おととしから去年前半にかけて本サイトでも紹介した茶のしずく石鹸などの小麦加水分解物含有石鹸による健康被害の問題(TOPICS 2011.05.21 2011.07.15 2012.04.21)ですが、22日開催の薬食審の医薬品等安全対策部会で、健康被害の詳しい実態が報告されています。
平成24年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 資料
(2013.03.22 開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002y3lg.html
資料5-1 小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品の使用者に発生した全身性アレルギーに係る報告について(化粧品に含まれた加水分解コムギによる経皮感作)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002y3lg-att/2r9852000002yc7d.pdf
上記資料によれば今年の1月末までに医療機関からの報告では239例(うち重篤例54例)と1年前の報告(→リンク)よりほとんど増えていませんが、製造販売業者からの報告は最近の増加数は少なくなっているものの、2779例(うち重篤例278例)に達していて、健康被害の広がりをうかがわせます。
一方、「茶のしずく石鹸」以外の小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品の使用者に発生したアレルギーに係る報告も散見されていることも気がかりです。
今回の問題を受け、日本アレルギー学会では「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」を設置し、
- 加水分解蛋白含有化粧品の障害実態の把握
- 茶のしずく石鹸の障害実態の把握
- グルパール19Sの感作抗原性の分析と交叉反応性の検討
などを行い、去年公表された中間報告が日本アレルギー学会のWEBサイト(http://www.jsaweb.jp/)に掲載されています。
化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会
2012年5月28日中間報告
http://www.fa.kyorin.co.jp/jsa/jsa_0528_01.pdf
また、下記サイトで定期的に症例の疫学調査の中間報告を公表しています。
茶のしずく石鹸等による小麦アレルギー情報サイト
http://jsall-web.sharepoint.com/
昨年9月30日までに入手できた705症例の分析によれば
- 使用部位で最も多かったのは顏(71%)で、1日の平均使用回数は1.8回
- 洗顔中もしくは洗顔後の使用部位の皮膚症状があったのは489人(69%)で、目の腫れがこのうちの半数以上を占めた
- 小麦摂取後に何らかの症状があったのは686人(97%)で、アナフィラキシーショックがあったと答えた人が178人、呼吸困難・嘔吐・下痢が190人(27%)に達した
この他にプレゼンで明らかになったこととしては、
- 石鹸の使用を中止することにより、特異IgE抗体価の減少がみられる、石鹸の使用中止後、小麦の摂取が再開できる例も報告されている
- グルパール19S以外の加水分解コムギ末における健康被害が疑われた症例が30例あった
- 化粧品に含まれるたんぱく質(小麦タンパク以外)が感作源となった 食物依存性即時型アレルギーにおける健康被害が疑われたの症例が23例あった
なお、今回の医薬品等安全対策部会でのプレゼンは、 2013年2月20日時点の特別委員会の集計結果が報告されていますが、下記サイトには3月20日現在の集計結果が掲載されています。(数が少し増えている)
グルパール19Sによるコムギアレルギー症例の疫学調査
2013年3月中間報告(2013年3月26日)
http://jsall-web.sharepoint.com/Pages/3gatsu2013.aspx
上記によれば、特別委員会の診断基準を満たした確実例が1830例で、ほとんどが女性(95.8%)だったそうです。 年齢は1歳(男児)から93歳(女性)で、平均45.8歳で、多くは20代から60代の女性だったそうです。
関連情報:TOPICS
2012.04.21 茶のしずく石鹸、健康被害で全国で一斉提訴
2011.11.19 小麦加水分解物を含有する製品によるアレルギー報告
2011.07.15 小麦加水分解物含有石鹸による健康被害広がる
2011.05.21 小麦加水分解物と小麦依存性運動誘発アナフィラキシー
2013年03月26日 23:34 投稿