ALTITUDE Trial の最終解析結果が公表

 今年6月の添付文書改訂で、糖尿病患者へのアリスキレン(商品名:ラジレス)とARBまたはACE阻害薬との併用が原則禁忌となっている(TOPICS 2012.06.05)ことはご存じかと思いますが、その根拠となったALTITUDE Trial の最終解析結果が3日、NEJM 誌のOnline 版に掲載されています。

Cardiorenal End Points in a Trial of Aliskiren for Type 2 Diabetes
NEJM Online First 3 Nov 2012)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1208799
(今のところオープンアクセス)

 中間解析結果は、すでに今年1月にヘルスカナダが明らかにしていますが、心血管事象や腎事象の発現リスクについて中間解析と最終解析を比較したところ、全体的(介入群・プラセボ群)にイベント数が多くなっている他、「心停止からの蘇生」については、ハザード比が1.64→2.40(しかも有意差ありに)に増えています。(微妙に表現の違いあり。脳卒中や心筋梗塞については中間解析は非致死性だけだったのが、最終解析では致死性のものも含んでいる)

  中間解析 最終解析
  HR 95% CI P Value HR 95% CI P Value
CV death
/Death from cardiovascular causes
(心血管死)
1.12 0.90-1.38 0.3110 1.08 0.98-1.20 0.12
Resuscitated sudden death
/Cardiac arrest with resuscitation
(心停止からの蘇生)
1.64 0.68-3.95 0.2737 2.40 1.05-5.48 0.04
Non-fatal MI
(非致死性の心筋梗塞)
1.03 0.77-1.39 0.8302      
Myocardial infarction (fatal or nonfatal)
(致死性・非致死性の心筋梗塞)
      1.04 0.83-1.31 0.72
Non-fatal stroke
(非致死性の脳卒中)
1.34 1.01-1.77 0.0439      
Stroke (fatal or nonfatal)
(致死性・非致死性の脳卒中)
      1.22 0.96-1.55 0.11
Unplanned hospitalization for heart failure
(心不全による予定外の入院)
0.98 0.78-1.23 0.8716 0.95 0.78-1.14 0.56
Onset of ESRD/renal death
(末期腎疾患への進行や腎疾患による死亡)
1.22 0.87-1.72 0.2518      
ESRD, death attributable to kidney failureor loss of kidney function       1.08 0.84-1.40 0.56
Doubling of baseline serum creatinine
(血清クレアチニンのベースライン値からの倍増)
0.90 0.71-1.12 0.3431 0.97 0.80-1.17 0.75
Death from any cause
(原因を問わない死亡)
1.08 0.92-1.27 0.3661 1.06 0.92-1.23 0.42

注:(最終解析)P values have not been adjusted for multiple comparisons.

参考:
RASILEZ (aliskiren) and RASILEZ HCT (aliskiren/hydrochlorothiazide) – Potential Risks of Cardiovascular and Renal Adverse Events in Patients with Type 2 Diabetes – For Health Professionals
(Health Canada 2012.01.18)
http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/medeff/advisories-avis/prof/_2012/rasilez_hpc-cps-eng.php

医薬品安全性情報Vol.10 No.03(2012/02/02)
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly10/03120202.pdf#page=12

 また、最終解析では、高カリウム血症(39.1% versus 29.9%)や血圧低下(12.1% versus 6.3%)などの事象も併用群で多いことも明らかになっています。

 研究者らは、「心臓血管や腎臓イベントにハイリスクな2型糖尿病患者における、レニンアンジオテンシスシテムをブロックする標準的な治療にラジレス(アリスキレン)を追加することは、解析結果から支持はできず、有害でさえもあるかもしれない」と結論付けています。

 さて、欧米では糖尿病患者へのアリスキレンとARB/ACEの併用は中間解析の結果を受け、すでに禁忌になっていますが、日本では、「血圧のコントールが著しく不良の患者を除く」との文言入り、原則禁忌という扱いになっています。

 改訂にあたって、PMDAでは「臨床試験(ALTITUDE)の中間解析結果に関し、専門委員の意見も踏まえた調査の結果、改訂することが適切と判断した」とのことでしたが、今回の結果を受け、どのように対応するのでしょうか?

 メーカーさんにさっそく聞いてみようかな。

関連情報:TOPICS
 2012.06.05 糖尿病患者へのラジレスとARB/ACEの併用、日本は原則禁忌
 2012.04.21 米国も糖尿病患者へのアリスキレンとARB/ACEの併用は禁忌に
 2012.02.18 糖尿病患者へのラジレスとARB/ACEの併用は禁忌(欧州医薬品庁)
 2012.01.24 ラジレス情報(カナダ)

関連記事:
Aliskiren Combo Fails in High-Risk Diabetics
(Medpage TODAY 2012.11.03)
http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ASN/35719
アリスキレンALTITUDE試験中止の原因
(浜六郎の臨床副作用ノート 集中 2012.04.16)
http://medical-confidential.com/confidential/2012/04/altitude.html


2012年11月04日 21:12 投稿

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