スピリーバ レスピマットの安全性

 スピリーバ レスピマット(tiotropium Soft Mist Inhaler)の安全性については、ハンディヘラータイプよりも心臓血管リスクが高いのではないかという研究があることを以前あれこれこれで紹介していますが、台湾の研究チームがシスティマティックレビューを行っています。

Comparative safety of inhaled medications in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and mixed treatment comparison meta-analysis of randomised controlled trials
(Thorax published online 6 October 2012)
http://thorax.bmj.com/content/early/2012/10/05/thoraxjnl-2012-201926.abstract

 研究者らは心臓血管病による死亡リスクと全体の死亡リスクについて、42の研究52516人のデータを解析し、まだ各紙が取り上げていないので情報が限られ(アブストラクトしか見れないが、Nelmが少し詳しい)ますが、次のような結果が得られたそうです、

 tiotropium Soft Mist Inhaler 使用者の死亡リスクは、

  • placeboに対しては1.51倍(OR 1.51; 95% CI 1.06 to 2.19)
  • tiotropium HandiHalerに対しては1.65倍 (OR 1.65; 95% CI 1.13 to 2.43)
  • LABAに対しては1.63に対しては1.63倍 (OR 1.63; 95% CI 1.10 to 2.44)
  • LABA-ICSに対しては1.90倍 (OR 1.90; 95% CI 1.28 to 2.86)

 また、tiotropium Soft Mist Inhaler 使用者の心臓血管病による死亡リスクは、

  • placeboに対しては2.38倍(OR 2.38 ;95%CI 1.20 to 4.99)
  • tiotropium HandiHalerに対しては2.07倍(OR 2.07 ;95% CI 1.09 to 4.16)

となったそうです。

 一方で、LABA-ICSによる治療はプラセボと比べ、全体の死亡リスクが0.8倍、またICSだけでも0.77倍と低くなったそうです。

 研究者らは、Tiotropium Soft Mist Inhaler による治療は死亡率が高まるリスクがあるとして、注意して使われるべきとしています。

関連情報:論文・報告あれこれ 2012年9月論文・報告あれこれ 2011年6月

関連ブログ:
チオトロピウム吸入薬と死亡リスクとの関連性について
(六号通り診療所所長のブログ 2011.06.23)
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2011-06-23

参考:
Systematic review and meta-analysis questions safety of tiotropium RespimatR inhaler in COPD
(Nelm 2012.10.08)
http://www.nelm.nhs.uk/en/NeLM-Area/News/2012—October/08/Systematic-review-and-meta-analysis-questions-safety-of-tiotropium-Respimat-inhaler-in-COPD/


2012年10月09日 13:29 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    今日の時点でも、海外のニュースでググってもほとんど取り上げられていないので、ちょっと不安になっていましたが、国内では、詳しいブログ記事がいくつか出ています。(研究内容は是非こちらで確認を)

    【文献】またもスピリーバ・レスピマット®で死亡率増加報告(メタ解析)
    (EARLの医学ノート 2012.10.17)
    http://drmagician.exblog.jp/19054037/

    メタアナリシス:スピリーバ・レスピマットは総死亡・心血管系死亡リスクを有意に上昇
    (呼吸内科医 2012.10.17)
    http://pulmonary.exblog.jp/19053422/

    COPDにおける吸入薬剤の安全性
    (薬剤師の地域医療日誌 2012.10.13)
    http://blog.livedoor.jp/ebm_info/archives/18891911.html

     呼吸器がご専門の EARL 氏は、「今現在,臨床現場でスピリーバ・レスピマットを使用している医療機関は,本製剤を即使用中止とすることが望ましいと思われる」としています。(チオトロピウムにベネフィットがないというわけではな、デバイスが問題ということのようです)