調剤と情報の最新号が届いたのでパラパラと見ていたら、「アカデミック・ドーピング」にも気を付けよう! というタイトルが目に留まりました。
内容的には、以前本サイトでも紹介した、メチルフェニデートなどの stimulants(中枢神経刺激剤)が、学生や研究者の間で、「頭のよくなる薬」として使用が広がっているという話しだったのですが、「アカデミック・ドーピング」という概念まであるとは知りませんでした。(→TOPICS 2008.12.09)
Academic doping
(Wikipedia, the free encyclopedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Academic_doping
調剤と情報の記事に興味を持たれた方もいるかと思うので、取り上げている記事・論文とその紹介ブログ等をチェックしてみました。
Smart drugs for cognitive enhancement: ethical and pragmatic considerations in the era of cosmetic neurology.
(J Med Ethics. 2009 Oct;35(10):611-5.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19793941
米大学生の間で「頭の良くなる薬」が流行、将来は試験前にドーピング検査?
(AFP BBNEWS 2009.10.03)
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2649076/4710758
(上記紹介記事)
Brain Enhancement Is Wrong, Right?
(New York Times 2008.03.09)
http://www.nytimes.com/2008/03/09/weekinreview/09carey.html
アカデミアでのドーピング
(ハーバード大学医学部留学・独立日記 第二部 三重大学医学部編 2008.03.11)
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/blog-entry-203.html
(上記紹介記事)
久しぶりに気になったのでさらに調べたところ、こういった認知機能の強化(cognitive-enhancing)を目的とした使用はキャンパスだけではなく、高校生の間でも広がっており、ググるといろいろな記事などが出てきます。
Risky Rise of the Good-Grade Pill
(New York Times 2012.06.09)
http://www.nytimes.com/2012/06/10/education/seeking-academic-edge-teenagers-abuse-stimulants.html
あまりにフツーな高校生のドーピング
(わいわい! サンフランシスコ日本語で話す会 2012.06.11)
http://blog.livedoor.jp/waiwai_sanfrancisco/archives/1728503.html
(上記紹介記事)
Smart Drugs “As Common As Coffee”: Media Hype about Neuroenhancement
(PLoS One. 2011; 6(11): e28416.Published online 2011 November 30)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3227668/
(Smart Drugs に関するメディア記事などをレビューしたもの、引用文献等が参考になる)
Academic doping or Viagra for the brain?
(EMBO Rep. 2011 March 3; 12(3): 197–201. Published online 2011 February 11.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3059919/
Misuse of “study drugs:” prevalence, consequences, and implications for policy
(Subst Abuse Treat Prev Policy. 2006; 1: 15.Published online 2006 June 9.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1524735/
(結構前から、“Study drugs” として問題が指摘されていた)
ご存じの通り、日本ではリタリンの乱用が社会問題化してから、メチルフェニデート製剤などの使用や管理が厳しく制限されています。このため、病気になりすまして入手したり、他人から譲ってもらうということはまずありません。
海外でももちろん治療目的以外の使用や譲受は厳しく規制されていますが、ADHD治療薬として、ティーンの間でこれらの薬が少なからず使用されている現状を考えると、NYtimes の記事のように高校生などの間でもこういった目的外の使用は少なくないのでしょう。
In Their Own Words: ‘Study Drugs’
(New York Times 2012.06.09)(高校生からの告白)
http://www.nytimes.com/interactive/2012/06/10/education/stimulants-student-voices.html
ウィキペディアによれば、スポーツの運動機能を高めると同様に、認知能力や記憶力を高めるスマートドラッグはさまざまなものがあるそうで、私たちも留意する必要があるかもしれません。(目的外の使用が時に有害事象を招くことがある)
スマートドラッグ(ウィキペディア・日本版)→リンク
関連情報:TOPICS
2008.12.09 科学技術の発展のためであれば、ドーピングは許される?
2012.06.19 子ども向け処方薬の処方動向(米国)
2012年07月31日 00:56 投稿
受験生に葛根湯・・・葛根湯の売り文句としてインターネット上で踊っていたり、某薬学部のホームページでもそういった利用にについて紹介されていたりします。これも、一種のアカデミックドーピングだと思います。
はたして、薬剤師がそういった利用方法を勧めることは、どうなのだろうと、ここ暫く悩んでいます。
日本でもあるんですね。
でもこれは明らかに使用を誘っているとも読みとれますね。ちょっとまずいでしょう。
受験生へメッセージ
(北陸大学 薬学部 研究室紹介-東洋医薬学研究室)
http://www.hokuriku-u.ac.jp/yakugaku/toyo2/e_message.html
* 受験生に一言
★肩が凝っていませんか?~葛根湯について
・・・・・・・
最近、日本では受験生が好んで葛根湯を飲むケースが増えています。葛根湯の中に含まれている麻黄という生薬が配合されていますが、麻黄に含まれているエフェドリンという成分には、眠気を取る作用があります。又、葛根には、解熱・鎮静作用を持つ成分が含まれています。
受験生の年頃は、ストレスがたまり、肩こり、イライラして集中力に欠ける傾向にあります。葛根湯は、風邪の予防はもちろん、ストレスを和らげ、集中力を高め、眠気を取り、筋肉のコリをほぐす、鎮静(抗ストレス)効果があるので、受験生の方にもおすすめできる漢方薬です。
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使われるゆえんは下記サイトの解説に譲ります
麻黄…エフェドリンのお話
(証クリニック)
http://www.akashi-clinic.com/kurashi/017.html
ググると他にもいっぱい出てくるところを見ると有名な話なのですね。(知らなかったです)
葛根についても、以前テレビで放送があったようですね。
知識の宝庫!目がテン!ライブラリー
(秋の七草! クズ は万能 第747回 2004年9月5日)
http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/04/09/0905.html
こんなWEB広告を出しているところも
http://www.interq.or.jp/tokyo/yakuzen/ky-hp/etc/etc-1.htm
http://miyawakiyakuten.okoshi-yasu.com/jyuken.html
マオウ或いは、エフェドリンが、米国で濫用され、取締問題にまでなったことは知られていますが、一方で、受験生に葛根湯というのは、眠気をもたらす抗アレルギー薬の配合が無いといったあたりからの勧めであったと聞いていました。
マオウの配合されている処方は他にもある訳であり、例示されている薬店(とても、薬局とは言いづらい)の惹き文句も首をひねるところです。
もっとも、きちんと薬効として歌えるのならば、SSPのように医薬品として承認を独自に獲得するべきかもしれません。
漢方なんですから虚実をみて汗が出てない事が最低条件と思います。
それを薬学部が・・・・それはもうやめておきますが、落語の葛根湯医者的感覚で使うと危険な場合もあります。
安易な使用は避けるべきです。
これで問題があれば、今度は「葛根湯が危険」になって広まりそうです。使い方が悪いのに。
少し違うかもしれませんが・・・最近の高齢者に抑肝散の乱用もちょっと・・・です。