladder Cancer”がありましたね。

    全部で576例で、死亡のアウトカムは11例ですね。