報道でご存じかと思いますが、田村憲久厚労相は1日の閣議後の記者会見で、一般用医薬品のインターネット販売の規制見直しについての検討会を14日に発足させることを明らかにしています。
薬ネット販売:厚労相が検討会発足へ
(毎日新聞 2013.02.01)
http://mainichi.jp/select/news/20130201k0000e020206000c.html
一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会の開催について
(厚労省 2013.02.01)
http://www.mhlw.go.jp/stf/2r9852000002uijt.html
一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会構成員名簿
http://www.mhlw.go.jp/stf/2r9852000002uijt-att/2r9852000002uilj.pdf
記者会見で田村厚労相は「結論は早くと思っているが、推進と慎重派に入ってもらうので共通認識を持つのに、どれだけ時間がかかるか分からない」と述べたのことですが、私も数か月で結論がでるようなものではないと思っています。
また、問題はルールが決まっても、これが薬事法や省令にどう反映されるかです。
薬事法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO145.html
薬事法施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36F03601000001.html
問題の上記施行規則(省令)にあたってはパブコメを行っているのですが、今改めて振り返ると、店舗での対面販売にこだわっていたことがうかがえます。(TOPICS 2009.02.06)
「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関する意見の募集結果について
(結果の公示日2009.02.06)(→募集結果(PDF))
例えば、上記ファイルの38ページには次のような考え方が示されています。
(意見)
事業所に対する販売のように営業担当者が納品時に顧客のところで情報提供を行う場合は、店舗販売の構造設備(情報提供をする場所、製品の陳列場所等)の条件を除外していただきたい。
現在、事業所に業務用医薬品及び福利厚生用医薬品を卸売一般販売業の販売先変更許可で販売しています。改正法においてこのような営業取引を継続するためには店舗販売業の許可が新規に必要になります。事業所に対する販売の場合、営業担当者が販売先を訪問し、注文を受けて製品を納入するという販売形式をとっており、顧客が店舗を訪れることはありませんので、情報提供を店舗で行うということは考えられません。
(回答)
店舗販売業については、店舗以外の場所において、一般用医薬品の情報提供を行うことを想定しておりません。
この見解で、第3類以外の医薬品を薬剤師が直接自宅に出向いて配達し情報提供をすることや、学校薬剤師が担当の学校に配達することもできなくなってしまいました。(処方せんによる販売(調剤)がOKなのに、一般用医薬品はダメというのはどう考えてもおかしい)
一方で、施行規則には改めて見ると、ちょっと気になる項目もあります。
第百五十九条の十四 薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、法第三十六条の五 の規定により、第一類医薬品については、医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、自ら又はその管理及び指導の下で登録販売者若しくは一般従事者をして、当該薬局若しくは店舗又は当該区域における医薬品を配置する場所(医薬品を配置する居宅その他の場所をいう。以下この条及び第百五十九条の十八において準用する次条から第百五十九条の十七までにおいて同じ。)(以下「当該薬局等」という。)において、対面で販売させ、又は授与させなければならない。
一見、無資格者でもそばに薬剤師がいれば、第一類でも販売できるようにも読みとれます。
これについてもパブコメでは意見が出て、厚労省が次のような見解を示しています。(33ページ)
(意見)
「薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下」というのは、非常に曖昧な定義であり、すべての一般用医薬品を無資格者が販売する危険性がある。第一類医薬品は、直接、薬剤師が、また、第二類医薬品、第三類医薬品は直接、薬剤師あるいは登録販売者が販売又は授与すべきである。
(回答)
改正法は、薬剤師又は登録販売者が対面で情報提供を行うことにより、医薬品の適切な選択と適正な使用を図るものであることから、一般用医薬品の販売等については薬剤師又は登録販売者に、自ら又はその管理及び指導の下で一般従事者をして、対面で行わせることとしたところです。
このため、薬剤師又は登録販売者が不在の状態で医薬品を販売等することは、省令により厳格に規制されることとなります。
なお、改正法においては、こうした適正な販売等を行うための体制を確保し、保健衛生上支障がないように、薬局開設者及び医薬品販売業者並びに店舗管理者に対して、管理・監督責任を求めることとしております。
このように、省令(施行規則)というのは、現状においてもあいまいで、いくらでも都合のいいように解釈ができるようになってしまっているという一面があります。
今後、仮にネット販売のルールが決まったとしても、実際に薬事法や省令にどう盛り込まれるのかまで、きちんと注視していく必要があります。(個人的にはこういった部分もこの際きちんとして欲しい)
関連情報:TOPICS
2013.01.23 一般用医薬品のインターネット販売に関する意見書(薬害オン会議)
2013.01.19 医薬品ネット販売に関する国内外の情報
2013.01.14 医薬品ネット販売上告審判決に思う
2009.02.06 改正省令の公布とパブコメ結果が公表
2013年02月02日 00:19 投稿
医師の調剤も「自ら調剤」とまではっきり書かれているのに、薬剤師がいない施設では「同じ建物内にいたら管理監督し自ら行う事になる」って分けのわからない解釈を示して事務員や看護師が調剤(投薬)してます。
個人的にはこれもいい加減きちんとして欲しいですし、こんな屁理屈が通るならOTC1類だって販売できるはずです。
たかが一般用医薬品の通信販売の是非を決めるのに、前哨戦に四年、施行後五年で違法判決確定、再改定には何年かかるのか?。
外国相手のTPP交渉では、法律文の解釈等と言う日本国独特の習慣は通用する訳も無く、思いの外スンナリ行くような気がします。
販売を調べてみると下記のようになっていました。
《販売(はんばい)は、商品を売る(所有権を移転する)こと。》
これを踏まえてOTC薬の店舗販売とはどういうものであるべきか。
そもそも、OTC薬とは医薬品たるもので、生命関連商材として重要な位置づけにある特殊商材と考えます。
そのため、薬事法並びに施行規則で、OTC薬の販売の在り方は厳しく規制されています。
それを念頭に置いて下記の意見と回答について考察を深めてみました。
(意見)
(A)「薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下」というのは、非常に曖昧な定義であり、すべての一般用医薬品を無資格者が販売する危険性がある。第一類医薬品は、直接、薬剤師が、また、第二類医薬品、第三類医薬品は直接、薬剤師あるいは登録販売者が販売又は授与すべきである。
(回答)
改正法は、薬剤師又は登録販売者が対面で情報提供を行うことにより、医薬品の適切な選択と適正な使用を図るものであることから、(B)一般用医薬品の販売等については薬剤師又は登録販売者に、自ら又はその管理及び指導の下で一般従事者をして、対面で行わせることとしたところです。
このため、薬剤師又は登録販売者が不在の状態で医薬品を販売等することは、省令により厳格に規制されることとなります。
なお、改正法においては、こうした適正な販売等を行うための体制を確保し、保健衛生上支障がないように、薬局開設者及び医薬品販売業者並びに店舗管理者に対して、管理・監督責任を求めることとしております。
上述の意見(A)に対する回答(B)で問題視されているのは、OTC薬の販売行為に一般従事者(無資格者)が携わることがどうなのかという点です。
その前提に、資格者の管理及び指導の下でとなっていますが、この文章表現が非常に曖昧で、この点を現場の実態に合わせて具体的な文章表現に変えるべきではないか。
では、どのようにすればいいのかということですが。
販売とは売り手から買い手にある商品の所有権が移転することになります。
その販売行為の中身を考えてみると・・・。
商品説明→商品授受→商品精算(金銭の授受)
これをOTC薬の販売行為に当てはめると・・・・。
①OTC薬の情報提供→②OTC薬授受→③OTC薬精算(金銭の授受)となります。
回答側による厚労省の見解は。
資格専門家の管理及び指導の下であれば、一般従事者(無資格者)が②以降の行為に携わってもいいのではないかということです。
でも、意見側の真意とするところは医薬品たるOTC薬の特殊商材は資格専門家が①から③まで一貫性を持って販売行為に携わる必要があるということです。
なぜ、その点を意見側で問題視しているかと言うと、資格専門家の管理及び指導の下でという前提条件を踏まえても、②以降を一般従事者(無資格者)に販売行為の一部を認めるとなれば、OTC薬の本質によるところが無資格者の手によって損なわれてしまう可能性がある。その点を意見側は問題視しているのだと考えられます。
すなわち、意見側の(利便性<安全性・有効性)と回答側の(利便性>安全性・有効性)という対立構図です。
小嶋先生が書かれたある論文の中で、OTC薬の買い手は完全な自立心が養われていない。そこには資格専門家がしっかりと関与するべきだと提言されています。
この提言からも意見側の利便性<安全性・有効性に重きを置くべきではないかというように理解されます。
薬事法にはOTC薬の店舗販売の許認可面積に下限条件があっても上限条件がありません。
例えば、許認可面積を極端に大きく取った店舗販売の現場ではOTC薬の説明不要と称する買い手がセルフ販売などを通して、直接、②以降に及ぶことが懸念されます。
しかも、上述の現場で資格専門家の視野が届かないとすれば、尚更のことです。
おそらく、その点を小嶋先生は問題視されているのではないでしょうか。
もう一つ、この現場で懸念されることは買い手がOTC薬の説明を不要としないまでも、利便性を優先するあまり、セルフ販売によって②以降に及んでしまう可能性があることです。これも合わせて、小嶋先生は言われたいところではないでしょうか。
厚労省は上述の現場の実態に合わせた深いところまでの回答に言及していない・・・・。
ルール作りを早急にするのは当然として、
厚労省・日薬は改正薬事法施行後のこの4年間(特に高裁での敗訴判決がでてからの数ヶ月間)いったいなにをしてたんでしょうか。
継続使用者・離島居住者の例外規定も今年の5月で切れる状態で、再延長すればいいやとぐらいにしか考えてなかったんでしょうかねえ?
宅配版で記事をチェックしました
薬ネット通販100社超す 事実上解禁から1カ月
(日本経済新聞 2013.02.09)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC0800D_Y3A200C1MM8000/
日経によれば、8日時点で少なくとも120社が風邪載など第2類の大衆薬をネット
上で販しているとのこと。
多くは小規模の会社で、ヤフーや楽天など仮想商店街の中にサイトを構えているとのこと。
一方、取扱いサイトの約6割は副作用リスクやアレルギー症状の説明、大量購入への警告などを明示していないとのこと。
マサさんが指摘する通り、検討会の早い時点で、厚労省・日薬は方針を示さないと、ますます混乱しそうですね。
電子版?と思われる別の原稿をある方に教えて頂いたんですが、微妙に表現が違っています。
(どちらを正式採用したのでしょうか? 以前にもこういうことがありましたが、検討会での議論に影響があるとして原稿を差し替えたのでしょうか? ちなみに私が手にした宅配版は12版です)
電子版?:
販売サイトの中には副作用リスクやアレルギー症状の説明、大量購入への警告などを明示しないものも目立つ。
宅配版(12版):
取り扱いサイトの約6割は副作用リスクやアレルギー症状の説明、大量購入への警告などを明示していない
ツイートで紹介していますが、東洋経済オンラインで、ケンコーコム社長の後藤玄利氏のインタビュー記事が掲載されています。
生活者にとって必要な薬が一般用医薬品が、生活者の視点に立ってこれまで供給されていたという疑問を投げかけています。
医薬品ネット販売、「解禁」の先
ケンコーコム後藤社長に聞く
(東洋経済オンライン 2013.02.08)
http://toyokeizai.net/articles/-/12841
最後の方にある部分が一番目に留まりました。
かつて医薬品流通の中心だった「パパママ薬局」は、20年くらい前には“かかりつけ薬局”として非常によく機能していました。ただ、取扱品目が少ない、販売価格が高いなど欠点も多い。
そこに10年前くらいから、ドラッグストアが台頭してきます。価格はぐっと安くなって医薬品へのアクセスは容易になりましたが、地域に根ざした“かかりつけ”のよさは薄らいでしまっています。
効率化という売る側の都合で、調剤と一般用医薬品の販売を分離させ、専門家を介さない一般用医薬品の販売スタイルを社会に認知・定着してしまったことのツケは本当に大きいです。
また、同じく後半の方にある
もちろん要件を増やしてどんどんハードルを上げていくことはできますが、同じハードルを対面販売の店舗もクリアしなければなりません。そうすると店頭も含め、医薬品販売そのものができるのか怪しくなってくる。そこまでのルールを、国として事業者に要求する意味はあるのでしょうか。
という部分ですが、なぜ自分たちだけが厳しい条件を求められるのかという思いもあるのでしょうが、リアル店舗での現在の販売状況の見直しというのも無視できないということには個人的には同意します。