向精神薬を使う人への情報提供を考える（クロ現を見て）

　記事にするかどうか悩みましたが、WEB上での賛否両論を見ていて、薬をめぐる問題の一つとして取り上げます。（私の誤解・不勉強等がありましたらご指摘ください）

　放送をご覧になった方もいるかと思いますが、話題となっているのはNHK13日放送のクローズアップ現代です。再放送はありませんが、番組ページで一部動画と番組内容を全て文字にしていますので内容を知ることはできます。

“薬漬け”になりたくない～向精神薬をのむ子ども～
（NHKクローズアップ現代 2012年6月13日放送）
　http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3213_all.html

　個人的には25分という放送の枠に収めようとして、さまざまなケース（発達障がいだけではなく、統合失調症やうつ病、てんかんのケースなどもあると思う）がごっちゃとなってしまっていて、結果的に薬漬けになるので向精神薬は避けた方がよいとらえられような内容で、違和感がありました。

　案の定、放送後大きな波紋を呼び、ブログやツイッター、フェイスブック（私は見ていないけど）などでさまざまな意見が飛び交っています。

　放送前日にアップされた番組関連記事にもさまざまな書き込みがあり、現場の薬剤師からのコメントも寄せられています。

未成年の精神科受診者「１５万人」という現実を前に
（スタッフの部屋　2012.06.12）
　http://www.nhk.or.jp/gendai-blog/100/123222.html

　放送で出てくる小刻みに震えるというケースはおそらくジスキネジアだと思いますが、番組では「こういう薬を飲んでこうなった」など、どのような薬を具体的に服用したかは一切触れておらず、「くすりの特性」を知らない視聴者からみれば、向精神薬は全て危険と印象付けてしまうように思いました。

　日本でも使用に慎重な専門家がいることは承知していますが、周りの対応とともに必要に応じて、ストラテラやコンサータなどの薬の力を借りて、ＡＤ/ＨＤなどを抱えていてもうまく日常生活を送ることができている人や親御さんにとっては、不安感だけが残るような内容だったのではないかと思います。（番組で紹介した副作用は、どう考えても抗精神病薬か抗うつ薬の投与によるものではないかと思う。でも番組をみると発達障害のくすりでもこうなると思えてしまう）　

　子どもに限らず、向精神薬についての情報提供は難しい問題です。

　くすりによって今の症状が楽になると思えば、患者さん（とその家族）にとってはくすりに頼りたくなったり、依存したくなるのが心情でしょうが、服用によるさまざまな副作用の可能性は必ずあるわけで、このことについてどれだけ患者さんとその家族にどの程度情報提供が行われているかどうか、しばしば疑問に思うことがあります。（眠剤ひとつとってもそう）

　特に今回の番組のように、薬の使い方がまだ十分に確立していない（そもそも臨床試験や適応症がない）、体への影響がまだはっきりとわからない子どもの場合には、服用をした場合のメリット・デメリットについてきちんと情報を提供することが必要であり、医師から十分な説明がない場合には、現場の薬剤師が薬についての疑問などについて質問をぶつけることがこれからどんどん出てくるのではないかと思います。

　一方で、番組や番組コメント欄にあるように子どものこころの問題（発達障害をこれに含めるかどうかは微妙）は、まわりの大人たちや社会がさまざまなサポートを行うことで、薬を服用しないで済むケースもあることも事実だと思います。（極論だけど、認知症への社会の対応と似ているところがあると思う）

　くすりに関する情報提供だけではなく、患者をサポートするのに、どのような社会資源があるのかどうか（当然知っておく必要がある）の情報提供や、そういた資源とのネットワークづくりも、近い将来薬局に求められるのではないかと思います。

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2012年06月15日 23:52 投稿