運転禁止の記載を徹底し、注意喚起の説明を徹底すべき(総務省)

 総務省は22日、医薬品等の承認審査の実施状況、治験実施体制の整備状況、後発医薬品の普及施策の実施状況、医薬品等の副作用等報告の実施状況等を調査した行政評価書を公表し、関係機関に改善を求めています。

医薬品等の普及・安全に関する行政評価・監視
<調査結果に基づく勧告>
(総務省 2013.03.22)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/000071649.html

要旨 http://www.soumu.go.jp/main_content/000213385.pdf
勧告 http://www.soumu.go.jp/main_content/000213386.pdf
全文 http://www.soumu.go.jp/main_content/000213398.pdf

 今回の行政評価は、「医薬品等の供給の迅速化の推進」「後発医薬品の普及の促進」「医薬品等の安全対策の推進」「製造販売後の医薬品等製造所への実地調査の的確な実施」の4項目について行われています。

 このうち注目されるのは、3番目の「医薬品等の安全性対策の推進」のうち「適切な副作用等報告の徹底」で、 各紙は副作用報告を怠っている病院があるとした部分を取り上げ、医薬品の副作用が疑われる事例の報告を医療機関に徹底させるよう厚生労働省に勧告していることを伝えています。

適切な副作用等報告の徹底
http://www.soumu.go.jp/main_content/000213395.pdf

  • 総務省では23 医療機関における安全性情報報告の実施状況及びPMDAにおける医薬品の添付文書の見直しに係る分析・評価の実施状況について調査、収集した副作用等の情報を厚生労
    働大臣に報告していない機関が5機関みられた。
  • 調査した23医療機関のうち20 機関で、医薬品安全性情報等管理体制加算の届出がなされていたが、このうち2機関においては、医師、薬剤師、看護師等が把握した副作用情報等が、医薬品情報管理室へ報告されていない場合があり、当該加算の要件となっている副作用情報等の一元管理等が適切に実施されていないと考えられる状況がみられた。
  • PMDAに対する意識障害等及び事故関連の副作用報告について、意識障害等の副作用報告が多かった上位50 成分のうち、販売中止となったものや過量投与等による意識障害等を除いた46 成分中21 成分で計110 件の医薬品服用による自動車事故が報告されているが、46成分中22成分では自動車運転等の禁止等が記載されておらず、このうちの4成分で計8件の自動車事故が報告されている状況がみられている。
  • PMDAではこれら4成分の自動車事故については、明確に因果関係があるとはいえないため、
    添付文書に自動車運転等の禁止等の記載は不要としているが、明らかに因果関係が認められない場合は別として、医薬品の服用との因果関係が明確でない場合であっても、自動車運転等による事故を未然に防ぐため、添付文書に意識障害等の副作用が記載されているものについては、意識障害等の発現状況に応じた注意喚起は必要であると考えられる
  • さらに、前述の46 成分のうち1成分において、使用上の注意に自動車運転等の禁止等を記載した添付文書に改訂されたものの、改訂後も10 件の自動車事故が発生しており、うち1件の発生例の場合について、PMDAでは、医師又は薬剤師から患者に対し、医薬品の服用に際し自動車運転等の禁止等の説明がなされていないと考えられる(具体的な成分名を示してもいいのに。チャンピックスかなあ、それともリリカ?)

 総務省ではこの調査結果を受け、次のような措置を講ずるよう勧告を行っています。

  • 医療機関に対し、厚生労働大臣への安全性情報報告が励行されるよう当該報告制度の趣旨の周知徹底を図るとともに、引き続き、医薬品等製造販売業者が行う情報収集活動への協力を促すこと。
  • 地方厚生局に対し、病棟薬剤業務実施加算の対象となる副作用の判断基準を示した上で、適時調査の際には同加算の届出を行った医療機関における一元管理等の加算要件の適合状況を確認し、適合しない場合は当該医療機関への指導を徹底させること。
  • 意識障害等の副作用報告がある医薬品の全ての添付文書を点検し、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載のみで、自動車運転等の禁止等の記載がないものに対して、自動車運転等による事故を未然に防ぐため、当該医薬品の服用と自動車事故との因果関係が明確でない場合であっても、自動車運転等の禁止等の記載を検討し、記載が必要なものについては速やかに各添付文書の改訂を指示すること。
    また、添付文書の使用上の注意に自動車運転等の禁止等の記載がある医薬品を処方又は調剤する際は、医師又は薬剤師からの患者に対する注意喚起の説明を徹底させること。

一方、後発医薬品の普及の促進については、次のような措置を講ずるよう勧告を行っています。

後発医薬品の普及促進
http://www.soumu.go.jp/main_content/000213394.pdf

  • 医療機関に対し、後発医薬品への変更に差し支えがあると判断した場合を除いては、処方せんの「変更不可」欄にチェックしないこととし、その旨を周知すること。
  • 医療機関に対し、患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならないとについて、一層の周知徹底を図ること。
    また、医師と患者が後発医薬品の使用に対する理解が進むような更なる施策を検討すること。
  • 都道府県による後発医薬品の普及促進支援に資するため、市町村別の後発医薬品数量シェアを把握し、公表するとともに、都道府県に周知すること。
  • 在庫管理の負担の一因とみられる後発医薬品の規格揃えについて、必要な医療が確保されることを考慮しつつ、関係団体等の意見を踏まえ、その見直しを検討すること。

 厚労省は今回の勧告を受け、半年後を目安にどのような改善措置を取ったか総務省に報告する必要があります。(個別指導で情報提供を行っているかどうチェックされそう)

 なお総務省では、2001年にも同様の調査結果を公表しています。

医薬品に関する行政評価・監視結果に基づく勧告
-安全対策を中心として-
(総務省2001.06)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/010608_2.htm

関連情報:TOPICS
 2012.07.11 リリカの添付文書が変更
 2012.04.13 意識消失のリスクがある薬で交通事故を起こしたら責任は誰?
 2011.10.20 PMDAからの医薬品適正使用のお願い「チャンピックス錠」
 2009.06.10 医薬品が車の運転に与える影響
 2008.05.22 バレニクリン、パイロットは使用禁止(米国)

関連記事:
薬の副作用告を怠る病院も 総務省が厚労省に改善勧告
(47NEWS 共同通信 2013.03.22)
http://www.47news.jp/CN/201303/CN2013032201001237.html
総務省、厚労省に新薬の承認審査期間短縮を勧告
(産経新聞 2013.03.22)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130322/plc13032210510010-n1.htm
日本経済新聞 2013.03.22
  http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG22014_S3A320C1CR0000/


2013年03月22日 15:21 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    日病薬のサイトにもアップされていますが、厚生労働省医薬食品局総務課長・厚生労働省医薬食品局安全対策課長名で、今回の勧告を受けた通知が出ています。

    医薬品服用中の自動車運転等の禁止等に関する患者への説明について
    (平成25年5月29日 薬食総発0529第2号・薬食安発0529第2号)
    http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T130605I0040.pdf

    とっても抽象的です。