ヘルスカナダは19日、メトトレキサートとオメプラゾールなどのPPIを併用すると、メトトレキサート（MTX）の血中濃度が増し、副作用のリスクが高まるとして、“Warnings and Precautions”の項で潜在的相互作用の可能性があるとした情報を加えると発表しています。
New Safety Information:
Interaction of Proton Pump Inhibitors (PPIs) with Methotrexate
（Health Canada 2012.10.19）
http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2012/2012_157-eng.php
Methotrexate：プロトンポンプ阻害薬との相互作用
（医薬品安全性情報Vol.10 No.24 2012.11.22）
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/24121122.pdf#page=15
ヘルスカナダでは、PPIとの併用がMTXの血中濃度の増加との関連性は認められないとしながらも、関連性を示す研究がいくつか発表されているとして、エビデンスの評価を継続しつつも、今回早めの注意喚起に至ったようです。
実はこの件は日本でも、今年5月の添付文書改訂で併用注意の欄で追記されているのですでにご存じかもしれませんが、変更になったのはPPI側だけで、現時点ではなぜか肝心のMTX側（メソトレキセート点滴静注液200mg、メソトレキセート錠2.5mgなど）はまだ変更は行われていません。
そこで、PubMEDで調べた（→“methotrexate proton pump inhibitor”で検索）ところ、次のような文献が出てきました
Co-administration of proton pump inhibitors delays elimination of plasma methotrexate in high-dose methotrexate therapy
（Br J Clin Pharmacol. 2009 Jan;67(1):44-9. Epub 2008 Nov 17.）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2668083/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2668083/pdf/bcp0067-0044.pdf
（日本の研究。オープンアクセス、上記の概要はおそらく下）
高用量メトトレキサート療法における血中メトトレキサート濃度遷延におよぼすプロトンポンプ阻害薬併用の影響
（第25 回 日本TDM 学会ポスター 2008.06.21-22）
http://jstdm.umin.jp/journal/pdf/2503S165.pdf#page=27
（国内では、全ての患者に認められるものではないとした）
Severe intoxication with methotrexate possibly associated with concomitant use of proton pump inhibitors.
（Anticancer Res. 2010 Mar;30(3):963-5.）（メーカー引用論文）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20393020
Delayed elimination of methotrexate associated with co-administration of proton pump inhibitors.
（Anticancer Res. 2010 Sep;30(9):3807-10.）（メーカー引用論文）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20944174
（PPIはMTXで治療中は投与されるべきではない）
Suspicion of drug-drug interaction between high-dose methotrexate and proton pump inhibitors: a case report – should the practice be changed?
（Chemotherapy. 2011;57(3):225-9. Epub 2011 May 18.）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21597286
Accumulating evidence for a drug-drug interaction between methotrexate and proton pump inhibitors.
（Oncologist. 2012;17(4):550-4. Epub 2012 Apr 3.）
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22477728
最新の上記のレビューを見ると、米FDAの有害事象報告システムには症例があるとのことで、PPIをH2ブロッカーに変更することでMTXの毒性がなかったなどの症例もあったそうです。
なお、米国では去年の11月に高用量のMTXについてはPPIとの相互作用についてのラベル変更が行われています。
Methotrexate Injection, USP（Hospira）（このページの下の方）
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2011/011719s117lbl.pdf#page=7
Letter（変更理由）
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/appletter/2011/011719s117ltr.pdf
“PPI治療を受けている患者に高投与量メトトレキサートを投与する際は注意すること”となっているので、やはり要注意の組み合せかもしれません。
関連情報：TOPICS
2011.08.24 PPIには黒枠警告が必要（Public Citizen）
参考：
Methotrexate and heartburn drugs alert
（CBC News 2012.10.19）
http://www.cbc.ca/news/health/story/2012/10/19/methotrexate-proton-pump-inhibitors-health-canada.html
（海外ではこういった情報も記事になる）
11月23日リンク追加
2012年10月20日 11:27 投稿
