モメタゾン(主に点鼻)と不整脈(Signal)

 WHO Pharmaceuticals Newsletter の最新号で、モメタゾンに関するシグナル検出(Signal、単に“シグナル”という場合もある)の報告が目に留まりました。

 WHOでは、シグナル検出を、「それまで知られなかったか、もしくは不完全にしか立証されていなかった薬剤と有害事象との因果関係の可能性に関する、さらに検討が必要な情報」と定義していますが、シグナル検出はあくまでデータと議論による仮説であり、因果関係がはっきりと証明されたものではないという点には留意する必要があります。

Mometasone and Arrhythmia(SIGNAL)
(WHO Pharmaceuticals Newsletter No.4 Aug 2012 )
http://www.who.int/medicines/publications/Newsletter_4_2012.pdf#page=20

 WHO-UMC(Uppsala Monitoring Centre)メンバーの106か国からの自発報告を集積したデータベースVigibase には2012年3月までにモメタゾンの使用との関連が疑われる15の不整脈と2つの心房性不整脈の報告があるそうです。(米13、英1、スウェーデン1、スイス1)

 報告者らは先天性の心疾患があった新生児の事例を除外した16例(鼻腔内噴霧13例、吸入2例、局所使用1例)について検討を行っています。

 投与中止による事象消失が、9つの事例で認められた他、4つの事例では再投与で不整脈が再燃したそうです。

 報告者らは、Arch Intern Med 誌に掲載された  case-control study (プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンとヒドロコルチゾンが対象)なども踏まえ、モメタゾンの使用と不整脈の関連性が示唆されるとしています。(外用の場合は生物学的利用能は低いと考えがちですが、報告者らは鼻腔内吸入では全身的に影響が及ぶことも留意する必要があるとしています)

Glucocorticoid use and risk of atrial fibrillation or flutter: a population-based, case-control study.
Arch Intern Med. 2009 Oct 12;169(18):1677-83.)
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=773605

 日本でモメタゾンが含まれるものとしては、ナゾネックス(点鼻)、アズマネックス(吸入)、アルメタ(局所)などがあります。これら(特にナゾネックス)を使用したら不整脈が出てきた、持病の不整脈が悪化したという場合は関連性を検討する必要があるかもしれません。(Pubmedでググったけどヒットしなかった)

参考:
副作用評価におけるシグナル検出
(薬剤疫学 14(1) p27-36, 2009)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpe/14/1/14_1_27/_pdf
VigiBase サービス-VigiBaseサービスにようこそ
http://www.umc-products.com/DynPage.aspx?id=73300&mn1=1105&mn2=5810


2012年09月13日 22:49 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.10 No.20で、日本語訳を掲載しました。

    Mometasone:不整脈のシグナル
    http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/20120927.pdf#page=10

    WHOのシグナルの定義については次のように記されています。

    「シグナルとは,ある有害事象とある医薬品との因果関係(これまで知られていないか報告が不十分なもの)の可能性について報告された情報のことである。有害事象の重篤度や情報の質にもよるが,通常,シグナルの生成には複数の報告が必要である。シグナルとは,データと論拠を伴った仮説であり,性質上不明確であるばかりでなく予備的なものであることに留意することが重要である。」

    (最近、このサイトの記事に間違いがないかどうかチェックされているような気がする。助かるけど)