非定型抗精神病薬と遅発性ジスキネジア(NZ)

 長期の抗精神病薬の使用による遅発性ジスキネジア(Tardive Dyskinesia)はよく知られている副作用ですが、ニュージーランド(NZ)当局 MEDSAFE が季刊で出す、Prescriber Update で、これまでの副作用報告の概要等が紹介されています。

Prescriber Update(MEDSAFE)
http://www.medsafe.govt.nz/profs/PUarticles.asp

Adverse Reaction Reminder: Tardive Dyskinesia
(Prescriber Update 2013;34(1):4-5)
http://www.medsafe.govt.nz/profs/PUArticles/Mar2013TardiveDyskinesia.htm

 MEDSAFE では、発症のメカニズムははっきりしていないとしながらも、黒質線条体路のドパミン受容体の長期のブロックの結果、ドパミン受容体の感受性が過剰となり、ドパミン受容体でのバランスに狂いを生じることが原因であるとしています。

 メカニズムについては、2009年5月に公表された「重篤副作用疾患別対応マニュアル」でも同様の記載があります。

ジスキネジア
(重篤副作用疾患別対応マニュアル)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1c21.pdf

 ニュージーランドの副作用モニタリングセンター(CARM:the Centre for Adverse Reactions Monitoring)には2000年1月から2012年12月までのステロイドの使用と関連が疑われる17の事例の報告があり、うち8例がリスペリドン、また非定型抗精神病薬関連の事例が13例あったそうです。(定型の方が非定型の方より発症率が高いとされているが、非定型の場合でも可能性は否定できない)

 Medsafe では下記情報を引用して、抗精病薬を長期に服用している人の15~30%が遅発性ジスキネジアを引き起こす可能性があるとしています。

Tardive Dyskinesia(Medscape)
http://emedicine.medscape.com/article/1151826-overview#showall

 日本ではどのような現状かと思いググったところ、抗精神病薬の服用が原因で遅発性ジスキネジアとなった質問サイトやブログが散見され、悩まれている患者さんが少なくないことが伺われます。

 下記サイトの情報によれば、非定型薬による遅発性ジスキネジアの発生率は約3%であるとし、危険因子(高齢、長期の投与期間、高投与量の抗精神病薬、急性錐体外路性副作用、抗パーキンソン薬の使用等)を考慮すると、高投与量のリスペリドンにリスクが高く、適応症例や投与量を吟味して用いる必要があるとしています。(こういう情報がオープンされていることはありがたい)

非定型抗精神病薬による悪性症候群、遅発性の錐体外路症状の現状について
(沖縄県医師会 医師会報 2012.3)
http://www.okinawa.med.or.jp/activities/kaiho/kaiho_data/2012/201203/091.html

 リスパダールは、高齢者や子どもにも使用されることがあり、非定型抗精神病薬による遅発性ジスキネジアのリスクについては念頭に置いておく必要がありそうです。

 なお、メトクロプラミド(プリペラン他)による遅発性ジスキネジアについても、非可逆性であり留意する必要があり、こちらもReminderです。(カナダや米国では日本より強い注意喚起がある)

関連情報:TOPICS
 2008.11.21 子どもに非定型抗精神病薬を処方することへの懸念(米FDA)
 2009.02.28 メトクロプラミドによる遅発性ジスキネジアは非可逆的(米FDA)
 2011.08.23 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.9 No.17


2013年03月12日 13:12 投稿

コメントが2つあります

  1. 主治医の指導に基づく中止で、先月の2月15日にジプレキサの「離脱」によるジスキネジアを発症いたしました。(現在41歳、2005年より服用)(症状は舌突出)
    「離脱」ということでそれほど心配はいらないでしょう、とのことでしたが、改善の兆候が見られません。
    前回の診察で、治療方針を「遅発性ジスキネジア」に切り替えると説明を受けました。
    ただ、これといった標準的治療はないらしく、「難治」ということで納得せざるを得ない状況になりました。
    一例として参考にしていただけたらと思います。

  2. アポネット 小嶋

    ブログを拝見させて頂きました。

    ToMAブログ
    Da Zone – ある双極性感情障害患者の部屋
    http://www.toma.jp/blog/tadasan/

    私のところでは精神神経科関連の処方せんを調剤することが少ないので、この記事を書いていても正直なところ実感がわかなかったので、こういうものなのかということが一部ではありますがわかりました。(離脱性ジスキネジアという言葉も初めて知りました)

    ありがとうございます。

    頻度は少なくても(といってもこの数字は決して低くはないですね)、こういった副作用の潜在的なリスクをストレートに伝えることについては、こういった薬剤の領域に限らず、医師の治療方針に影響を及ばさないよう、私たちはどのように、どこまで伝えてよいものか悩むことが少なくありません。

    患者さんのとらえ方や、処方医と患者さんが、副作用の潜在的なリスクも含めてどの程度まで話し合われているかによりますが、副作用についての情報提供はどのように(詳細な薬の説明書がいいのか? もっとも添付文書などはだれでも入手できますしね)、誰がどのタイミングで、どこまで伝えていくかは私たちの間でも日々模索が続いています。

    また、お気づきの点がございましたら、ご投稿下さい。