OTC外用鎮痛剤が化学熱傷を引き起こす?(米FDA)

米FDAは13日、メントール、サリチル酸メチル、カプサイシンなど日本でも広く配合されているOTC外用鎮痛薬(クリーム、ローション、軟膏、パッチ)について、まれであるとしながらも重度の化学熱傷(chemical burn)に至る事例が報告されているとして注意を呼びかけています。

Rare cases of serious burns with the use of over-the-counter topical muscle and joint pain relievers
(FDA Drug Safety Communication 2012.09.13)
http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm318858.htm

医薬品安全性情報Vol.10 No.21(2012/10/11)
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/21121011.pdf#page=2

Topical Pain Relievers May Cause Burns
(Consumer Updates 2012.09.13)
http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm318674.htm

FDAには、これまでに43例の報告があるそうで、入院が必要な重度のケースもあったそうです。

FDAの担当者によれば、II~III度の熱傷事例の多くは有効成分としてメントールのみを含むもの、3%のメントール、サリチル酸メチルを10%を含むものを使用した例で見られたそうです。(カプサイシンによる事例はわずか)

これを受け、FDAではこれらを使用している人に対して、次のような注意を呼びかけています。(下記の通りだと、貼った後に使い捨てカイロであたためるというのはリスクということになる)

  • Don’t apply these products onto damaged or irritated skin.
    傷口や炎症を受けた部位には、これらの製品を使用しないこと。
  • Don’t apply bandages to the area where you’ve applied a topical muscle and joint pain reliever.
    使用した部位には包帯を適用しないこと。
  • Don’t apply heat to the area in the form of heating pads, hot water bottles or lamps.
    使用した部位に、湯たんぽや電気毛布などで温めないこと。
    Doing so increases the risk of serious burns.
    そうすることで重度の熱傷のリスクを増すことにつながります。
  • Don’t allow these products to come in contact with eyes and mucous membranes (such as the skin inside your nose, mouth or genitals).
    これらの製品は目の周りやと粘膜(鼻、口、性器など)に接触しないようにすること。
  • It’s normal for these products to produce a warming or cooling sensation where you’ve applied them.
    使用した部位が温かく感じたり冷たく感じることは一般的である。
    But if you feel actual pain after applying them, look for signs of blistering or burning.
    しかし、これらを使用後にはっきりとした痛みを感じるならば、水ぶくれや熱を持つ兆候がないかどうか確認すること。
    If you see any of these signs, stop using the product and seek medical attention.
    もしこれらの症状のサインのいずれかが見られる場合は、製品の使用を止めて、治療を求めなさい。
  • If you have any concerns about using one of these products, talk to a medical professional first.
    現在該当する製品を使用中で心配のある人は、まず医療専門家に相談すること。
  • Report unexpected side effects from the use of OTC topical pain reliever to the FDA MedWatch program
    FDA MedWatchプログラムを通じて、副作用の報告をお願いします。

かくゆう私も、過去にサリチル酸系成分を含むOTC湿布薬によるかぶれというのを経験したことがあるのですが、今思うと、熱を持ってかなりひどいものだったので、FDAが指摘した化学熱傷(chemical burn)だったのかもしれません。

日本では、サリチル酸メチルやメントール、カプサイシンなどを含むOTC外用薬は相当数ありますが、医療用はMS冷シップなど少数に限られ、いずれもFDAが指摘した濃度を含むものはたぶんありません。(現在確認中)

しかし、いままで単に肌にあわない“かぶれ”が化学熱傷であるとするのであれば、きちんとした対応が必要となります。

私の事例のようなケースが潜在化している可能性があり、日本でも実態調査や注意喚起が必要かもしれません。

参考:
FDA warns of burns from muscle and joint pain busters
(Reuter 2012.09.13)
http://in.reuters.com/article/2012/09/13/fda-warning-painreliever-idINL1E8KDENV20120913
Muscle, joint pain creams may pose burn risk
(CBC.Ca 2012.09.13 AP配信)
http://www.cbc.ca/news/health/story/2012/09/13/burns-pain-reliever-creams.html

10月16日リンク追加


2012年09月14日 10:37 投稿

コメントが6つあります

  1.  どうも、詳しい情報にたどり着けいないのですが、米FDAの電子広報に示されていた古い論文は、メーカーの警告表示にもかかわらず、外用剤の上からケミカル懐炉での温熱療治を試み、皮膚や筋組織の損傷とサリチル酸メチルやメントールの過度の吸収による腎炎をこうむったものの報告のようです。
     問題は、警告もされているのに関わらず、不適切な使用を行う者が多々生じ、その結果、行政やメーカーが起こられているという図式です。
    通常の使用でトラブルになるというものではなさそうです。
     

  2. アポネット 小嶋

    日本語の記事が出ています。

    市販の外用鎮痛薬で重度熱傷,米FDAが安全性情報
    (MT Pro 2012.09.14 要会員登録)
    http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1209/1209039.html

  3. アポネット 小嶋

    私もそんなにないだろうと思っていましたが、カナダの有害事象データベース(→リンク)で、“methyl salicylate”で検索をかけたら、報告が結構ありました。(FDAはデータファイルなのでちょっと無理だった)

    昔は、誤用や過量使用による全身的影響が主でしたが、最近のでは皮膚症状(Application site burn)などの報告もありましたよ。

    論文もあたったのですが、唯一ドイツの有害事象データベースをまとめた下記報告で、有害事象の報告があったとの記載がありました。(サリチル酸グリコールなどとなってはいますが)

    Anaphylaxis and toxic epidermal necrolysis or Stevens–Johnson syndrome after nonmucosal topical drug application: fact or fiction?
    (Allergy. 2007 Aug;62(8):877-83.)
    http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1398-9995.2007.01398.x/full

  4.  ご教示いただいた論文も、損傷皮膚などでは、外用剤成分の漸新世の影響を無視できないし、それに関わるアナフィラキシーやSJS等があるとの指摘が主体のようです。
     大事なことは、OTC医薬品、かつ外用剤と言えども、不適切な使用では有害事象を引き起こすリスクが高まるので、適正使用に努めるべきであり、適正使用であったとしても、異常な事象に遭遇したならば、利用を停止し、薬剤師や医師の助言を仰ぐべし、ということではないでしょうか?
     懸念しているのは、見出しや不注意な引用で、『OTCの外用消炎鎮痛薬の使用で、重度の化学熱傷が、必ず引き起こされるから、直ちに市場から回収せよ』といった、魔女狩りが起こる事です。

  5. アポネット 小嶋

    おっしゃる通りです。

    どんなくすりでも、予想しない有害事象というのがまれにはあると思います。

    もしそういったときに一声かけられる、相談される薬剤師を目指したいものです。

    効果のある薬がちょっとしたことで市場から撤退させられることは、セルフメデフィケーションの推進にとっては不利益です。

    米国での報道も全体的に控えめなので、適切な使用をというのがFDAの言いたいところだと思うのですが、今回の注意喚起は具体的な事例や発症のメカニズムなどを示していないので、かえって疑心暗鬼になります。

  6. アポネット 小嶋

    FDAの発表を受け、ニュージランドでも副作用報告のチェックが行われたそうです。

    The Burning Issue with Pain Relief Creams
    (Prescriber Update 2012;33(4):32-33)
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/PUArticles/Dec2012PainRelief.htm
    ニュージーランドの副作用モニタリングセンターにはこれまで4例の報告があり、1例はサリチル酸メチルを含むもの(入院が必要)、残りはカプサイシンを含むものだったそうです。

    MEDSAFEでは、使用した後の手をよく洗う、熱源にさらされないなどの注意を呼びかけています。