論文・報告あれこれ 2012年11月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
11.29 研究報告の報告状況 (2012.4~7) 11月19日に開催された、平成24年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会での資料。引用文献が示されているといいんだけど。
11.29 外国における新たな措置の報告状況(2012.4~7) 11月19日に開催された、平成24年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会での資料。掲載サイトなどが示されているといいんだけど。
11.29 9th WSMI Asia-Pacific Regional Conference & 1st APSMI General Assembly Meeting October 19-20th 2012 のスライド

第1回アジア太平洋セルフメディケーション協会(APSMI)総会の各セッションのスライド。韓国の業界団体のウェブサイトに圧縮ファイルで入っているので、ダウンロードして開いたところ、OTCをめぐるアジア各国の市場動向や政策などが紹介されていて非常に興味深い。また、欧米のOTCやセルフケアの取組なども紹介されている他、日本のくすり教育についての報告も行われている。
11.29 糖尿病治療のエッセンス(2012年版)
(日本医師会)
糖尿病治療ガイドを参考に糖尿病治療のポイントをとりまとめて作成したもの。HbA1cの国際標準化への対応や最新の薬剤情報が盛り込まれている。3度目の改訂版。
11.29 パネルディスカッション
「暮らしの場における薬局薬剤師の役割」
一般用医薬品セルフメディケーション振興財団が10月に行った「2012年度 一般用医薬品セルフメディケーションシンポジウム」の概要
11.24 Probiotics for the Prevention of Clostridium difficile–Associated Diarrhea: A Systematic Review and Meta-analysis
Ann Intern Med. Published Online 13 Nov 2012)
抗生剤が投与されている成人・子どものCOAD(Clostridium difficile 関連下痢症)の予防にプロバイオティクスが有効・安全かどうかを調べたシスティマティック・レビュー&メタアナリシス。COADの発症率を低下させ、予防効果があることが示唆された。
11.24 Comparative risk for angioedema associated with the use of drugs that target the Renin-Angiotensin-aldosterone system
Arch Intern Med. 2012 Nov 12;172(20):1582-9)
血管浮腫の副作用が、ACE阻害薬、ARB、レニン直接阻害薬(アリスキレン)に差異があるかどうかを調べた研究。β遮断薬の使用と比べ、調整ハザード比はACE阻害薬で3.04、ARBで1.16、アリスキレンで2.85だった。
11.24 Feverish illness in children (update): guideline consultation
(NICE 2012.11.23)

5歳未満の発熱に対する評価についてのGLの更新版の草案
11.24 50 Years: The Kefauver-Harris Amendments
(FDA 2012.11.20)

サリドマイド事件をきっかけに制定されたThe Kefauver-Harris Amendments(キーファーヴァー-ハリス改正法)から50周年にあたり作られた特設ページ。米国でサリドマイドによる被害者を最少限でとどめたケルシー女史の功績がビデオとともに紹介されている。
11.24 Drug interactions-principles, examples and clinical consequences.
Dtsch Arztebl Int. 2012 Aug;109(33-34):546-56.)
(オープンアクセス)
薬物相互作用についてまとめた総説
11.24 Does mild cognitive impairment affect the occurrence of radiographic knee osteoarthritis? A 3-year
BMJ Open published Online 19 Nov 2012)
(オープンアクセス)
軽度の認知機能の低下が変形性膝関節症の発症や悪化との関連を調べた、Population-based cohort study。和歌山県の山間部と海岸部の住民1690人を3年間追跡調査したもの。
11.24 Sport injuries and illnesses during the first Winter Youth Olympic Games 2012 in Innsbruck, Austria
Br J Sports Med. 2012 Dec;46(15):1030-7)
今年オーストリアのインスブルックで行われた冬季ユースオリンピック期間中のけがや病気の傾向をまとめたもの。
11.24 Medical services at the first Winter Youth Olympic Games 2012 in Innsbruck/Austria
Br J Sports Med. 2012 Dec;46(15):1048-54.)
今年オーストリアのインスブルックで行われた冬季ユースオリンピック期間中のイリョウサービースをまとめたもの。
11.24 ダビガトランの投与によりAPTTが過剰延長した症例と出血性合併症を呈した症例の特徴
(脳卒中 34(6) p453-439,2012)
ダビガトランを新規に投与開始した44例について投与前後の血液凝固マーカーの推移や出血性合併症の有無などを調査したもの。ダビガトラン投与開始後早期にAPTTを含む凝固能検査を行うことが推奨される。(投与開始初期にAPTTが有意に延長)
11.24 片頭痛に関連するめまいの診断と治療
(日本耳鼻咽喉科学会会報 115(9) p872-873,2012)
片頭痛に関連するめまいは,反復するめまい発作を特徴としており、メニエール病と鑑別すべき疾患として近年注目されている。予防治療として、ロメリジン、アミトリプチン、バルプロ酸、プロプラノロール、マグネシウムが用いられる
11.24 中学校で発生した集団有機リン中毒
(日本農村医学会雑誌 61(2) p109-112,2012)
アリの駆除のため、中学校で有機リン系殺虫剤の原液を散布することによって発生した集団有機リン中毒から教訓をまとめたもの。
11.24 ワクチンで予防できる病気 (VPD) の現状
—耳鼻科領域におけるワクチンを中心に—

(日本耳鼻咽喉科学会会報 115(9) p823-829,2012)
ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンなどについて解説
11.17 日本の薬学の国際化-医師の調剤からの脱却
(日本薬剤学会)
日本薬剤学会名誉会長の永井恒司氏がFIP100周年年会で講演したスライド。
11.17 Calls managed by the BC Drug and Poison Information Centre following the 2011 nuclear reactor
incident at Fukushima, Japan

CPJ Nov 2012;145(6):256-258.)
カナダブリティシュコロンビア州の BC Drug and Poison Information Centre に寄せられた福島原発事故 関連の報告を紹介したもの。ルゴール液を飲んでしまった例もあった。
11.17 Availability of tobacco and alcohol products in Los Angeles community pharmacies
J Community Health. 2012 Feb;37(1):113-8.)
ロサンゼルスのランダムで選ばれた250の薬局でのたばこや酒類の販売状況を調べたもの。たばこは32.8%、酒類は26.0%で販売されていたが、古くからあるチェーン薬局や商店ではたぼこで100%、独立系の薬局では10.8%、また酒類では87.5%、5.4%と差異があった。(日本はどうなんだろう)
11.17 Availability and range of tobacco products for sale in Massachusetts pharmacies.
Tob Control. published Online 2012 Nov 8)

新しい tobacco control policies の下で、マサチューセッツ州の薬局におけるたばこの販売状況を調べたもの。ランダムで選んだ70薬局を調査したところ、69%が販売免許をもっていて、このうちの90%が販売していた。紙たばこ(cigarettes)だけではなく嗅ぎたばこなども多くの薬局で販売されていた。一方たばこを扱っている薬局ではほとんどの禁煙補助薬も売っていた。
11.17 Tobacco Control State Highlights 2010
(CDC 2012.04.22)
上記の論文をチェックする過程で出てきた米疾病対策センターの報告書。各州ごとに年齢・性別・人種ごとの喫煙率、職場や公共の場などでの禁煙を記した州法の有無、Medicaid でカバーできる禁煙補助薬やカウンセリングの有無、家庭における間接喫煙防止の遵守率などをまとめたもの。(日本では、あまり紹介されていない。都道府県別にこういったデータを示して競争させてもいいかも)
11.17 Antibiotics to prevent complications following tooth extractions
(Cochrane Library Published Online 2012 Nov 14)
抜歯後の合併症予防に抗生剤を使用することが有用かどうかを調べたコクランのレビュー。第3臼歯抜歯で71%減だった他、発熱も66%減となったが、耐性菌の発現に留意が必要とした。
11.17 Email for the provision of information on disease prevention and health promotion
Cochrane Library Pulishe Online 2012 Nov 2012)
電子メールによる健康情報の提供が有用かどうかを調べたコクランのレビュー。質の良いエビデンスはなかった。
11.17 Medication deserts: survey of neighborhood disparities in availability of prescription medications.
Int J Health Geogr. Published Online 2012 Nov 9)
(オープンアクセス)
居住地区によって、処方せん医薬品の取扱い品目数や価格が異なるかを調べた米国の研究。ニューヨークの薬局で調査が行われ、貧困層が多くする地域の薬局ではよく使われている品目の品切れ率が高かった。販売価格の調査も行っており、店による価格差の大きさには驚かされる。(日本でも、医療機関との立地との関係で備蓄医薬品数の差がどれくらい異なるかをきちんと調査を行うといい)
11.17 Cancer Risk of Anti-TNF-a at Recommended Doses in Adult Rheumatoid Arthritis: A Meta-Analysis with Intention to Treat and per Protocol Analyses
Plos One Published Online 2012 Nov 14)
(オープンアクセス)
成人慢性関節リウマチ患者におけるTNF-α阻害薬の発癌リスクを調べたメタアナリシス。インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、golimumab、certolizumabの5剤についてレビュー。リスク増傾向が見られたものの統計学的有意差はなかった。また5剤間のリスクの差異は見られなかった。
11.07 Risk of adverse events following oseltamivir treatment in influenza outpatients, Vaccine Safety Datalink Project, 2007–2010
Pharmacoepidemiol Drug Saf. Published Online 2012 Nov 5.)
オセルタミビルの精神神経系の有害事象の発症リスクについて調べたコホート研究。1週間以内の精神神経系の症状の絶対的リスクは、治療群で0.126%、治療しなかった群で0.105%でオッズ比は1.21(95%CI 0.74-1.97)だった。研究者らはオセルタミビルによる精神神経系他有害事象が増加するというエビデンスはないとした。(フルテキストで見たい)
11.07 Ticlopidine inhibits both O-demethylation and renal clearance of tramadol, increasing the exposure to it, but itraconazole has no marked effect on the ticlopidine-tramadol interaction.
Eur J Clin Pharmacol. Published Online 2012 Oct 26.)
チクロピジンとトラマドールとの相互作用について調べた研究。12人の健常者を対象にランダム化比較クロスオーバー試験を行ったところ、トラマドールのAUCが2倍、Cmaxが1.4倍となった。
11.07 Contribution of prolonged-release melatonin and anti-benzodiazepine campaigns to the reduction of benzodiazepine and z-drugs consumption in nine European countries.
Eur J Clin Pharmacol. Published Online 2012 Nov 1. )
(オープンアクセス)
ベンゾジアセピン系やゾルビデムやゾピクロンなどのベンゾジアゼピン受容体作動薬は転倒や認知障害、離脱症や依存の問題から欧州では処方と消費の面から長期使用を控えるキャーンペーンが行われているが、その取り組みの影響と代替薬としての徐放タイプのメラトニンの使用状況を調べた研究。欧州9か国で比較。メラトニンが償還の対象となっている国では、切り替えが進んでいることが示された。
11.07 Review article: herbal and dietary supplement hepatotoxicity.
(Aliment Pharmacol Ther. Published Online 2012 Nov 5)
(オープンアクセス)
ハーブや健康補助食品の肝毒性についてまとめた総説。麻黄や小柴胡湯などにを取り上げているほか。医薬品との相互作用についても触れている。
11.07 Levels of satisfaction with current chronic constipation treatment options in Europe – an internet survey
(Aliment Pharmacol Ther. Published Online 2012 Nov 5)
(オープンアクセス)
オーストリア、ドイツ、フランス、アイルランド、イタリア、スペイン、スイス、英国、ベルギー、オランダの欧州10か国で2009年に行われた便秘に関するインターネット調査の結果。国により、使われる便秘薬の種類が異なっているのが興味深い。アンケートに答えた28%が現在の治療法に不満を持ち、他の治療法に興味を持っていた。
11.07 Soft drink intake in relation to incident ischemic heart disease, stroke, and stroke
subtypes in Japanese men and women:
the Japan Public Health Centre-based study cohort I.

(Am J Clin Nutr. Published Online 2012.Oct.17)

清涼飲料摂取量(soft drink)の摂取と心臓血管病(CVD)のリスクとの関係を調べた、日本人を対象とした前向き研究。男性では有意差がなかったが、女性ではほぼ毎日使用している人ではほとんどまたは飲まない人と比べ、総脳卒中で1.21倍、虚血性脳卒中で1.83倍となり、リスク増が認められた。
11.03

FIP Centennial Congress 2012
(PJ Online)
たぶんオープンアクセスが続くと思う。

FIPの100周年会議の様子をまとめたPJ Online の特集ページ。個人的にはあの薬局のマクドナルド化(the development of pharmacy McDonaldisation)について紹介したEconomics of pharmacy の記事(→リンク)が最も目に留まった。欧州でも価格競争などで独立店は苦境に立たされているという。
11.03 MINUTES OF THE 150th
MEDICINES ADVERSE REACTIONS COMMITTEE MEETING
(2012.09.13 開催)

ニュージーランドMEDSAFEの医薬品副作用委員会の議事録。シタロプラム/エスシタロプラムが用量依存的にQT延長やTdPのリスクが高まるとした報告を受け、すべてのSSRIについてQT延長リスクをレビューして、製品情報などの変更など23の勧告を行った。(12月のPrescriber Update Articles でおそらく記事が出るのではないかと思う)
11.03 Additional Use of an Aldosterone Antagonist in Patients with Mild-to-Moderate Chronic Heart Failure: a systematic review and meta-analysis.
Br J Clin Pharmacol.Published Online 2012 Oct 22.)
軽度~中等度の慢性心不全患者への抗アルドステロン薬(スピロノラクトン、エプレレノン、とカンレノン)の有効性について調べたシステマティック・レビュー&メタアナリシス。抗アルドステロン薬の追加使用は、心臓が原因の死亡や再入院を減少させる可能性があるとした。
11.03 Melatonin Prolonged Release : In the Treatment of Insomnia in Patients Aged ≥55 years
(Drugs Aging. Published Online 2012 Oct 9.)
中高年の不眠症に長時間作用型のメラトニンの有用性を検討した研究
 11.03 The genus Cordyceps: a chemical and pharmacological review
J Pharmacy and Pharmacology Pulished Online 23 Oct 2012)
(今のところオープンアクセス)
中薬の冬虫夏草についての薬理学的・化学的レビュー

2012年11月29日 10:54 投稿

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