食物アレルギーフォーラム IN あしかが

 19日は、個人的に微力ながらお手伝いしている、ボランティアグループ「あしかが子育て応援ネット」(http://ak-ouen.net/)主催の食物アレルギーのフォーラムに参加してきました。

食物アレルギーフォーラム IN あしかが を開催しました
(あしかが子育て応援ネット8月19日)
http://ak-ouen.net/120819

 すでに自治体によっては、食物アレルギーを持つお子さんに対するきめ細かい対応が行われているところもあるかと思いますが、地元足利でも昨年7月に「学校給食食物アレルギー対策委員会」が設置され、今年4月には食物アレルギーの児童・生徒への市内における学校給食における具体的な対応法をまとめた対応マニュアルが作成されています。(ググると同様のマニュアルやガイドラインはけっこうある)

学校給食食物アレルギー対応マニュアルの策定(足利市)
http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/arerugitaioumanyuarusakutei.html

 このフォーラムでは、この対策委員会の委員長を務められた市教育委員会の次長さんと、足利市学校給食食物アレルギー相談医の小児科医、食物アレルギーを持つお子さんの保護者の3人から、足利市の取組などについてお話を頂きました。

 食物アレルギーについての正しい知識の他、社会的対応、本人や家族がどのような点に困っているのかなどの話をうかがうことができ、たいへん勉強になりました。

 下記は、フォーラムで気づいた点をまとめたものです。(知らなかった。勉強不足の点がいっぱい)

  • 「食物アレルギー診療ガイドライン2012」で、定義が「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」に改められた。
    (以前の定義は「原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシー反応など)が起る現象」)
  • 牛乳を飲むと下痢をするのは、乳糖を体質的に消化できない「食物不耐症」であり、食物アレルギーではない(但し、乳糖の精製過程で牛乳成分が混入することがあり、この場合は食物アレルギーとなる)
  • 果物などを食べると口の中が腫れたり、かゆくなる、鮮度落ちた青魚によるじんましんなどは、食物に含まれているヒスタミンやセロトニン、サリチル酸化合物などの化学物質(薬理活性物質)が原因となってアレルギー様の症状を起こすもので、これも食物アレルギーではない
  • アレルギーを起こしやすい物質は、乳幼児期と学童~成人期では異なる。乳幼児では鶏卵・乳製品・小麦・魚卵(休日に家族で回転ずしに行った際、きれいな「いくらに」幼児が興味を示し、初めて口にして病院にかけこむという事例が少なくないという)であるのに対し、学童期~成人期にはこれらには年齢とともに耐性を獲得し、甲殻類(エビ・カニ)、そば、果物類が上位を占めるようになる
  • 鶏卵がダメでも魚卵は大丈夫といったように交差抗原性というものが存在する
  • 食物アレルギーの診断で問診は一番重要(食材・調理方法・摂取した量・食べてから発症するまでの時間・再現性はあるかどうか・症状の特徴は?(携帯やデジカメでの撮影を推奨))
  • 血液検査は、集団生活が開始される時期(3歳)や環境が変わるとき(入・進学時。学校の対応もある)に行うとよい。但し、体調の状態にも左右されるので注意が必要。(IgE抗体は皮膚の状態にも左右されるので、スキンケアを普段から行っておくことが重要)
  • 卵白、牛乳、小麦については、アレルゲンごとの血液中の特異的IgE 抗体の量(測定値)をわかりやすいように0 〜6 にクラス分けした「イムノキャップ」の測定値と症状誘発の可能性をグラフにしたプロバビリティカーブである程度発症のリスクが推定できる。(低ければ、除去解除の目安となる)
  • 食物アレルギーの原因食物の確定、耐性獲得の診断、除去解除の目安には食物経口負荷試験(いわゆる実食)必要であるが、まれにリスク(アナフィラキシー)も存在するので必要に応じて医療体制がととのったところで行うことが望ましい。
  • 軽度の症状には抗ヒスタミン剤やステロイドでの対応も可能(インタール内服はあまり効果はない?)だが、息苦しさや声のかすれなどのアナフィラキシー症状(正確には、呼吸器に限らず、かゆみなどの皮膚症状や血圧低下などの循環器症状など、複数の臓器に重い症状が現れるものをアナフィラキシーという)が出現した時は迷わずエピペンを使用すべき
  • エピペン今起きているアナフィラキシーの対処するものであり、遅発性のアレルギー(これはステロイドが有効)が発現するリスクもあるので、必ず使用したエピペンをもって医療機関をすぐに受診すること
  • エピペンは登録医制が引かれているが、登録医(登録医療機関)は公表されていないので、直接医師に相談するしかないとのこと(ハチ毒の関係で意外と皮膚科医には登録医がいるらしい)
  • 学校での対応は医師の診断が必須だが、(学校)生活管理指導表が診断書に代わるらしい

 今回のフォーラムの開催にあたり、WEB情報をチェックしたのですが、今年5月に改訂版がつくられた下記資料が最近の情報も網羅した、もっともわかりやすく詳しい内容となっています。(茶のしずく石鹸の問題や災害時の対応にも触れています。一読をお勧め。冊子版も希望があればもらえるようです)

ぜん息予防のための
よくわかる食物アレルギーの基礎知識2012年改訂版【PDF12.3MB】
(大気環境・ぜん息などの情報館 独立行政法人 環境再生保全機構)
http://www.erca.go.jp/yobou/archives/3716
http://www.erca.go.jp/yobou/images/uploads/kanjazensoku/ap039.pdf

 その他には、下記のような資料があります。小児科医の講演でも紹介されていました。

食物アレルギーの診療の手引き2011【PDF:1.6MB】
(リウマチ・アレルギー情報センター)
http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/05_2011.pdf

食物アレルギーの栄養指導の手引き2011【PDF:4.8MB】
(リマウチ・アレルギー情報センター)
http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/06/06_2011.pdf

保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
(厚生労働省 2011.3)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku03.pdf

保育所におけるアレルギー対応ガイドラインQ&A(2012.3 Update)
(保育所におけるアレルギー対応ガイドライン作成検討会)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku04.pdf

 学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(2008.3)【PDF:17.5MB】
(学校保健 電子図書館)
http://www.gakkohoken.jp/book/bo0001.html
http://www.gakkohoken.jp/book/pdf/0100.pdf

食物アレルギー(保育園・幼稚園・学校における食物アレルギー日常生活・緊急時対応ガイドブック)
(東京都2010.3)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/kankyo_eisei/allergy/allergy/to_public/guidebook

関連情報:
第85回アポネットR研究会報告(食物アレルギーの病態と治療について)
第83回アポネットR研究会報告(子どもの軽度発達障害)


2012年08月20日 00:21 投稿

コメントが3つあります

  1. シッフズジャパン 鈴木

    魚卵という一括名は家禽の卵と類似した印象を与えるので、表示が勧められている品目名・いくら(代替表記名:イクラ、スジコ、すじこ)とした方が良いと思います。 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin18.pdf

  2. アポネット 小嶋

    助言ありがとうございます。

  3. アポネット 小嶋

    今年も8月11日に開催します。

    今年も食物アレルギーフォーラムを開催します
    (あしかが子育て応援ネット 2013.06.22)
    http://ak-ouen.net/130622

    お近くの方はどうぞ。