論文・報告あれこれ 2012年12月

 今月のちょっと気になった論文や報告などです。誤りがあったらご指摘下さい。月ごとにまとめて随時追加する予定です。 (J-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
12.23 Clinical pharmacology in sleep medicine.
ISRNPharmacol. 2012;2012:914168.
(オープンアクセス)
ベンゾジアゼピン系薬剤などの眠剤と、睡眠に影響を与えることが知られている中枢神経刺激薬やパーキンソン病治療薬などについて、相互作用や副作用などの特徴についてまとめたもの。
12.23 他者による身体所有」としてのドーピング問題
―旧東ドイツにおけるドーピング問題の事例から―
(体育・スポーツ哲学研究 31(2) P95-107 2009)
ちょっと古いですが、旧東ドイツにおいてどのようなドーピング問題が存在したのか、その歴史的事実について整理したもの。また、この問題に内在する倫理的問題性についても指摘している。
12.23  「自由意志によるドーピング問題」をめぐる倫理間対話
―なぜドーピングをしてはいけないのか―
(体育・スポーツ哲学研究 33(1) P27-40,2011)
競技スポーツ世界におけるドーピング問題について、応用倫理学的考察対象して、その特徴にあわせて分類してから考察したもの。
12.23 医薬品副作用症例報告からみる薬物性肝障害の最近の動向
(国立医薬品食品衛生研究所報告 130,P66-70 2012)
PMDAで公開されている「副作用が疑われる症例報告ラインリスト」において、薬物性肝障害の最近(2005年~2011年度(中途))の動向をまとめたもの。
12.23 小児の急性気管支炎におけるベータ2刺激薬の処方実態
(薬剤疫学 17(1) P1-12, 2012)
レセプト調査を行ったところ、3~5歳の全対象者のうち、β刺激薬が年1回以上処方された割合は49.9%であった。これは諸外国よりも多い割合であり、特に非ぜんそく患者における処方が多いことが示唆された
12.23  
Propranolol for hemangiomas.
Pediatr Surg Int. published online 18 Dec 2012)
(オープンアクセス。結構写真がすごい)

子どもの血管腫にプロプラノールが有効だったという症例報告。1回3mg/kg/日を1日3回36人に投与したところ、30日以内の改善が見られ、7か月で退縮した。ググったらこの適応外の使用は結構前から行われいて、エビデンスもあるようです。(知らなかった)
12.23 Prolonged Drug-Drug Interaction between Terbinafine and Perphenazine.
Psychiatry Investig. 2012 Dec;9(4):422-4. )
(オープンアクセス)
ペルフェナジンを使用中の高齢女性にテルビナフィンを投与したところ、1週間後に錐体外路症状(アカシジア)を呈したという症例。テルビナフィンがCYP2D6の代謝を阻害し、CYP2D6によって代謝されるペルフェナジンの血中濃度増加が原因ではないかとした。またテルビナフィンの半減期が長いため、テルフィナフィン中止後も症状が3週間継続したという。
12.13 Comparison of gastroduodenal ulcer incidence in healthy Japanese subjects taking celecoxib or loxoprofen evaluated by endoscopy: a placebo-controlled, double-blind 2-week study
Aliment Pharmacol Ther Published 10 DEC 2012)
(今のところオープンアクセス)
海外ではマイナーなロキソプロフェンナトリウムとセレコキシブの上部消化管への影響を調べた、日本人を対象としたRCT。健康な中高年ボランティア190人を無作為に3群に分けて、ロキソプロフェン、セレコキシブ、プラセボを飲んでもらい、2週間後に内視鏡で上部消化管潰瘍の発生率を調べるというもの。潰瘍発生率はロキソプロフェンで27.6%だったのに対し、セレキコシブでは1.4%、プラセボで2.7%となり、ロキソニンよりセレコキシブの方が優れていたとした。(ファイザー・アステラスが資金援助していた点は留意)
12.13 Wearing face masks in public during the influenza season may reflect other positive hygiene practices in Japan
BMC Public Health Published 10 Dec 2012)
(オープンアクセス)
インフルエンザ予防対策としてマスクをすることは勧告されないが、日本などのアジア各国ではしばしば行われている。そこで研究らはマスクをしている人の間ではどのような感染対策や保健行動につながっているかを調べたWEB調査で調べた。マスクをしている人では、手洗いやうがい、予防接種を受けることなどの予防対策が有意に高いことがわかった。
12.13 Avoiding Serotonin Syndrome: The Nature of the Interaction Between Tramadol and Selective Serotonin Reuptake Inhibitors
Ann Pharmacother.2012 Dec 4.)
SSRIとトラマドールとの相互作用について調べたレビュー。トラマドールは主に肝臓でCYP2D6により代謝されるため、SSRIのようなCYP2D6阻害薬と併用するとトラマドールの血中濃度が上昇し、セロトニン症候群の大きなリスクとなる。遺伝的にCYP2D6 が少ない人でも同様のリスクがある。(日本の添付文書では併用注意)
12.13 “I just wanted to tell you that loperamide WILL WORK”: A web-based study of extra-medical use of loperamide.
Drug Alcohol Depend. Published 2012 Nov 29) 

止瀉薬のロペラミドがオピオイド乱用者の間で乱用されている(禁断症状への対応)可能性があるとした報告。研究者らはWeb-forum などから事例を入手し解析を行った。乱用目的の使用として一般的な量は70-100mg/日だという。(ロペラミドはフェンタニルやペチジンと同じグループのため、代用できるとして乱用されているらしい。)
12.13 Erythropoietin doping in cycling: Lack of evidence for efficacy and a negative risk–benefit
Br J Clin Pharmacol Pubulished  6 Dec 2012)
(今のところオープンアクセス)

自転車競技で懸念されているエリスロポエチンによるドーピングについて、競技のパフォーマンスを本当に高めるかどうかを調べたレビュー。研究者らは科学的根拠はなく、これは医療過誤(medical malpractice)だとした。
12.06 Long-term effects of continuing adjuvant tamoxifen to 10 years versus stopping at 5 years
(Lancet Publishe Online 05 Dec 2012)

エストロゲン受容体(ER)陽性と診断された乳がん患者へのタモキシフェンの投与期間が再発率や死亡率に影響があるかどうか調べたRCT。5年間よりも10年間継続服用することで、再発率や死亡率が減少した。
12.06 Longitudinal Impact of Substance Use and Depressive Symptoms on Bone Accrual Among Girls Aged 11–19
J Adolescent HealthPulished Online 04 Dec 2012)

成人では、抑うつや不安、喫煙と骨密度低下との関連が指摘されているが、ティーンの女子でもこれが当てはまるかを調べた研究。アルコールの摂取では関連性が認められなかったが、しばしばたばこをすう子や抑うつ症状がある子では関連性が示唆された。
12.06 Role of tobacco smoking in hangover symptoms among university students.
J Stud Alcohol Drugs. 2013 Jan;74(1):41-9.)
(オープンアクセス)

深酒による二日酔いが喫煙と関連するかどうかを調べた研究。大学生113人を対象に行われた
12.06  Off–label prescribing patterns of antiemetics in children: a multicenter study in Italy
Eur J Pediatr Pulished Online 4 Dec 2012)
(オープンアクセス)
イタリアにおける子どもの制吐剤の使用状況と評価についてまとめたもの。イタリアでは、日本では小児への承認があるドンペリドンやメトクロプラミドは、Off-label になるという。(エビデンスも限られる)
12.06  薬剤師専門教育
(誌上シンポジウム)
(薬学雑誌 132(12) p1323-1343)
「スポーツ薬理学」「卒後教育」「集中治療専門「感染制御専門」の観点で、事例を紹介しながら専門教育の在り方を示したもの

2012年12月23日 00:40 投稿

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