26日、厚労省が重大な副作用として添付文書への追記を指示をしたものです。
使用上の注意改訂情報(平成25年3月26日指示分)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/kaitei20130326.html
ヒドロクロロチアジド含有製剤の「使用上の注意」の改訂について(報告書)
(PMDA 2013.03.26)
http://www.info.pmda.go.jp/kaitei/file/20130326frepno4.pdf
因果関係が否定できない国内症例はないものの、公表文献における報告状況に鑑み、専門委員の意見も踏まえた調査の結果、「重大な副作用」の項に「急性近視、閉塞隅角緑内障」を追記するというものなのですが、調べたところ、構造式が関連するようです。
フルテキストは見れないのですが、古くは1995年以前から症例報告があります。
Bilateral acute angle-closure glaucoma associated with drug sensitivity to hydrochlorothiazide.
(Arch Ophthalmol. 1995 Oct;113(10):1231-2.)
http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=641347
下記論文(アブストラクト)を見ると、スルホンアミドの構造が毛様体と脈絡膜の細胞外組織の膨張により、ぶどう膜に特有の反応をもたらす? というメカニズムで起こると推定していて、同様の構造を持つ、アセタゾラミド、コトリモキサゾール(ST合剤=スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤=バクタ)やトピラマートでも同様の留意が必要だそうです。(トピラマートについては、文献報告が多いこともあり、日本でも重大な副作用となっているが、バクタには記載なし)
Drug-induced acute angle closure glaucoma.
(Curr Opin Ophthalmol. 2007 Mar;18(2):129-33.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17301614
Bilateral angle closure glaucoma induced by sulphonamide-derived medications.
(Clin Experiment Ophthalmol. 2007 Jan-Feb;35(1):55-8.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17300572
Review of sulfonamide-induced acute myopia and acute bilateral angle-closure glaucoma.
(Compr Ophthalmol Update. 2007 Sep-Oct;8(5):271-6.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18201514
Acute bilateral angle closure glaucoma induced by methazolamide
(Clin Ophthalmol. 2013; 7: 279–282.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3573826/
Acetazolamide-induced cilio-choroidal effusion after cataract surgery: unusual posterior involvement
(Drug Des Devel Ther. 2013; 7: 33–36.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3556858/
添付文書の改訂に至った成分についてのPMDAの報告書を見ると、多くの薬で、「改訂の理由及び調査の結果」について、「専門委員の意見も踏まえた調査の結果、改訂することが適切と判断した。」との記載が目立つのですが、せめてレビューの対象とした文献くらい例示することはできないのでしょうか? そうすれれば、もう少し理解が深まると思うんですけどね。
4月3日 コメント欄に関連論文等を追記
2013年03月27日 02:00 投稿
関連記事です。
ヒドロクロロチアジドの副作用に急性近視,閉塞隅角緑内障が追加
(MT Pro 2013.03.27)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1303/1303074.html
米国ではすでに警告欄で注意喚起ですか。(見落としていました。症例がないと、日本は対応が遅れるの?)
Hydrochlorothiazide: Acute Myopia and Secondary Angle-Closure Glaucoma Label Change
(FDA Safety Information 2011.04.12 Update)
http://www.fda.gov/Safety/MedWatch/SafetyInformation/ucm250460.htm
HYDROCHLOROTHIAZIDE Label(2011.08.17 Update)
http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2011/040735s004,040770s003lbl.pdf
日本眼科学会が関連情報を発出しています。(当然ですね)
ヒドロクロロチアジド含有製剤による
急性近視、閉塞隅角緑内障について
(日本眼科学会 2013.04.02)
http://www.nichigan.or.jp/news/m_240.jsp
ヒドロクロロチアジド含有製剤を服用中の患者さんが、眼痛、頭痛、悪心、嘔吐、充血、視力低下などを訴え、受診された際には、ヒドロクロロチアジドによる急性近視及び閉塞隅角緑内障の可能性も考慮し、ヒドロクロロチアジド含有製剤の投与継続可否を視野に入れた適切な処置を行っていただきますようお願いいたします。
東和薬品の添付文書改訂のお知らせに、関連文献など詳しい説明がありますね。(どうしてPMDAは公表の際にこういうことを示さないんだろう)
ニュートライド錠の「使用上の注意」改訂のお知らせ
(東和薬品 単剤はこれだけ)
http://di.towayakuhin.co.jp/towa5/files/osi/NWT_TAB_osi_033238.pdf
ヒドロクロロチアジドの海外における文献報告が集積されていることから、『急性近視』及び『閉塞隅角緑内障』を追記し注意喚起致しました。
ヒドロクロロチアジドによる『急性近視』及び『閉塞隅角緑内障』の発現機序は明らかになっておりませんが、閉塞隅角緑内障に関しては、アレルギー反応により毛様体浮腫が発現し、虹彩根部
が前方に偏位し、隅角が閉塞したり、水晶体が前方に偏位し、相対的瞳孔ブロックが誘発されるこ
とによって眼圧上昇が生じるとの考察がございます。
急激な視力低下や眼痛等の異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、眼科医の診察を受けるよう患者に指導していただきますようよろしくお願い致します。
参考とされた文献(元記事で重複した一つは省略。一部しか見れないものもありますが)
Choroidal Effusion as a Mechanism for Transient Myopia Induced by Hydrochlorothiazide and Triamterene.
(Am J Ophthalmol 1995;120(3):395)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7661215
linded by pressure and pain Demetrios J Sahlas, Steven Shadowitz.
(Lancet 2005; 365(9478):2244)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2805%2966785-2/fulltext
Acute-Onset Bilateral Myopia and Ciliochoroidal Effusion Induced by Hydrochlorothiazide.
(Korean J Ophthalmol 2011;25(3):214)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3102828/
Transient Myopia and Retinal Edema During Hydrochlorothiazide (Hydrodiuril) Therapy.
(Arch Ophamol. 1961; 65:212)
http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=626431
Simultaneous bilateral malignant glaucoma following laser iridotomy.
(Graefe’s Arch Clin Exp Ophthalmol. 1993;231(1):12)
http://link.springer.com/article/10.1007%2FBF01681694
Bilateral Acute Angle-closure Glaucoma Associated With Drug Sensitivity to Hydrochlorothiazide.
(Arch Ophthalmol. 1995;113(10):1231)
http://archopht.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=641347
Drug-Induced Glaucomas Mechanism and Management.
(Drug Saf. 2003; 26(11): 749)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12908846
【症例】「急性近視」
21歳初妊婦。近視の既往なし。左足が膨れあがり、食塩摂取制限指導と併せて、ヒドロクロロチアジド50mg/日を2日間投与後、一過性近視を発現。ヒドロクロロチアジドを投与中止し、クロルフェニラミン3日投与後、改善。その後、出産。
【症例】「閉塞隅角緑内障」
70歳女性。水晶体摘出術、高血圧既往あり。エストロゲン、アスピリン及びヒドロクロロチアジド服用後、閉塞隅角緑内障を発現(ヒドロクロロチアジド1ヵ月間服用)。眼圧43mmHgに上昇。レーザー虹彩切開術後、薬物療法(ドルゾラミド/チモロール、ブリモニジン、酢酸プレドニゾロン)の処置が行われ、退院。眼圧低下したが、浅前房の症状は改善せず。ヒドロクロロチアジド投与中止3日後、改善。
それと、重篤副作用疾患別対応マニュアル「緑内障」を見たら、原因となる医薬品とリスクとして、毛様体浮腫によるもの(スルホンアミド系薬剤)というのがあるじゃないですか。
重篤副作用疾患別対応マニュアル「緑内障」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1o05.pdf#page=9
これだけ症例や論文があって、FDAで注意喚起済みというと、日本の対応はちょっと遅かったんじゃない?