ドンペリドンの安全性についてレビューを開始(欧州医薬品庁)

  EMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)が3月4-7日に行われ、新たにドンペリドン(ナウゼリン他)について、安全性のレビューを開始する、referral procedure(付託手続き)を行うと発表しています。

Meeting highlights from the Pharmacovigilance Risk Assessment Committee (PRAC) 4-7 March 2013(EMA News 2013.03.08)
http://www.emea.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2013/03/news_detail_001732.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

Review of domperidone started(Domperidone-containing medicines)
http://www.emea.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/medicines/human/referrals/Domperidone-containing_medicines/human_referral_prac_000021.jsp&mid=WC0b01ac05805c516f

(2013.04.16追記)(日本語訳概要)
医薬品安全性情報 Vol.11 No.08(2013/04/11)
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly11/08130411.pdf#page=4

 今回、ドンペリドンのレビューが開始されるのは、ベルギーの規制機関 FAMHP(→リンク)でのQT延長や基礎的心疾患を有する患者への使用制限が必要とした見解に基づいて、EMAとしてもレビューが必要となったためです。

Domperidone : herziening van de baten-risicoverhouding
(Fagg 2013.03.08)
http://www.fagg-afmps.be/nl/news/news_domperidone_2013_03.jsp

 ドンペリドンについては、PRACの前身の専門調査会(PhVWA)がレビュー(→TOPICS 2011.10.28)を行い、製品情報に一部の心疾患患者への慎重投与の注意喚起が行われていますが、今後はEMAとして、疫学研究や相互作用を含む文献のレビュー、有害事象の報告の検討を行い、リスクベネフィットの評価を行う予定です。

PRAC List of questions
To be addressed by the marketing authorisation holder(s) for domperidone containing medicinal products(EMA 2013.03.07)
http://www.emea.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Referrals_document/
Domperidone_31/Procedure_started/WC500139771.pdf

 ドンペリドンは日本でも使用経験が長く、広く使われている薬でありますが、今後更なる注意喚起や使用制限が行われるかどうか注目されるところです。(ドンペリドンは米国では正式承認されていません)

 なお、2012年7月のPRACの事業開始以来、referral procedure(付託手続き)が行われたのはこれまでに17成分に達しているそうです。

referral procedure(EMA)
http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/regulation/general/general_content_000150.jsp

関連情報:TOPICS
 2012.12.03 ドンペリドン使用時には心室性不整脈などへの留意が必要(豪州)
 2012.05.22 ドンペリドンと重篤な心室性不整脈・心臓病死(英国)
 2012.04.15 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.10 No.8 
 2011.10.28 ドンペリドンとQT延長・不整脈 


2013年03月09日 10:47 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    2014年2月19日、Prescrire 誌は仏の健康保険システムのデータでのレビュー結果を発表し、心臓のリズム障害と突然死のリスクが高まるとして、ドンペリドンの使用の中止と市場からの回収を求めました。

    Nausea and vomiting: stop the use of domperidone once and for all
    (Prescrire in English 2014.02.19)
    http://english.prescrire.org/en/81/168/49205/0/NewsDetails.aspx

    Domperidone: an indication of how many sudden deaths in France could be prevented by avoiding this low-efficacy drug
    (Prescrire Analysis Published Online, 19 Feb 2014)
    http://english.prescrire.org/Docu/DownloadDocu/PDFs/domperidone_an_indication_of_how_many_sudden_deaths.pdf

    Prescrire 誌ではドンペリドンの安全性について、これまでもさまざまなレビュー結果を発表しています。

    Domperidone should not be used: 9 articles from Prescrire’s ongoing analysis
    (Prescrire in English )
    http://english.prescrire.org/en/81/168/49206/0/NewsDetails.aspx

  2. アポネット 小嶋

    EMA(欧州医薬品庁)のファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)は、レビュー結果を発表し、使用制限を勧告しています。

    PRAC recommends restricting use of domperidone
    (EMA 2014.03.07)
    http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2014/03/news_detail_002039.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

    PRACでは、吐き気や嘔吐の症状の緩和のために使用され続けることを勧告する一方で、1週間を超えて使用すべきではないとしています。

    また、bloating(膨満感)や胸焼けに対して使われるべきでないとします。

    さらに、中等度以上の肝障害がある人や心臓や心臓リズムに関わる electrical activity (電気活動)が正常でない人には処方すべきでないとしています。

    用量は1回10mgを1日3回までとし、20mg錠と10mgと60mgの坐薬(30mg坐薬の1日2回までの使用は可能)の回収も勧告しています。

    ドンペリドンはパーキンソン病の治療薬などの吐き気予防などで、長期に使われるケースも少なからずいると思います。

    日本では果たして、どのような対応やアナウンスが行われるでしょうか?