医薬品ネット販売上告審、国敗訴で薬事法改正で対応か(Update)

 TOPICS 2012.12.21 でお伝えしましたが11日午後、医薬品のネット販売に関する上告審の判決が言い渡されました。

平成24(行ヒ)279 医薬品ネット販売の権利確認等請求事件
平成25年01月11日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判
(判例検索システム 2013.01.11)}
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130111150859.pdf

 最高裁第2小法廷は判決で、

新薬事法成立の前後を通じてインターネットを通じた郵便等販売に対する需要は現実に相当程度存在していた上,郵便等販売を広範に制限することに反対する意見は一般の消費者のみならず専門家・有識者等の間にも少なからず見られ,また,政府部内においてすら,一般用医薬品の販売又は授与の方法として安全面で郵便等販売が対面販売より劣るとの知見は確立されておらず,薬剤師が配置されていない事実に直接起因する一般用医薬品の副作用等による事故も報告されていないとの認識を前提に,消費者の利便性の見地からも,一般用医薬品の販売又は授与の方法を店舗における対面によるものに限定すべき理由には乏しいとの趣旨の見解が根強く存在していたものといえる。

などと指摘、

「新たな規制は職業活動の自由を相当制約するものであり、法律に明確な規定がなければならない」tぽして、「1類、2類の一律禁止は、改正薬事法の範囲を逸脱した違法な規制で無効」との判断を示し、国側の上告を退けました。

 すなわち、「ネット販売を一律に禁じた厚生労働省令は違法」とした二審判決を支持し、「ケンコーコム」、「ウェルネット」2社のネット販売権を認めた東京高裁の判決(TOPICS 2012.04.26)が確定することになりました。

 今回の判決を受け、ケンコーコムは「不合理且つ不公平な医薬品ネット販売規制の省令について、当社らの主張の正当性がほぼ認められたものであり、当然の結果であると認識しています」とした上で、医薬品の販売を速やかに再開すると発表しています。

訴訟の判決に関するお知らせ
(ケンコーコム 2013.01.11)
http://blog.kenko.com/company_ir/files/hanketsu_130111.pdf

 またヤフーも、Yahoo!ショッピングの医薬品販売ストアにおける第1類医薬品を含めた一般用医薬品の取扱い拡大に向けた準備を開始すると発表しています。

医薬品のネット販売について
(ヤフー株式会社 2013.01.11)
http://pr.yahoo.co.jp/release/2013/0111a.html

 一方、日本オンラインドラッグ協会も、ネット販売の再開を見据えて、販売許可を有する薬局及び店舗がインターネット販売を行う場合に遵守するべきと考えるガイドラインを発表しています。

日本オンラインドラッグ協会、『一般用医薬品のインターネット販売に関するガイドライン(安全性確保のための方策)』発表
(日本オンラインドラッグ協会 2013.01.11)
http://www.online-drug.jp/
http://www.online-drug.jp/files/20130111final.pdf

 これにより国の対応が注目されるところですが、産経新聞などは議員立法で販売規制を盛り込んだ改正案を与党と調節して提出し、早期成立を図るのではないかと伝えています。

政府、市販薬ネット販売規制へ薬事法改正 最高裁の省令違法判決見通しに対応
(産経新聞 2013.01.11)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130111/plc13011108160008-n1.htm

法改正、国会で議論へ=医薬品ネット販売規制
(時事通信 2013.01.11)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201301/2013011100712

 薬事法改正で対応するのが一番すっきりする形ですが、ネット販売業者の対応や今後開催される国会での議論が注目されます。

(各方面の反応や関連記事は随時追加します)

関連情報:TOPICS
  2013.01.01 新年雑感-1 
  2012.12.21 医薬品ネット販売上告審、国敗訴の公算
  2012.04.29 医薬品ネット販売を認める判決に思う
  2012.04.26 東京高裁、医薬品ネット販売を認める判決
  2010.03.30 医薬品ネット販売規制は適法(東京地裁判決)

参考:
日テレNEWS24 1月11日
http://news24.jp/articles/2013/01/11/07221056.html
朝日新聞1月11日
http://apital.asahi.com/article/news/2013011100016.html
中日新聞1月11日
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2013011190134111.html
日本経済新聞1月11日

1月11日 18:26更新


2013年01月11日 14:08 投稿

コメントが5つあります

  1. 解禁へ前進!おめでとうございます。

  2. 昨日の最高裁判決を国民がどのように受け止めているか。
    新聞など、いろんな情報媒体を通じて、結果報道がされているが。
    国民の理解度はそれほど高くないと思われる。

    つまり、OTC薬のネット販売が解禁になって、かつてのように一類も含めて気軽にネット購入できるんだと・・。
    そんな認識程度ではないだろうか。

    確かに、新聞などを読むと、ネット販売の安全性と利便性が全面的に認められて、OTC薬販売が解禁になったとは書いていない。

    補足的に厚労省が出した省令でネット販売を縛ることは違法であると書いている。
    その元となる改正薬事法にネット販売規制の条文が明記されていないことが、その根拠になっていることも。

    そこまで理解して国民は読んでいるだろうか。失礼な言い方だが、甚だ、疑問に思っている。
    そして、OTC薬のネット販売の大々的な規制緩和の方向に、国が動き出すのではないかと書いている。

    国民に正確な情報提供するうえで、問題である。

    そもそも、関係者以外の国民はそれほど深く理解を示すわけではなく、冒頭の認識程度で終わってしまうのが当たり前のことである。

    また、今回の最高裁の判決は民事による原告二社の勝訴であって、それ以外のネット業者は正確に言えば、当てはまらないのではないか。

    ただ、この判決を受けて、改正薬事法を見直すネット販売規制の空白期間に入るようだ。
    その空白期間を利用して、また、原告二社に便乗して、悪質ネット業者はOTC薬を一類から大量に販売すると思われる。

    今までの規制があった時でもルールを無視してお構いなしに、一類からネット販売していた業者があったぐらいだから。

    その傾向にさらに拍車をかけることになるだろう。ここで懸念されるのはOTC薬のネット販売における安全性の問題だ・・・。

    国がするべきことは最高裁の判決を踏まえた上でのネット販売における改正薬事法の見直し作業(議員立法の早期確立)に早急に入ることだ・・・。

    一刻の空白期間も許されない・・・・。

    そして、この最高裁判決を受けての国の改正薬事法の見直しで、OTC薬販売における薬剤師の職域はどう変わっていくのだろうか。

  3. >>自遊人様
    安全のためというのであれば、一般医薬品のネット販売そのものを規制するのではなく、ネット販売を許認可制度みたいにして、その許認可の条件をうんと厳格
    にするという方法もあると思うのですよ。まあ確かに闇サイトみたいなところまで
    パトロール出来るかと言えば疑問ですが。ただそんなところを利用するのは、
    自己責任でしょう。本来ネット販売も障害者のためとか、とかまっとうなメリットも
    あるわけですから、必要以上に営業活動を制限すべきではないと私は思います。
    それこそ、薬剤師会とJACDSの既得権保護のための法令ですかと言いたくなり
    ます。厚労省のやるべきことは、ネット販売規制を法令化することだけじゃない
    はずだと強く思います。

  4. >安全のためというのであれば、一般医薬品のネット販売そのものを規制するのでは
    >なく、ネット販売を許認可制度みたいにして、その許認可の条件をうんと厳格るとい
    >う方法もあると思うのですよ。まあ確かに闇サイトみたいなところまでパトロール出来
    >るかと言えば疑問ですが。ただそんなところを利用するのは、自己責任でしょう。

    現行の改正薬事法にはOTC薬の販売許可は薬局、店舗販売業で、ネット販売や通信販売そのものの許認可はありません。

    つまり、現行の薬事法では実店舗において薬剤師、登録販売者がOTC薬の販売に資格専門家の立場で、消費者(生活者)に対して社会的責任を持って販売しなければならないという概念しかありませんでした。

    それが、ネット販売などになると、現行薬事法の範囲外(想定外)に置かれています。

    早急に、薬事法の見直しを行い、ネット販売業等の許認可や販売ルールなどを条文に盛り込まなければなりません。今のネット販売では実店舗を有するところが、薬剤師や登録販売者の責任所在のはっきりしているところでしているのであれば、まだ、マシなのですが、何の許認可も持たない悪質ネット業者が野放図にしてしまう危険性を孕んでいます。また、それが簡単にできる環境にネット販売はあります。それは早急な見直しによる薬事法という新たな法律(ネット上においても薬剤師や登録販売者が医薬品たるOTC薬の安全性と有効性に携わる法律)をもってしっかりと取り締まなければなりません。

    >本来ネット販売も障害者のためとか、とかまっとうなメリットもあるわけです
    >から、必要以上に営業活動を制限すべきではないと私は思います。
    >それこそ、薬剤師会とJACDSの既得権保護のための法令ですかと言い
    >たくなります。厚労省のやるべきことは、ネット販売規制を法令化するこ
    >とだけじゃないはずだと強く思います。

    見直しの改正薬事法の特例措置で考えて行かなければならないことで、現行の改正薬事法の省令でも、その点は特例措置となっているようです。

    薬剤師会やJACDSの既得権のために言っているわけではありません。

    高度情報化時代になって生まれてきたこのネット販売に対して規制するということではなく、医薬品たるOTC薬の販売のあるべき姿を薬事法という法律を踏まえた上で、どうあるべきかを大所高所から考える問題だと認識しています。

  5. アポネット 小嶋

    田村厚労相は15日の閣議後の記者会見で、「ルールがない状況でネット販売が行われる。できるだけ早くルール作りをしたい。スピード感を持って議論していただくようお願いしたい」と危機感を強調、検討会についても、「できれば来月くらいには動くようにして、数か月の間に決めないといけない」と述べたそうです。

    医療介護CBニュース 1月15日
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38980.html

    読売新聞 1月15日
     http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130115-OYT1T00636.htm

    一方、検討会での検討事項についてNHKは、「ネット販売を認める薬の範囲、副作用の説明方法や相談を受ける体制の在り方など、ネット販売での安全性をどのように確保するか」などが議論されると報じています。(この前の議論の蒸し返しにならなければいいけど。リスク区分の考え方も再検討しなければいけないんじゃない?)

    NHKニュース1月12日
     http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130112/k10014759601000.html